衆院選 同じ略称で混乱 立憲変更に失敗?
20日から始まった衆議院選挙の期日前投票。比例代表選挙の投票では、政党の名称を投票用紙に書くが、立憲民主党と国民民主党の略称が同じ「民主党」であるため、有権者や各地の選挙管理委員会の職員が困惑している。
比例代表選挙のための「記入台」には、その投票先の選択肢がわかるよう、参考写真のような一覧表が貼られている(参考写真は「東京ブロック」のもの)。
略称は、投票する人が正式名称を書かずに済むためのものだ。自民党、共産党も正式名称の5文字より、略称の3文字の方が短い。NHK党に至っては、正式名称が20文字もある。
■全国の開票所で手間
有権者が「民主党」とだけ書いて投票した場合、どうなるのか?
立憲と国民に半分ずつ配分される…、わけではない。実は立憲と国民が比例代表選挙でとった票数の比率に応じて分けられるのだ。公職選挙法が定める「按分」だ。
これを全国すべての開票所ごとに行うことになりそうで、その分、開票作業にあたる地方公務員の手間は増えるし、選挙結果の確定に時間がかかる。
■立憲、変更するはずが…
詳しい説明は控えるが、この略称は国政選挙で議席を持つ政党が中央選挙管理会に届ける。届け出すれば変更も可能だ。立憲民主党は略称を「りっけん」に切り替えるつもりで、党内手続きを進めてきた。
しかし法が定める変更締切日までに「いろいろあって間に合わなかった」(同党関係者)という。
■選管も身動きとれず
投票所で有権者に注意を呼びかけられないのだろうか。
ある自治体の選挙管理委員会に問い合わせたところ、「特定の2つの政党についてだけ、注意を促すのは難しい。立憲と国民以外の政党は、略称を書いて欲しいだろうから『略称は使わないで』とも呼びかけられない」と困惑気味だった。
別の自治体では、投票所の記入台の一覧表の上に、「政党・政治団体の名称または略称だけを記載してください」という貼り紙をしている。
「~だけを」という表現は、投票用紙に「がんばれ!」とかハートマークを書き足すことで無効票になってしまうことを避けるための、いわば警告だ。しかし、この貼り紙に従い、略称「民主党」を書けば、皮肉にも按分票が増えることになる。
この自治体の選挙管理委員会に貼り紙を剥がさないか尋ねたが、「期日前投票も始まっているので、選挙結果に影響を与えるようなことは避けたい。正直、我々も身動きがとれない。投票所で有権者から問い合わせがあれば説明する、ぐらいしか出来ない」と諦め口調だった。
■有権者ができることは?
選挙制度に詳しい、ある官僚OBは「略称も、政党の選挙戦略の一部だ。だから総務省も簡単には仲介できなかったのだろう。自分の一票が按分されてしまうことに気づかないまま投票してしまう有権者が出ないよう、選挙管理委員会が呼びかけないといけないが、その注意喚起によって特定政党だけが注目されることになれば、それはそれで不公平になりかねない」という。
抜本的な解決策はない、ということだ。自分の投じた票が按分されるということは、1票が0.5票とか0.3票とかになってしまうことを意味する。この2つの党に投票したい人は正式名称を書くなど「自衛」をするしかなさそうだ。