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【独自取材】航空自衛隊「無人偵察機」部隊に密着……驚きの操縦飛行 安全保障の最前線『every.特集』

2024年6月9日 7:05
【独自取材】航空自衛隊「無人偵察機」部隊に密着……驚きの操縦飛行 安全保障の最前線『every.特集』

中国による尖閣諸島への領海侵入や北朝鮮の核・ミサイル開発問題など、日本の安全保障は緊迫の度合いを深めています。そんな中、自衛隊に新しく導入された無人偵察機とその部隊を取材。どのように“無人飛行”が行われているのか、密着しました。

■メディア初取材“偵察専門部隊”

夜明け前、航空自衛隊の基地。許可を受けた隊員でなければ入れない、幾重ものセキュリティーに守られた建物があります。そこで翼を休めていたのは、見慣れぬ形をした航空機。地上から操縦する“無人偵察機”グローバルホークです。

私たちは、この無人偵察機を運用する偵察航空隊の内部をメディアとして初めて取材しました。

驚きの操縦方法とは――

無人機パイロット
「マウスとキーボード、テンキーを使って操縦を行っています」

日本の安全保障に欠かせない監視活動。自衛隊初の無人機専門部隊の実態に迫ります。

■自衛隊初の部隊、その任務は

青森県にある航空自衛隊三沢基地。

「隊司令登壇」

ここを拠点に活動するのが“偵察航空隊”。

「かしら~左!」

2022年に130人体制で編成された、新しい部隊です。

今、日本の周辺では中国・ロシアの軍事演習や北朝鮮のミサイル開発など、軍事活動が活発化しています。偵察航空隊はこのような活動に対する監視や情報収集を行っているとみられます。

■高価かつ特殊な機体の実力は

部隊が運用するのは無人偵察機グローバルホーク3機。アメリカ製で1機あたりの値段はおよそ170億円。戦闘機よりも高価な機体です。

飛行班長 半田弘希2等空佐
「こちらの膨らみの部分ですけども、通常の戦闘機であれば、こちらはコックピット部分で操縦者が乗る場所。この飛行機の場合は、衛星通信用のアンテナが内部に搭載されております」

パイロットは地上から衛星通信などを介して機体を操縦します。

グローバルホークの特徴の1つが長い翼。戦闘機のおよそ3倍の横幅があります。この長い翼を生かし、旅客機の2倍近い高度で約36時間も飛行が可能。従来の偵察機より広範囲の情報収集が可能になりました。

飛行班長 半田弘希2等空佐
「こちらの丸い部分がカメラの部分になります。上空で情報収集する際はこの部分が回転し、中からカメラ部分が外に出るような構造になっています」

■専門部隊を米技術者がサポート

実際に無人偵察機をどのように飛行させているのか。訓練の撮影が許可されました。

機体の周囲には隊員のほかにアメリカ人の姿も。彼はグローバルホークの製造に関わった企業の技術者。部隊はアメリカ側のサポートを受けています。

無人機なので当然、パイロットの姿はありません。どこで操縦しているのでしょうか?

案内されたのは、とある場所。コンテナとパラボラアンテナが並んで設置されています。

情報収集班長 水野達矢2等空佐
「この中でセンサーオペレーターとパイロットが実際に作業をすることになります」

機密保持のため、実際の操縦を撮影することはできません。

そこでパイロットの訓練に使うシミュレーターと実際の飛行作業を組み合わせて、パイロットがどのような操縦を行っているか説明します。

■地上からパソコンだけで操縦

パイロットの前にあるのは、モニターにキーボードとマウスのみ。

――(操縦シミュレーターは)実機とほぼ同じ?

飛行班 菅原秀晃1等空尉
「はい。画面の枚数でありますとか、キーボード、マウスの数も実機と同じになっています」

――操縦かんやペダルはなし?

飛行班 菅原秀晃1等空尉
「そうですね。マウスとキーボードのテンキー等を使って操縦を行っています」

一般的なパソコンだけで操縦できる理由。それは地図上に表示されているオレンジ色の点線にありました。どのような経路で飛行するのか事前に入力してあるのです。

飛行準備が整ったグローバルホーク。パイロットがマウスを使って“地上走行”そして“実行”とクリックすると…

グローバルホークは滑走路に向けて移動を始めます。

■離着陸時の目視は「ホークアイ」で

しかし、パイロットは機体の周囲の状況を目視で確認することができません。そのため離陸と着陸の際は、後ろに「ホークアイ」と呼ばれる車がついて、操縦資格を持った隊員や技術者が周囲の状況をパイロットに伝えます。

米企業の技術者
「ヘリコプターが近づいているようだ」

必要があれば、パイロットはマウスの操作で機体を停止させることもできます。

米企業の技術者
「ランウェイ クリア」

滑走路に到達すると最終の確認を行い、“離陸”“実行”とクリックすると…グローバルホークは離陸を開始します。

離陸後は設定した航路を飛行しますが、注意しなければならないのが他の航空機の動き。

飛行班 菅原秀晃1等空尉
「近くに他の航空機がいる場合に、針路を変針しなければいけないときには、マウスを使って針路を任意の方向に変えることもできます」

■無人機パイロットは有人機の経験者たち

地上からの操縦になりますが、パイロットは皆、有人機で空を飛んだ経験があります。菅原さんは、以前はF-15戦闘機に乗っていましたが、志願して偵察航空隊に移ってきました。

初めて操縦した時の印象は――

飛行班 菅原秀晃1等空尉
「自分が乗っている体感等が全く無い状況になりますので、そうですね…違和感しかなかったというのが正直なところなんですけれども、自分たちが新しいものを作っていけるというところに、非常に面白みを感じています」

■無人機を地上で操縦するメリット

航空機に乗らずに操縦できるということは、パイロットにとってもいろんなメリットが。

飛行隊長 三宅昌人2等空佐
「うちの場合は、パイロットもセンサーオペレーターも(飛行中に)交代できるのが強みですよね」

交代できるのでフライト中に食事や休憩をとることも可能。さらに重要な事が。

飛行隊長 三宅昌人2等空佐
「有人機が近づけない所でも無人機は近づいていける。撃墜されても搭乗員が死ぬ事はない」

■安全保障に欠かせない監視活動

訓練を終えたグローバルホーク。整備などもアメリカ側と一緒に行います。

整備員
「(異常を感じたら)笛を吹くか、叫んで知らせてください」

偵察航空隊 司令 髙口拓二1等空佐
「英語能力に関しましては、みんなペラペラで(部隊に)来ているものではありませんので、一般の隊員が努力をしてあそこまでコミュニケーションをとれるようになっているのは、我が隊の1つのアピールポイントだと思っています」

日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増すなか、グローバルホークはきょうもはるか上空から目を光らせています。

(6月5日『news every.』より)