自衛隊で唯一「飛行点検隊」とは? 女性機長の特殊な訓練に密着
自衛隊で、特殊な任務を担う唯一の部隊。所属する女性機長の訓練に密着しました。
航空自衛隊の女性自衛官、古屋美希3佐。
古屋美希3佐
「ステータスは記載の通りですが、特に本日のミッションに関して支障になることはありません」
入隊24年目。去年から機長を務めています。ただ、彼女が操縦するのは戦闘機や輸送機ではありません。
古屋美希3佐
「こちらが普段、飛行点検で使っている飛行点検機になります」
古屋3佐が所属するのは自衛隊の中でも特殊な任務を担う「飛行点検隊」。聞き慣れないこの部隊の使命とは?
パイロットは通常、目視で飛行場を目指し着陸します。
しかし夜間や悪天候などで視界が悪い場合、飛行場からの電波をたどり安全に着陸することになります。
パイロットにとってまさに命綱となるこの電波。
飛行点検隊は特殊な飛行機を飛ばして日々チェックしているのです。
その飛行機を見せてもらうと…
古屋美希3佐
「(電波を確認するため)下と上にそれぞれ、他の航空機の倍の数のアンテナがついています」
飛行場からの電波に問題が無いか、分析するのがこの画面。
これを細かくチェックし異常が無いかを判定するのです。機内でこの画面を凝視しながら2時間飛び続けることもあるといいます。
古屋美希3佐
「パネルオペレーターの席を見せてもらったことあるんですけど、すぐに酔ってしまって、機内でずっと横になってました」
緻密で過酷な任務を行う点検チーム。機長はまとめ役を務めます。
仕事が終わると…古屋3佐が母親に戻ります。
仕事の緊張から解き放される時間です。
古屋美希3佐
「今日のご飯なにたべようかなとか、子どもなにしてたかなとか、考えるこの時間が一番好きです」
◇
この日、古屋3佐は重要なフライト訓練に挑みます。
同行するのは電波を調べるオペレーターとサポート役の隊長。
古屋3佐が機長としてこのチームを指揮します。
古屋美希3佐
「V1、ローテーション」
飛行場からの電波に異常やズレが生じていないかを点検する大切なミッション。飛行機を正しいコースにのせて進入させなければなりません。
古屋美希3佐
「飛行点検訓練実施します」
しかし…
古屋美希3佐
「左からの風なのでちょっと(操作を)多めに」
飛行場
「スライトリーレフト(少し左)」
横風が強く吹きつけ、コースをたどるのに苦労します。
古屋美希3佐
「ちょっと左だったですよね。さっきオンコースだったのに」
コースを確認しながら、飛行場へ向かいます。機内では画面をチェックし、電波の示すコースが正確かを点検します。
飛行場
「アプローチ」
正しいコースで飛行場に接近…
オペレーター
「先ほどのファイナル(飛行場への進入)、(電波は)基準内でした」
古屋美希3佐
「了解です」
電波の精度に問題ないことが確認できました。こうした飛行を何回も繰り返し無事に訓練を終えました。
古屋美希3佐
「昼夜問わず悪天候でも任務にあたる自衛隊のパイロットの活動を、確実に飛行点検することによって安全に離着陸できるように、これからも支えていきたいと思っています」