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【詳しく】姉への強盗殺人で妹に無期懲役 20年来の知人に金を融通するため「服従を余儀なくされる立場とは言えず」求刑通りの判決 福岡地裁小倉支部

2024年8月1日 21:10
【詳しく】姉への強盗殺人で妹に無期懲役 20年来の知人に金を融通するため「服従を余儀なくされる立場とは言えず」求刑通りの判決 福岡地裁小倉支部
7月9日の法廷で(イラスト:KEIZO)

2023年6月、福岡県水巻町で姉を殺害し、通帳を奪ったなどの罪に問われている女の裁判員裁判で1日、求刑通り、無期懲役の判決が言い渡されました。この事件では、女の「20年来の知人」が、殺意はなかったとして強盗致死の罪で起訴されています。女はこの知人に20年間で5800万円を送金していて、裁判では、この2人の不可解な人間関係も明らかになりました。

判決では動機について、金に困っていた知人一家に融通するためとする一方、脅されていたわけではなく、自らの意思に反して服従を余儀なくされる立場にあったとは言えないと指摘しました。

殺害を否認→判決では認定

強盗殺人などの罪で1日、無期懲役の判決を受けたのは、住居不定・無職の辻和美被告(52)です。

判決によりますと、辻被告は2023年6月2日午後0時50分ごろから午後1時半ごろまでの間、知人の岡村恵美被告(47)と共謀し、福岡県水巻町の町営住宅で、この家に住む姉のつぐみさん(当時52)に辻被告が催涙スプレーを噴射し、両手両足を結束バンドで縛って首を圧迫して殺害し、奪った通帳からおよそ103万円を引き出しました。辻被告は姉の軽乗用車を奪い、無免許で運転して金融機関に向かいました。

岡村被告は道具の準備や姉の家などへの送迎を担当しましたが、殺意はなかったとして、強盗致死の罪で起訴されています。

20年来の知人に金を融通するため

辻被告は殺害を否定し、弁護側は「殺害の動機はない」と主張し強盗罪にとどまるとして、懲役5年が相当としていました。

しかし、判決では殺害を認定しました。

事件の動機と経緯については、金に困っていた岡村被告一家に融通するため、岡村被告とともに、不正に入手した健康保険証で貸金業者から金を借りようとしたが失敗し、姉から金を借り、対応によっては催涙スプレーを使って金目のものを奪おうとしたが、結局、姉を殺害したとしました。

道具を準備したり、姉の家への送迎について岡村被告と打ち合わせをした上、首を強い力で数分間にわたり圧迫して殺害したとして、計画的で執ようで残虐だと指摘しました。

また、辻被告がパチンコによる借金を理由に失踪する前、姉は辻被告に金を貸していて、返してもらっていないのに、辻被告が放棄した子どもを働きながら育て上げていて、感謝されることはあっても悪感情を向けられる筋合いはなく、命を奪われたのはあまりに理不尽だと断じました。

一方、弁護側は辻被告が岡村被告に搾取され、利用されていた「被害者的な立場」にあったことが考慮されるべきと主張していました。

これについて、判決では、辻被告は職場で知り合った岡村被告に20年間にわたって計5800万円余りを送金していて、今回の事件が岡村被告一家に金を融通するために行われたことに照らせば、岡村被告の存在が事件に与えた影響は否定できないとしました。

ただ、岡村被告から脅されていたわけではなく、自らの意思でつきあいやホームレス生活を続け、借金や家族の問題から逃避していたことがうかがわれるとして、服従を余儀なくされる立場にあったとは言えず、量刑に特段、有利に考慮すべき理由は見いだせないとして、求刑通り無期懲役の判決を言い渡しました。

「大親友」「諦めた」

裁判では辻被告と岡村被告の間の、金銭をめぐる不可解な人間関係が明らかになりました。

証人として出廷した岡本被告は、互いが見えないように置かれた仕切り越しに「辻被告はホームレスです。狙われるので、(金を自分たちのところに)一時、入れていた」と証言し、金はすべて辻被告に返していたと話していました。

法廷で、岡村被告は辻被告のことを「大親友」と呼び、辻被告は「債権者と債務者の関係」と表現していました。

辻被告は「返済」という名目で、売春による売り上げを毎日、岡村被告に送金していたといいます。辻被告は岡村被告から一時、離れようと試みていたが「諦めた」と法廷で話していました。

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