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2020年5月18日 20:50

【解説】「検察庁法改正案」 3つの論点

【解説】「検察庁法改正案」 3つの論点
(c)NNN

検察庁法改正案について、ツイッターで著名人が抗議する異例の事態となっていましたが、政府与党は18日、今国会での成立を見送ることを決めました。

■そもそも「検察庁法改正案」とは?

いま、一般の国家公務員の定年を、現在の60歳から65歳に引き上げる案が国会で議論されています。これにセットで、検察庁法改正案が国会に提出されています。

具体的には、『検察官の定年を63歳から(一般の公務員と同じ)65歳に延ばす』というもの。ここまでは野党も同意しています。問題はその先です。

検察官の定年は、次長検事、検事長など幹部は63歳になるとポストを退いて、役職のない検事になる、「役職定年」という仕組みをもうけています。

しかし政府の案では、『まずは定年を65歳に引き上げ。さらに、内閣や法務大臣が、事情があると認めた場合は、特例として定年を最長3年延長し、ポストを続けられる』としています。

この特例に対して、野党が強く反対しています。これを認めると『例えば、時の政権にとって、都合のいい幹部だけをポストにとどめる“恣意的な延長が行われるのではないか”』と懸念されているのです。

■なぜ“検察官”だけ問題?
他の公務員と違って、なぜ検察官だとこんなに問題になるのでしょうか?

検察官は一般の公務員と違うことが挙げられます。

1976年、田中角栄元総理大臣が逮捕されたロッキード事件など、検察は、政界捜査に切り込むこともあります。総理大臣をしていた人を逮捕して起訴することもあるのです。そのために検察は、歴史的に高い独立性が保たれてきました。これまでに、検察官が定年延長されるケースはありませんでした。

しかし、1月31日に黒川弘務東京高検検事長の定年延長が閣議決定されました。これが黒川氏の63歳の誕生日の1週間前でした。『黒川氏は、安倍総理に近いので恣意的ではないか』と、野党だけでなく与党からも批判の声があがり問題になりました。

安倍首相は、黒川氏に定年延長が認められた根拠を問われましたが、『法律の解釈を変えた』と説明しました。こういう経緯がある中、出された改正案ということで、問題が紛糾しています。

■改正案をめぐる3つの論点

1)黒川氏との関係

この改正案は、2019年10月の段階では、内閣が認めた場合に延長できる「特例」の話は入っていませんでした。

しかし、3月に提出された案には「特例」が付け足されていました。この10月~3月の間に黒川氏の件がありました。これを受けて野党は、『法律を作って、後付けで黒川氏の定年延長を正当化しようとしている』と批判しています。これに対し、政府は『黒川氏のこととは何ら関係ない」としています。

この改正案が成立したとして、効力をもつのは2022年。2年後になるので、黒川氏の定年延長とは関係ないとしています。

2)「特例(内閣が認めれば定年を延長できること)」について

野党は、検察の独立性や三権分立が損なわれかねないと主張しています。

これ対して、政府は『そもそも検察の人事権は内閣または法務大臣がもつと法律で定められている』と説明しています。

3)延長の“判断基準”があいまい

さらに、問題になっているのが『内閣が延長を認める際の判断基準が示されていないこと』です。

森まさこ法務大臣も、野党に追及された際『検討をすすめている』と述べるにとどまりました。つまり、これまでの仕組みを変えるのに基準も説明できない段階です。

■多くの著名人が抗議の投稿

これには、多くの著名人がツイッターに投稿して、話題になっています。

俳優の浅野忠信さんや井浦新さん、小泉今日子さん、作家の辻仁成さん、歌手・いきものがかりの水野良樹さんなどが「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグで抗議しました。

宮本亞門さんは「このコロナ禍の混乱の中、集中すべきは人の命。どうみても民主主義とはかけ離れた法案を強引に決めることは、日本にとって悲劇です」と投稿しています。

また、検察のOBからも反対の声が上がっています。

15日に松尾邦弘元検事総長が総務省に意見書を提出し、検察幹部の定年延長規定を撤回するよう求めました。検事総長といえば検察のトップ。そのような人も反対しているのです。

さらに18日も、元特捜部長の熊崎勝彦氏や若狭勝氏など、歴代の特捜部経験者らが『検察の独立性・政治的中立性と、検察に対する国民の信頼が損なわれかねない』『将来に禍根を残しかねない』として、再考を求める意見書を提出しました。

■“急転”なぜ見送りに?

自民党の中では、野党が求めている定年延長の基準を明確にして、審議して成立させる方針でした。しかし、政府は今国会での成立を見送りました。

最大の理由は、批判的な世論が高まったからです。

著名人や検察OBから、ここまで批判がくるのを想定していなかった面があります。さらに、このあと新型コロナの「第2次補正予算案」があり、そちらを優先させた形です。

国民の中には、『なぜコロナで緊急事態になっているときに?』と思っている人も少なくありません。やはり国民の声を反映していない面があります。継続して審議していくことになりそうですが、慎重に、十分な議論が必要です。

2020年5月18日放送news every.「ナゼナニっ!」より