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接待12人…政権への影響は?NG行為とは

2021年2月22日 20:28
接待12人…政権への影響は?NG行為とは

総務省の幹部が菅総理の長男らから接待を受けた問題で、職員12人が倫理規定に違反する疑いがある会食をしていたことがわかりました。どんな行為が倫理規程違反なのか、菅総理の長男は処分されるのか。菅政権への影響は…詳しく解説します。


■与党が拒んできた総務審議官が出席 菅総理も
 
22日の国会には接待を受けたとされる総務省の幹部4人が出席。これまで与党側が出席させることを拒んできた2人の総務審議官も出席しました。この「総務審議官」とは、民間の会社で例えると副社長にあたるクラスです。
さらに菅総理も出席し、野党側の厳しい追及を受けました。

菅総理「私の長男が関係して、結果として公務員の方が倫理法に違反する行為をすることになったことについて、大変申し訳なく、お詫び申し上げたいというふうに思います」

立憲民主党・奥野総一郎議員「これだけ多くの会食が露見した、明らかになったことについて、責任は感じておられるでしょうか」

総務省・谷脇総務審議官「国民の皆様に疑念を抱かせる、そういった事態を招いたということについてはお詫びをしたいと思いますし、私自身、責任を感じているところでございます」

また、会食の相手が、利害関係者との認識があったかどうか聞かれると─。

総務省・吉田総務審議官「本当にこの時点におきましては、私は利害関係者という認識を持っておりませんでした。自らの経歴等に照らしまして、非常に怠慢ではないかといったような批判をいただければ、それは恥じるばかりでございます。申し訳ございません」

■1人あたりの飲食代『7万4203円』も…調査結果を報告
 
この問題で、総務省は22日、調査結果を報告しました。

国会に出席した総務省幹部4人に加え、職員8人も国家公務員倫理規定に違反する会食をした疑いがあることが新たに判明しました。接待の回数はのべ38件となっています。

谷脇総務審議官は去年10月7日、日本橋・人形町で、菅総理の長男を含む東北新社側の4人と会食。谷脇氏1人あたりの飲食代は『4万7151円』で、これに加えて、土産代、タクシー代もあったということです。

吉田総務審議官は、去年12月8日、六本木で菅総理の長男を含む東北新社側2人と会食。吉田氏の飲食代は1人あたり『2万5300円』。土産代とタクシー代ももらっています。

この2件については、今月2日に本人からおおむね振り込みで返金されたといいます。処分は24日になる見通しです。

ほかにも、新たに明らかになってきたこともあります。内閣広報官の山田真貴子氏も利害関係のある立場で接待を受けていた可能性が高いと発表されました。山田氏は、去年9月、女性初の内閣広報官に就任した人物で、官邸で行われる総理の会見で司会などをする“政府広報の顔”とも言える人です。

この山田氏が総務審議官だった2年前の11月に、東北新社側の4人と会食をしていました。この席には、菅総理の長男も同席していて、山田氏1人あたりの飲食代は『7万4203円』。東北新社側が支払っていました。

山田氏は、当時は総務省の官僚ですから倫理違反の可能性が高いのですが、現在は総務省を退職して内閣の政権内の人となっています。総務省では処分ができず、対応については「本人の判断」だといいます。

■答弁は二転三転 音声出ると一転「あった」
 
この問題は今月国会で何度も取り上げられてきましたが、総務省幹部の答弁は二転三転してきました。

総務省の秋本局長(当時)は、17日には「東北出身者の懇談会だった」「BSやCSについての話が話題に上ったという記憶は『ございません』」としていました。その後、週刊文春が音声データを公開すると、一転して「発言はあったのだろう」と認めました。

■なにが問題なのか
 
国家公務員には、法律に基づく政令で倫理規程が定められています。簡単に言うと、国家公務員の職務と利害関係がある人から金銭・物品の贈与や接待を受けることは、禁止されているのです。国家公務員は、国民全体のために公正に仕事をしなければならない立場の人です。こうした行為があると、接待を受けたから融通をきかせているのではと疑われかねません。

ポイントは「職務上の利害関係にあたるかどうか」です。今回は、総務省の幹部は衛星放送事業者の許認可権を持っていますから、衛星放送関連会社に勤める菅総理の長男側とは利害関係があります。よって、明らかな違反となっているのです。

■割り勘で食事ならいい? ゴルフなら?
 
国家公務員には、ほかにも細かくルールが定められています。利害関係者との関係において次の行為は許されるのか、考えてみて下さい。

(1)利害関係者と割り勘なら飲食していい?
  →答えは『○』です。
  ただ、負担額が不十分だと差額分の接待を受けたことになります。

(2)車の送迎を受けていい?
  →答えは『×』。

(3)割り勘でゴルフや旅行していい?
  →これも『×』。

(4)バレンタインデーのチョコレートは受け取ってもいい?
  →これも『×』なのです。
  チョコレートであっても、利害関係者から物品や金銭を受け取ったことになります。
  ただし、例外として、「○○周年」と書かれたボールペンや社名入りのカレンダーなど、広く一般に配布されている記念品や宣伝用の物品はセーフです。

■菅総理の長男への処分は?
 
菅総理の長男は接待をした側ですが、処分はないのでしょうか。

仮に、総務省が何らかの便宜を図って贈収賄などの刑事事件に発展すると、接待側も責任を問われることになります。
しかし現時点では、あくまで『国家公務員が処分対象』という範囲を出ていませんので、菅総理の長男に処分はありません。

■菅政権への影響は?
 
では、菅政権への影響はあるのでしょうか。

ある自民党の閣僚経験者は、「長男によって政策が歪められた事実が出たら、政権に決定的ダメージになる」と言います。また、次のような心配も口にしました。

「菅総理の長男に呼ばれて断ったら何されるか分からないから、どんな官僚だって呼ばれたら行く。なのに、総務省幹部は処分され、長男はお咎(とが)めなしでは、霞が関の官僚の心が菅政権から離れないか心配だ」

菅氏は、総理大臣ではなかった時期であっても、総務大臣や官房長官を歴任した人物です。官僚からすると、その長男という側面が大きいとの指摘です。

今回、菅総理の長男による接待を受け、総務省側の政策判断に本当に不公平なことが起きていなかったのか、しっかりした調査と説明が求められます。

(2021年2月22日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)