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名古屋市長選の争点『名古屋城の木造復元』、入場禁止から7年経過も問題相次ぎ計画進まず...専門家「名古屋城は日本で唯一、“忠実に再現”できる城」

2024年11月21日 15:46
名古屋市長選の争点『名古屋城の木造復元』、入場禁止から7年経過も問題相次ぎ計画進まず...専門家「名古屋城は日本で唯一、“忠実に再現”できる城」

7人が立候補している名古屋市長選。争点の1つが名古屋城天守の「木造復元」です。河村前市長の公約でしたが、未だ実現しないままの計画。存続か中止か。名古屋のシンボルはどうなるのでしょうか。

入場禁止から7年目、観光客の反応は?

名古屋の街にそびえ立つ名古屋城。平日にも関わらず、多くの観光客が訪れていました。「すごくきれいですよね。今日晴れているから、金シャチがピカピカ光って。天気とあいまって良かったな」など感想が寄せられるなか、神奈川からはなんと早朝4時発で“名古屋城を見るために”、日帰り旅行に訪れた観光客の姿も。

しかし、観光客たちが直面したのが、「入場禁止」という規制。入ることができない名古屋城を前に、「書いてありましたね。『耐震改修工事』って。残念ですね、せっかくなかなか来れないので」、「残念やなって感じ。やっぱり姫路城は上まで上がったらすごくいいですもんね」など声が寄せられました。

木造復元することになった名古屋城天守。工事に向け入場禁止になってから、今年で7年目です。その影響は、名古屋城のすぐそばにある金シャチ横丁のお店にも。実物大の金シャチを見ることができる、義直ゾーン内にある土産店『鯱上々』。名古屋城天守の工事がなかなか進まないことに、もどかしい思いを抱えていました。

「城(の中)に入れないならと、ここに寄るかといったら素通りされる感じ」と話すのは、『鯱上々』の店長代理・田村謙治さん。「今の現状では、お客さんはたくさんいるので、(城の中に)入れるようにはしてほしい」と規制への心境を明かします。

建設当時の寸法を記した「昭和実測図」

名古屋城天守は、1945年の空襲で焼失し、残されたのは石垣のみ。再建を願う市民の声や国内外からの募金が後押しとなり、二度と燃えないよう鉄筋コンクリート造りで再建されました。しかし、コンクリートの劣化など耐震性の低さが問題に。江戸時代の姿の復元を目指し、木造で建て替えをすることに決定しました。

それを可能にするものが、「昭和実測図」。『名古屋城総合事務所』の朝日美砂子学芸員によると、「昭和実測図」とは、昭和7年頃、天守が燃える前に天守の細かい寸法を実際に測り、その測った寸法から起こした図面のこと。朝日さんによると、これほどの写真と実測図が残っているのは名古屋城だけだといいます。

また当時は、デジタルカメラもフィルムもなかった時代。図面について朝日さんは、「(昭和実測図)は、ガラス乾板というガラスの板に写真を焼き付けているんです。データ化された写真は、拡大すると不鮮明さやギザギザが目立ちますが、ガラス乾板の写真はその心配はないそうです」と話します。

ほかにも、修理の記録なども残っているという名古屋城。さまざまな資料を組み合わせることで復元が可能だといわれています。

実は日本で唯一、“建設当時を忠実に再現できる城”といわれている名古屋城。それは、城の外側まで測量して作られた「昭和実測図」の“精密さ”にあります。

こちらは平面図を拡大したもの。かなり細かく寸法が書き込まれており、このような実測図が約300枚残るだけでなく、ほかにも700枚以上の写真が保存されているのです。

その希少性について『名古屋市立大学』の瀬口哲夫名誉教授は、「ここまで豊富な資料が残っている城は、日本唯一といっていい」と評価。続けて、「正確な復元ができる可能性が非常に高い」と話します。

「木造復元」は名古屋市長選の争点

総事業費505億円のビックプロジェクトといわれる、名古屋城天守の「木造復元」。河村前市長が打ち出してから、すでに12年経ちますが思うように進んでいません。なぜ、これほど計画が停滞しているのでしょうか。

一つ目の理由は、バリアフリー問題。徳川家康が建てた姿の完全復元を目指したいのが、河村前市長の計画。車椅子の人も最上階に上がれるようにとエレベーターの設置を求める意見が挙がりましたが、市民討論会の場で一部の参加者から、「わがまま」「我慢せえ」などと差別発言があったという問題で計画がストップしています。

二つ目の理由が、石垣の保全。石垣は焼失前から残っており、江戸時代の姿を残すとても貴重なもの。文化庁に保存計画を出してから工事を進めていくことに加え、天守を解体してから、石垣内部の再調査が必要となるといいます。

今後、名古屋城はどうなるのでしょうか?名古屋市長選では、この課題への対応も争点となっています。

木造復元に「賛成」の意を表しているのが、前副市長・広沢一郎氏と前参院議員・大塚耕平氏。広沢氏は「文化財としての価値を損なわない範囲で、最大限バリアフリーしていきたい」、大塚氏は「市民に不正確な情報を与えていると批判した上で、工事がストップしている経緯などの説明が必要」と主張しています。

一方、「反対」を掲げているのが、政治団体共同代表・尾形慶子氏のほか、太田敏光氏、水谷昇氏、鈴木慶明氏。尾形氏は「戦後復興のシンボルとして耐震化をして残す。高額な事業をしている余裕はない」と主張、太田氏は「耐震化工事を実施して残す」、水谷氏は「耐震化工事を実施して中で侍などの体験教室を行う」、鈴木氏は「コンクリート造でよい」と主張しています。また、不破英紀氏は木造復元については「未定」とし、「もっと議論をしてから、結論を出すべき」としています。

名古屋城の未来を担う、名古屋市長選。名古屋市長選の投開票日は、11月24日です。

最終更新日:2024年11月21日 15:46
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