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武田前総務相、接待問題で職員に最後の発破

2021年10月6日 2:03
武田前総務相、接待問題で職員に最後の発破

総務省の地下講堂で5日、新旧大臣交代式が行われた。部長・局長・次官ら約50人の幹部を前に挨拶に立った武田良太前大臣は、今年前半、総務省を揺るがした接待問題に触れ、「昔ゆるされたことでも、今ゆるされないことがたくさんある」「懸命に積み上げてきた実績がささいなことにより全て無駄になってしまう時代である、ということをよくよく認識して、今後も頑張っていただきたい」と、発破をかけた。

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≪黒田武一郎次官の送辞(抜粋)≫

総務省職員の倫理規定違反事案を受け、予算委や総務委で厳しい指摘への対応をしていただきました。あわせて総務省の組織の立て直しを指導し、情報通信行政の変革も指導いただきました。

武田大臣は、困難に対しては自ら先頭に立って立ち向かい、全力で真摯(しんし)に仕事に取り組まれました。

その一方、部下に対する心遣いについても、成果をあげれば褒め、失敗しても責めずに励ます。また直接会うことのない裏方の頑張りにもきちんと目を配り、お心遣いをいただきました。

厳しい環境の仕事でも大臣からの「苦労をかけたな」、「ありがとう」という声で報われた、という職員も数多くいます。人と人との関係を重視される武田大臣らしい、まさに力強く心優しいリーダーシップでありました。

豪放磊落(ごうほうらいらく)でありながら、緻密かつ繊細な武田大臣のご指導があったからこそ、さまざまな難局を乗り切ることができました。

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≪武田前大臣の答辞≫

皆さん、本当に1年間、お世話になりました。あっという間の1年であり、皆さんよく仕事をしていただいた1年でありました。菅内閣が発足し、肝いり政策の携帯料金値下げに着手したが、しっかりと年内に決着をつける道筋ができた。快挙だと思う。皆さん本当に頑張っていただいた。

どん底の危機・コロナで心が暗くなっている時に、この問題を解決するために総務省一丸となり取り組み、ワクチンの成果を築いていただいた。すごい力だと私は考えている。

そして放送行政。変革の時代に向けた時に、次なる時代を念頭においてさまざまなアイデアを出し、果敢に挑む姿勢を見せていただいた。これも将来の日本の大きな財産・礎になると思う。いろんな仕事をやる中で、総務省の人材の豊富さに助けられた。

■接待問題で“最後の発破”

年が明けて、「倫理法違反による悲しい事案」により、「この組織にとり大変重要な同志」が去る事態となった(※谷脇康彦総務審議官が接待問題で処分を受け辞任したことを指す)。国会審議、約4か月にわたって厳しい指摘を受けたわけだが、黒田(武一郎)次官は現場の総指揮官として非常にいい差配を振るっていただいたし、原(邦彰)官房長はげっそり痩せるほど、最前線で国会対応等やっていただいた。皆さんのおかげで難局を乗り切れたと思う。

最後に、総務省を去る際にお願いしたいのは、昔ゆるされたことでも今ゆるされないことがたくさんあるんですね。昔は「それぐらいのこと、どうってことない」、「ドンマイ、ドンマイ」と言っていたことが、今、非常に厳しい目を向けられるようになりました。特に公務員に対し、国民は強く倫理感を求めるようになっている。

今まで皆さんたちが努力して頑張ってきたこと、役所に入り国民に仕え、懸命に積み上げてきた実績がささいなことにより全て無駄になってしまう時代である、ということをよくよく認識して、今後も頑張っていただきたい、と期待を申し上げる。

■「国と地方の関係」見直しを

今から、このコロナ禍、なんとかして打ち勝っていかなくてはならないが、「非常事態における国と地方の関係」を真剣に考え直していかなくてはならない、と私は考えております。国民の命を本当に救うために、誰がどういう責任を担って、どういう戦略を持って臨んでいくのかということをあらかじめしっかりと認識して準備していくことが求められていると思う。

しっかり頑張っていただきたいし、一般財源、そして地方財源総額、しっかりと金子(恭之)新大臣のリーダーシップの下に、地方に安定的な行政サービスの展開を担保してほしい。

やはり「放送(事業)の限界」というものを皆で共有していかなくてはならない時代だと思う。新しい技術開発に努め、国際競争力にも勝っていかなくてはならない。日本の優秀な技術が本当に生かされているのかと言えば、いささか疑問が残ります。技術分野の力を遺憾なく世界に発揮できるように、前を向いて、しっかりと方向性を示してもらいたいと思う。

国民は、今の政府の政策につき、メディアを通じて非常に厳しい意見を持っている。限られた資源をまんべんなく適当に使うのではなく、成長分野、日本の付加価値そして国力を生む分野に集中的に投下する時代がやってくると思う。

さまざまな統計・科学的データをもとに、山下さん(=旧総務庁部局トップの山下哲夫総務審議官)のもとで行政評価をシビアに担当することで、資源を有効に生かす環境をつくってほしい。

(内藤尚志消防庁長官のほうを見て)消防行政だが、先日も(崩落事故のあった)沼津に行ったが、のべ7000人を超える消防緊急援助隊が頑張っていただいた。

危機にあたり誰が国民のために働くのかを明確にして、彼らの立場・位置づけをしっかりしたものにしていただきたい。全国の消防団は80万人を切ろうとしている。毎年1万人ずつ減っている。若い方々が参画できる状況をつくっていただきたい。

竹内さん(=旧郵政省部局トップの竹内芳明総務審議官)も技術屋で初めて総務審議官になったわけですから、技術を持った方々がしっかりと役割発揮できるような環境をつくっていただきたい。

大村さん(大村慎一コロナ対策地方連携総括官)もワクチン担当として一番頑張っていただいた。引き続き国民のために頑張っていただきたい。

大した仕事はできませんでしたけど、皆さんのおかげで1年間、勤め上げることができました。心から感謝を申し上げたい。今後も、総務省の応援団の1人として励んでまいりたいと思います。

我々も戦の準備に入りました。精いっぱい頑張って、しっかりとした結果を残して、私も(衆院議員として国会に)帰ってきたいと思います。森部長(=森源二選挙部長)、頑張ってください。心から皆さま方に感謝を申し上げ、優秀な金子大臣に心から期待とエールを送りまして、私の挨拶に代えさせていただきたいと思う。ありがとうございました!

写真:総務省を離れる武田良太前大臣 5日午後