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【挑戦】女性初のF2戦闘機パイロット 過酷な訓練…日本の空を守る『every.特集』

2024年5月3日 20:56
【挑戦】女性初のF2戦闘機パイロット 過酷な訓練…日本の空を守る『every.特集』

日本の空の安全を守る航空自衛隊。去年、女性初のF2戦闘機パイロットが誕生しました。危険と隣り合わせの過酷な訓練に密着取材しました。

■女性初のF2戦闘機パイロット誕生

勢いよく大空へ飛び立つF2戦闘機。操縦するのは、2等空尉の水越美紗貴さん(27)。自衛隊発足から70年。去年、初めて誕生した女性のF2戦闘機パイロットです。

水越美紗貴2等空尉(27)
「戦闘機はまだ女性が少ない状態。自分もどこまでできるのか挑戦したいというところが根底に」

水越さんが所属する福岡県築上町にある航空自衛隊・築城基地。フライトに臨む前の若手隊員みんなの朝の日課は、鉛筆を1本1本削ること。

荻本研史3等空佐
「姿勢ですね。フライトに臨むということで、身だしなみを整えるのと同じような意味でやっております」

水越美紗貴2等空尉(27)
「おっしゃる通りです」

そんな水越さんが操るのは、青い迷彩が特徴のF2戦闘機。領空侵犯やその恐れのある外国の航空機に対し、退去の警告などを行い日本の空を守っているのです。

「スクランブル!」という声で、走り出したパイロットと航空機整備員。不審な航空機に対応するため、戦闘機が緊急発進する“スクランブル”の訓練です。22年度の緊急発進は、全国で778回。

第8飛行隊 隊長・赤川俊介2等空佐
「まずは(航空自衛隊が)精強な存在で有事が起こらないように、24時間365日、空における不法行為があった際に対処できるように訓練をしている」

航空自衛隊でただ一人、F2戦闘機を操縦する女性、水越さん。約14キロもの特殊なスーツと装備品に身を包み、いざ訓練へ。

緊張感が高まります。

水越さん
「ツー、タリー(相手を見た)」

「(味方と敵)2機見えないと撃っていっちゃだめだぞ」

水越さん
「タリーツー、2機インサイト(味方も敵も見えている)」

この基地のパイロットが乗るF2の最高時速はマッハ2。音速の2倍の速さに達し、最大で9G、重力の9倍の負荷が全身を襲います。約1時間にわたる過酷な訓練フライトを日夜繰り返し、技術を磨いています。

■ブルーインパルスに憧れ…パイロットの道へ

厳しい訓練をこなす水越さんはフライトスーツを脱ぐと、その表情が一変。夫であり同じパイロットである涼太さんとやわらかな表情で食卓を囲みます。

──仕事終わったと思うタイミングは?

水越美紗貴さん(27)
「帰ってきて、フライトスーツを脱いで、洗濯カゴにぶちこんだときですね」

水越さんは奈良県出身で、学生時代はバスケットボールに熱中。パイロットに興味をもったきっかけは、高校生のとき友人に見せてもらったブルーインパルスの動画でした。

「美しさと危険さ、相反するようなものが混在している状態にひかれて、パイロットになりたいと思った」と話す水越さん。大学卒業後、航空自衛隊に入隊。4年にわたる過酷な訓練や試験を乗り越え、F2戦闘機パイロットの道を切り開きました。

水越美紗貴さん(27)
「周りの人とは何か違うことをやってみたい、というところも一つあったような気がする。女性第1号を目指そうとF2にした」

■“隊員不足”自分が若い世代への道しるべに

「これ何だと思います?」
「ミサイル?」
「と思うやん。燃料タンク」

この日、基地に訪れていたインターンの高校生に説明していた水越さん。今、自衛隊では、少子化が進む中で、隊員不足が大きな課題に。

自衛官の定員は約24万7000人ですが、おととしの人数は22万7000人あまり。定員を約2万人下回っています。この基地では、月に2度ほど学生向けの見学会を行うなど、自衛隊の仕事を知ってもらうことに力を入れています。水越さんにとって、これも大事な仕事です。

「まず1機でもいいからすぐ見ること」。この日は戦闘機対戦闘機の空中戦の訓練。何度も入念に打ち合わせを行い、フライトへ。

水越さん
「ツー、ブラインド(味方が見えない)」

「スリーオクロックレベル(3時方向にいる)」

水越さん
「見えない…」

厚い雲に覆われ、周りの戦闘機を目視でとらえることができません。そんな環境下でも確かな技術と冷静な判断力が求められます。

「(敵が)いたいた、これこれ」

水越さん
「レーダーで敵のグループを捉えた。方位40、距離14マイル、高度4000フィート」

「撃て、撃て、撃て、もう1機いるぞ」

パイロットの“戦場”は、海面ギリギリから、1万メートルを超える高さにまで及びます。瞬時の判断が「命」に直結する大空の世界。一瞬の気の緩みも許されません。

その後も、地上でフライトを再現できるシミュレーターを使い、課題と向き合います。

自分が成長することで若い世代にとっての道しるべに──。

水越美紗貴2等空尉(27)
「訓練に臨むこと。(自分自身が)知識も技量も身に付けていくことが、パイロットを目指す子たちにもいい影響を与えるのではないか」

日本の空を守るため、水越さんは今日も操縦かんを握ります。

(5月1日『news every.』より)