今村復興相辞任へ“2度目の失言”巡る動き
25日夜、安倍内閣に激震が走った。今村復興相が、東日本大震災について「まだ東北で良かった」などと述べ、度重なる失言により辞任の意向を固めた。今村復興相の発言を巡る、これまでの動きをまとめた。
25日午後10時前、辞任する意向を固めた今村復興相が復興庁の自室にいるとの情報を受け、報道陣が集まった。しかし、今村復興相は報道陣の目を避け、すでに復興庁を後にしたという。
25日夜、今村復興相から報告を受けた二階幹事長。
自民党・二階俊博幹事(午後10時前)「『責任を取ってこの際、辞任したいという意向を固めている』、その心境についてお話がありましたから」「誠に残念なことであります。辞表提出、やむを得ないと、そういう気持ちです」
自民党内からも憤りの声があがる。
自民党・竹下亘国対委員長(午後9時45分頃)「私はかつて復興相を経験した。被災者の皆さん方の気持ちを思うと、なんでこんなこと言ったんだろうという怒りに近い感情を覚えました」
今月4日、福島県などからの自主避難者について「自己責任」との認識を示したことを巡り、記者に激高、その後、陳謝したばかりの今村雅弘復興相。25日、再び“失言”を発した。
それは、所属する派閥のパーティーでのことだった。午後5時半頃、笑顔で「復興大臣、今村雅弘でございます。いろいろお騒がせしております」という挨拶から始まった講演。東日本大震災について説明をしていた。
話が「経済的な損失」に及ぶと、問題の発言が飛び出した。大震災が「まだ東北だったから良かった」と発言したのだ。
今村復興相「また社会資本等の毀損(きそん)も、いろんな勘定の仕方がございますが、25兆円という数字もあります。これはまだ東北でですね、あっちの方だったから良かった。これがもっと首都圏に近かったりすると、莫大(ばくだい)なですね、甚大な被害があったというふうに思っております」
この後午後6時半頃に登壇した安倍首相は、開口一番、おわびをし、発言の火消しにおわれた。
安倍首相「まず冒頭ですね、安倍内閣の今村復興大臣の講演の中におきまして、東北の方々を傷つける、極めて不適切な発言がございましたので、総理大臣としてまずもって、冒頭におわびをさせていただきたいと思う次第でございます」
2011年3月11日、死者・行方不明者は1万8400人あまりという未曾有(みぞう)の被害をもたらした東日本大震災。その復興に当たるべき閣僚が、「まだ東北だったから良かった」との発言。被災地では─。
「ひどいこと言っちゃったね、その大臣さんね。クビ!」「どこだって災害起きればね、中央だったって地方だったって一緒だからね。被災者が出るわけだから」(岩手・大船渡市)
「東北のことをどう思っているんですかね」「結局ひとごとなんでしょうね、おそらく」(宮城・石巻市)
「私も福島にいて震災を経験していますので、上に立つ人ですからしっかり物事を考えて、慎重に発言してほしいと思いますけどね」(福島・郡山市)
一方、都内で聞くと、やはり「ありえない」との声が相次いだ。
「ありえないです、本当に」(埼玉県出身)
「新潟でも大きな震災を2度ほど経験しているので、同じ発言をされたら憤る部分があったと思う」(新潟県出身)
“東北で良かった”発言から約30分後の午後6時頃、今村復興相は記者団に囲まれた。
─発言の真意は?
今村復興相「すみません、これはですね、東北でもあんなにひどい25兆円も毀損するような災害があったと。ましてやこれが首都圏に近い方だったら、もっととんでもない災害になっているだろうという意味で言いました」
─“あっちの方で良かった”と?
今村復興相「ああ…」
─(震災は)東北で良かったと取られかねないが?
今村復興相「決してそんなことはありません」
─被災地のことを思っていないという声には?
今村復興相「決してそんなことはありません」
「そんなことはない」を繰り返したが、ついには「撤回すべきということであれば撤回しておきます」と述べた。
しかし、秘書官からメモを差し出されると、「いずれにしろ、そういったことで、皆さん方にご心配いただきましたことにつきましては、改めましてしっかりとおわびを申し上げます」と述べ、謝罪した。
さらに1度目の謝罪から1時間後の午後7時すぎ、今度はうつむきがちに再びカメラの前に立つと、深々と頭を下げた。
今村復興相「さきほどの講演の中で、私の大変不適切な発言、表現につきまして深く反省し、皆さま方におわび申し上げます。申し訳ありません」
─東北の方へメッセージを。
今村復興相「私の不適切な発言で皆さま方を傷つけたことを深く深くおわび申し上げます。申し訳ありません」
しかしこの時点では、辞任は否定した。
─大臣を辞任する考えは?
今村復興相「いや、そこまでまだ及んでおりません」
しかし野党は─。
民進党・福山幹事長代理「即刻辞任していただくしかないと思うし、復興大臣としても、国会議員としても、私はこの方は適切ではないと思います」
与党の公明党からも、2度目の失言で、辞任すべきとの声が強まっていた。
公明党・大口国対委員長「政治家としてしっかり自らのこのあり方について、出処進退についてよく考えるべきであると思います」