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なぜ今?1人1000円「国際観光旅客税」

2017年12月12日 19:20
なぜ今?1人1000円「国際観光旅客税」

 日本から海外に出るたびに1人1000円を徴収、約30年ぶりに「国際観光旅客税」と名付けられた新しい税が導入されることになった。政府は外国人旅行客をもっと増やすために使うと説明しているが、旅行者からは悲鳴もあがっている。なぜ今、導入されることになったのだろうか?政治部・柳沢高志記者が解説する。

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■観光客が急増、インフラ整備追いつかず

 日本では外国人観光客が急増した一方で、観光地では外国語の案内表示や、インターネットに接続するためのWi-Fiなど、インフラの整備が追いついていない現状がある。

 新しい税はこうした状況を改善する費用にあてられるためで、1人1000円を徴収すると、税収は年間、約410億円が見込まれている。現在の観光庁の予算が約210億円なので、2倍近い額となる。


■具体的な使い道の検討はこれから…“無駄遣い”前例も

 今回の税収は、観光の促進に使い道を限定している。こうしたものを「特定財源」と言う。ただ、この「特定財源」は、過去に問題になったことがあった。例えば道路建設のためだけに使うとした「道路特定財源」。巨額の財源を全部使い切るため、無駄な道路が造られたとの指摘があった。

 また、道路の模型や写真を展示する資料館も造られた。しかし利用者が少なく、その後、閉館した。さらに「マッサージチェア」の購入費にあてられていたことも発覚し、批判が相次いだ。

 「国際観光旅客税」も、具体的な使い道の検討はこれから。そのため、与党幹部の1人は「具体的な使い道を後から考えるなんておかしい」と話すなど批判も出ている。


■導入背景には官邸の強い意向

 それではなぜ、税の導入を急いだのか?政府高官は「観光に勢いがあるうちに新しい税を導入した方が良い」と話していて、今回の新税導入の背景には首相官邸の強い意向があった。観光は、アベノミクスの成長戦略の中で唯一と言っていいくらいの目に見える成功例なので、これをさらに加速させたいという狙いがある。

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 観光のインフラを整備することは必要だが、有効に使われているのか、絶えず検証していくことが求められる。