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G20に林外相欠席…“国会優先”が理由も答弁時間は「53秒」

2023年3月1日 21:52
G20に林外相欠席…“国会優先”が理由も答弁時間は「53秒」

G20外相会合が今月1日からスタート。林外務大臣は“国会審議を優先する”という理由で欠席しました。国際会議より国会審議を優先することに「世界の非常識」という声もあがっています。

■G20外相会合…日本の外相「初」の欠席

G20外相会合が今月1日、インドでスタート。会議には、ロシアや中国も出席し、ウクライナ侵攻などの問題を議論する「極めて重要な外交の場」(外務省中堅)となります。

日本の外務大臣がG20会合に欠席するのは、初めてという「異例の事態」。日本は議長国として5月にG7広島サミットを控える中、今回のG20欠席は「外交上ダメージが大きい」(外務省関係者)との声が出ています。また、国会を理由にした直前でのG20キャンセルについて、ある外務省中堅は「日本の常識、世界の非常識」と揶揄しています。

■国会審議優先

なぜ林外務大臣は欠席を余儀なくされたのでしょうか? 参議院では今月1日から来年度予算案の審議がスタート、総理と全閣僚が出席しての基本的質疑とよばれる審議が始まりました。

自民党の世耕参院幹事長は、「総理と全閣僚出席の質疑は非常に重要。外務大臣から意見を聞きたい議員が多い」と指摘。立憲民主党の斎藤国対委員長も「国会対応を優先して頂きたい」と、外務大臣にも「国会優先」を促しています。

また、政府高官の1人は憲法に定められている「首相、閣僚は答弁・出席を求められたときは、議院に出席しなくてはならない」(憲法63条 閣僚の議院出席の権利と義務)という条文にふれた上で、「参議院の審議初日で、全閣僚出席の要求がある」と“国会優先”の必要性を話しています。

では“優先”した国会審議での林外務大臣の“出番”はどれほどだったのでしょうか?

■“国会優先”の林外務大臣…答弁回数は1回「53秒」

1日、予算委員会は午前9時から午後5時20分まで、およそ1時間の休憩を挟み開催されました。およそ7時間20分の審議の中、林大臣が答弁したのは1回、長さはおよそ「53秒」でした。

自民党の上月議員が、「在外邦人の孤独・孤立問題」について質問し、林大臣は、「在外邦人の支援は重要な責務で、問題解決にむけて取り組んでいる」と答弁しました。この日、野党からの質問はありませんでした。

ちなみに、国会関係者によりますと、この日の審議で質問通告があったのは大臣20人のうち16人。4人の大臣への質問通告はありませんでした。およそ7時間、答弁を1回もせずに座り続けた大臣もいて、現職閣僚からも「答弁がないなら、他の公務にあたりたい」という本音も。

■野党は政府与党の調整力不足を批判

一方、野党側は、今回の事態の原因は政府・与党側にあると批判しています。ある野党幹部は、国会日程にあわせて「G20議長国のインドと日程調整ができなかった事が問題だ」と政府与党の調整力不足を批判しています。

外務省内からも「国会への根回しが遅れたことが原因だった」と反省する声もあがっています。

■専門家は「G20に国内事情で参加できないのは残念」

明海大の小谷哲男教授は、「G7議長国として、ウクライナ問題などグローバルな問題で指導力を発揮するタイミングで、国内事情で参加できないのは非常に残念。議長国のインドとの関係を強化する上でも残念」と日本外交にとって、マイナス面が大きいと強調しています。

その上で「副大臣などに国会対応は任せて、重要な会議は大臣にいってもらうような形をとるべき」と指摘しています。

■「世界から取り残される」与野党関係なくルール変更を

G20外相会議は、林外務大臣にかわり山田副大臣が出席することに。また、3日から予定されている日米豪印4か国による「QUAD」外相会議については、林大臣が出席する方向となりました。与野党の参院国対委員長が会談し、林大臣に国会審議への出席を求めない事で合意しました。

今回、与野党双方から「G20会議は大事で、外務大臣は出席すべきだった」という声も出る中、結局林外務大臣は“国会優先”という形となり、出席は見送られました。ある外務省関係者は、「外交上の国益とのバランスを考えて、変なルールであったら与野党関係なく、変えていくべきだ。そうじゃないと、世界から取り残される」と話しています。

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