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【解説】急転…“防衛増税”で決着 首相に変化「聞かない力」

2022年12月16日 1:23
【解説】急転…“防衛増税”で決着 首相に変化「聞かない力」

反対の声から一転、自民党は15日、「防衛費を増やすための増税」の方針をとりまとめました。なぜ、岸田首相は今年中に増税議論の決着にこだわったのか。背景には、岸田首相の“こだわり”と“政治スケジュール”、そして、首相自身の“変化”がありました。

■背景に「首相のこだわり」と「政治日程」


有働由美子キャスター
「来年話し合ってもいい話なのですが、なんで岸田首相は今年、増税議論を決着させようとしていたんですか?」

小栗泉・日本テレビ解説委員
「(理由は)主に2つありまして、まずは、岸田首相の“こだわり”です」

「政府は16日、防衛力の強化に向けて安全保障戦略などを閣議決定する予定です。当初から首相は、『防衛力の強化・防衛費の増額を打ち出すなら、その財源も一体で示すことが政治の責任だ』と話して、その持論を頑固に貫こうとしたということが言えると思います」

「もう1つが政治スケジュールです。来年は春に統一地方選があり、その後はいつ衆議院選挙があってもおかしくないと言われています。さらに2025年には必ず参議院選挙があります。こうした増税議論というのは国民に負担を強いる話なので、政権側としては選挙の前には話したくない。首相の側近は、『国政選挙の予定を考えても、今以上に良いタイミングはない』と話していました」

有働キャスター
「でも今回、来年も話し合うとしたということは、最終的な結論を先送りしたということになるんですか?」

小栗解説委員
「いえ、岸田首相は周辺に、『再来年(2024年)以降からやると決めているわけで、先送りではない。来年の経済状況を見て、再来年からやるかどうか最終的に決めるというのは、当たり前と言えば当たり前の話しだ』として、反対派が振り上げた拳を下ろしやすい言い方にしただけで、後退したわけではないという立場です」

■自民幹部「自信を取り戻している」


有働キャスター
「岸田首相これまでは『検討する』が多くて何がしたいか分からないという声もありましたけど、なんか最近変わりましたか?」

小栗解説委員
「実はそういう声、多く聞かれています。ある自民党幹部は、『岸田首相は最近、吹っ切れてきた。自信を取り戻している』」

「それから、官邸関係者は、『いろいろな人に話しを聞きに行くけど、実際のところ言うことを聞かなくなっている』と、“聞かない力”も発揮するようになっていると言うんです」

「このきっかけというのは何か。諸説あるんですが、『党内の異論を押し切る形で、いわゆる“統一教会”の被害者救済法案を来年の通常国会ではなくて、この秋の臨時国会で成立させると決めたり、寺田前総務相を事実上、更迭したりしたのが分水嶺(れい)だった』、『自分の考えを押し通そうと変わった』と指摘する声があります」

「首相のことを古くから知る人は、『皆そもそも岸田氏の本質を誤解している。実は本当に大事なことは1人で決めて、そこから全く動かないタイプなんだ』というふうに話していました」

有働キャスター
「その本質が私たちにとって良い政策に働けばいいんですが…廣瀬さんはどう思いますか?」

廣瀬俊朗・元ラグビー日本代表キャプテン(「news zero」パートナー)
「防衛費増税に関して具体的な説明もないままに、適切な時期に増税というのはいただけないと思います。もっといろいろな対話を重ねた上で進めてほしいです」

「企業経営の観点からすると、法人税は中小企業の負担はあまり増えないということですけども、これ以上、負担が増えるのは避けてほしいなと思います。僕らはただでさえ、コロナとか物価高とか、不安定な中でなんとか頑張って企業としても存続して社会貢献したいと考えているので、避けてほしいなと思います」

有働キャスター
「リーダーシップを発揮するのは大切ですが、自民党の中だけではなく、国民に広く分かりやすく伝わらないとリーダーシップではなく独善と映ります。16日、首相の口から国民に何がどう伝えられるのか、注目しましょう」

(12月15日放送『news zero』より)