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解説:防衛監察とは?「特別」の意味とは?

2017年7月28日 17:56
解説:防衛監察とは?「特別」の意味とは?

 南スーダンに派遣されていた自衛隊の日報問題をめぐる特別防衛監察の結果が公表され、稲田防衛相は辞任を表明した。今回の日報問題は、稲田防衛相や防衛省幹部の辞任につながった。

 「特別防衛監察」は、防衛省で発覚した重大な不正行為と疑われる事案を調査するもので、安倍首相らは「厳正かつ公正」と意義を強調してきた。


――そもそも、「防衛監察」とは一体どういう仕組みなのか。

 「防衛監察」というのは、防衛省で不正が起こらないように研修を行ったり、不正が起こっていないかどうかを調査したりすることだ。

 調査は、内部部局や陸海空の自衛隊など防衛省にある全ての組織に対して定期的に行われているが、今回のように特別な不正が疑われる場合には、大臣の命令によって、特定の事項に関する調査が行われる。これが「特別防衛監察」と呼ばれる。


――具体的には、どういう調査が行われるのか。

 防衛監察は、防衛省内に設けられた「防衛監察本部」が担当する。その組織図を見ると、トップの「防衛監察監」の下に「副監察監」がいて、その下に防衛省所属の4人の監察官がいる。

 さらに、その下には直接調査を行う5人ほどからなる監察班が7つある。問題の関与が疑われる関係者には、全員に対して聞き取り調査が行われ、必要となれば、それぞれに根拠となる証拠物の提出を求めるなどする。

 また、近年重要なのが関係者のパソコンを調べることで証拠のデータがないかや、さらにデータを復元するといった調査も行っている。


――自らで自らを調べる組織では、調査が甘くならないか。

 調査を行うために、組織上の工夫がなされている。本部全体の定員は70人ほどで、うち5人は法務省や公認会計士などといった、防衛省ではない外部の人材を登用している。

 さらに、組織としての独立性をより強めるため、最も役職の高い「防衛監察監」も、防衛省ではない高等検察庁の検事長経験者が歴任している。


――今回の疑惑対象は、稲田防衛相自身だったが、本当に公正な調査が行われたのか。

 今回のポイントは「真の調査依頼者は大臣か、国民か」。

 企業などの第三者調査も同様だが、たとえ依頼者は社長でも、社長の都合の良い報告書を書くわけではない。なぜなら、その真の依頼者は、企業の背後にいる社会全体だと考えているからだ。

 防衛監察の場合、機密情報との関係で第三者調査に委ねにくいといった面がある。そのため、防衛監察本部は防衛省の内部に設けられているわけだが、その精神は第三者調査と同じでなければならない。

 つまり、「真の依頼者は大臣ではなく、国民なんだ」という意識が大切だ。

 今回の調査では、大臣自身を調査するという異例の措置に踏み切った。しかし、その調査結果はやや曖昧で、大臣が関与したのかどうかは結局わからなかった。調査にあたった監察官からは「強制力がない聴取ではそこが限界だ」との声も上がっている。

 制度に改善の余地がないか、検討する必要があるだろう。