「市場の監視役」にインサイダー疑惑…次々発覚の背景は【#きっかけ解説】
──「市場の監視役」でインサイダーの疑惑が相次いでいるということですが、何があったのでしょうか?
そもそもインサイダー取引とは、株価に影響する公表前の情報をもとに、関係する株を売買するなどの不正な取引を指しますが、このインサイダー取引に関与した疑いで今年9月、金融庁に出向している30代の裁判官と、東京証券取引所につとめる20代の職員が相次いで証券取引等監視委員会の強制調査を受けました。
それぞれ企業が予定しているTOB(=株式公開買い付け)を事前に審査する担当をしていて、この職務を通じて知った未公開の情報をもとにインサイダー取引に関与した疑いがもたれています。
TOBというのは企業の買収手段のひとつで、TOBの情報は株価に影響を与える非常に重要な情報なんです。
──2人とも金融市場をチェックする立場でありながら、立場を利用して公表前の情報をもとに不正な株取引に関与した疑惑があるんですね。
金融市場を規制・監視する立場の職員に、インサイダー取引に関わった疑惑が相次いでいることが異例中の異例ともいえる事態です。
捜査関係者からは、「立場が立場なので大問題」「本当だとするとあり得ない話だ」などと厳しい声が出ていました。
──このような疑惑が短期間で次々と明らかになったのには何か理由などあるのでしょうか?
2人の担当部署が、共通してTOBに関連するものだったと話しましたが、企業の買収手段のひとつを指すTOBの案件は年々増えています。
ある証券取引等監視委員会の関係者によりますと、こうした実態を踏まえ、「TOBに関係する企業の銘柄については、すごく目を光らせて監視している」といいます。
また、「コンピューターの性能も上がっていて、TOBの発表の前後など、良いタイミングで関連する企業の銘柄を取引した人物の名義を、機械的にリスト化できるようになっていて、小さな額の取引でも抽出できる」と内情を明かしています。
──機械的にリスト化までされ、TOBの増加に合わせて、監視を強化しているんですね。
はい。証券取引等監視委員会の中で、小さな額の不正取引でも見逃さない監視体制になっているといえます。
──インサイダー取引というと「私は関係ない」「私は大丈夫」と思う人もいるかもしれませんが、注意すべきことはあるんでしょうか?
そこがまさに重要で「自分には関係ない、が落とし穴!」ということです。今、投資活況が続く中、個人で株に投資する人は年々増えていますし、自分が株に投資をしていなくても、家族や知人がしているという方もいると思います。
まだ世間に公表されていない重要な情報を耳にした時、「このくらいならバレない」と思って少額の株の売買をしても、証券取引等監視委員会は不正をチェックしていますし、気軽に家族や友人に話してしまうと、話した相手も犯罪に巻き込んでしまう可能性もあります。
改めて法律を理解したうえで、自分の安易な行動で「落とし穴」に陥らないように、1回立ち止まって考える必要性があると思います。【#きっかけ解説】