【政治解説】強気の国民民主党 永田町の“本音”は… “103万円の壁”引き上げ “玉木代表スキャンダル” 2024年11月最新世論調査
“少数与党”石破内閣 支持率9ポイント急上昇に「ナゾの回復」の声も
今回は第2次石破内閣の発足を受けての調査です。衆院選直後の前回調査と比べて、内閣支持率は9ポイント上がり、43%となりました。
【菅原】
今回の組閣は、ほとんどが再任でした。人事の評価ではないとすると、石破首相の対応に何かしら評価があったということでしょうか。
【竹内】
首相に近い官邸の関係者は、皆、口をそろえて「ナゾの回復だ」とか「ナゾの上昇だ」と首をひねっていました。
ただ、ある自民党関係者は、国民民主党が強く主張する“103万円の壁”の引き上げについて、自民党、公明党、国民民主党で議論を始めたので、「103万円の壁が前向きに動き出したことがいい方に受け取られた」と解説していました。他のベテラン大物議員も「野党と一生懸命に協議しているように見えることが、プラスになっている」と言っていました。
野党からも、国民民主党以外の、ある野党幹部も「石破さんがやろうとしていることに一定の期待と評価があるのでは。そこが変わったところじゃないか」と見ていました。別の野党幹部も「『何かやってくれるのでは』という期待感は、常に評価されるものだ」と話していました。
“103万円の壁” どこまで引き上げる? 永田町の本音
【菅原】
“103万円の壁”の引き上げについては、今回の調査でも聞いていますね。
【竹内】
(引き上げに)賛成が78%でした。かなり支持が高い政策であることがわかります。
【菅原】
実際、減税になりますから、世論の支持が高くなるのは、そうかなと思います。では、この“103万円の壁”を、どこまで引き上げるのかというところが、今後ポイントになってきますね。
【竹内】
その通りです。国民民主党はかねてから、「物価や最低賃金も上がっているのだから、178万円まで上げよう」と言っていたわけですが、与党側のある議員は「“丸のみ”は難しい」と。「試算では財源が8兆ほど必要になる。そんなに大きく政府の収入が減ることは受け入れられない」と話していました。
自民党も公明党も、与党の過半数割れという結果になりましたから、国民民主党の協力を得なければいけないので、“103万円の壁”を引き上げること自体は受け入れるだろうと見られています。しかし、178万円まで引き上げるのは、「ちょっと難しいのではないか」という見方が多いんです。「どこで妥協するのか、折り合うのか」が焦点になると思います。
【菅原】
もし、引き上げるとなると、今後もずっとその分の財源が必要になってくるわけですから、私たちも冷静に見なければいけないと思います。それにしても、国民民主党はこのところ強気ですね。
【竹内】
そうなんです。今回の調査で(“103万円の壁”の引き上げが)支持されたこともあって、さらに何か拍車がかかっているようなところがあります。国民民主党のある幹部は、「8割が賛成という結果を、自民党は無視できないだろう。危機感を持つだろう。これを経済対策に盛り込まないと政権がもたないだろう」と言っていました。
国民民主党は政党の支持率も、選挙前(10月1日~2日調査)は1%だったのが、選挙後(10月28日~29日調査)には7%になり、そして今回は10%になっています。
【菅原】
世論の支持というのは、つまり先の衆院選の結果から繋がっていますよね。さらに来年の夏には参院選も控えている。玉木代表としては元の主張からどこまで譲れるのか、難しいところですね。
【竹内】
それは全くその通りだと思います。“103万円の壁”の引き上げなど、「手取りを増やす」と訴えた政策が支持されて、国民民主党は衆院選で4倍の議席に躍進しました。それを簡単に妥協してしまったら、「言っていたことと違う」となってしまいますよね。
国民民主党の幹部は、「今回の衆院選で我々は比例代表で600万票以上得ている。選挙で訴えた政策を実現させるためにどこまで死に物狂いでやれるかが問われている」と話していました。これは「変に妥協してしまうと、衆院選で高まった期待と集まった支持が失われ、来年夏の参院選が戦えなくなってしまう」と考えているのだと思います。
「うちの党だったら、間違いなく辞めさせられる」 国民民主党 玉木代表のスキャンダル 影響は?
【菅原】
(国民民主党)玉木代表にはスキャンダルも出ました。
【竹内】
まさに特別国会が始まるその日だったので、ちょっと驚きました。「女性と不倫関係にあるのではないか」と報じられ、本人が認めて謝罪しましたよね。
【菅原】
このスキャンダルが“103万円の壁”の協議に影響するかというと、今のところは、しなそうですね。
【竹内】
そうですね。官邸の政府関係者は「瞬間風速的には強い話題になるけれど、(玉木代表が認めて謝罪したこともあり、)ネタが続かないので、そこまで尾を引かない気はする」という見通しを示しています。身内である国民民主党の幹部も、「党の支持がもっと下がると思っていたが、そうでもなかった」と、ほっとしている様子でした。国民民主党の幹部は皆、“103万円の壁”の与党との協議には「影響しない」という見方を示しています。
【菅原】
確かに、政党支持率が上がっているわけですから、勢いはそのままだと見えますよね。
【竹内】
国民民主党の幹部は、もう一つ背景を説明していて、「うちの主張を聞かないと法案も通らない、予算も通らないという現実がある。玉木氏個人が“うんぬん”ではない」と言っていました。実際、自民党から玉木代表に対する批判がワーっと起きる感じもないですよね。
【菅原】
“少数与党”になってしまったために、自民党・公明党の、玉木代表のスキャンダルを追及する声が弱まってしまっているということもありますか。
【竹内】
ただ、やはり内心は「おかしいんじゃないか」と思っている人は、永田町にも多いんです。自民党の閣僚経験者は、「不倫問題は自民党だったら離党や議員辞職まで追い込まれるだろう」と話しています。自民党以外の党の議員も、「うちの党で同じ問題が起きたら、間違いなく辞めさせられる。玉木さんは本当に辞めないでいいのか?政治家は信頼の上の仕事なのに」と嘆いていました。
国民民主党 連立に参加の可能性は?
ただ、“少数与党”であるということを鑑みると、しばらくは国民民主党が主導権を持つ形が続くことになりそうですね。
【竹内】
そうなるのではないかと思います。野党では、日本維新の会は、おそらく共産党などと比べれば、自民党としても協力を得やすいとは思いますが、衆院選で議席を減らしてしまい、馬場代表も責任を取る形で代表選を行うことになりました。党内がしばらく落ち着かない感じでしょう。さらに自民党と維新は、今年の通常国会で“政治とカネ”の問題をめぐっていったん合意した協力が、まとまりきらずに反故になった経緯もあります。これに維新は不信感を持っていて、手放しで自民党に協力できるような雰囲気にありません。今のところ、国民民主党だけが与党に協力して、かつ、過半数を確保できる可能性がある政党という状況です。
【菅原】
ただ、国民民主党が自公連立に参加するかというと、玉木代表はこれまでのところ一貫して否定的ですよね。
【竹内】
選挙前からもそうでしたし、選挙後も、「連立には入らない」と明言していますよね。
世論調査でも、「国民民主党はどういう立場を取るのが望ましいと思うか」と聞きました。「政策ごとに賛成や反対を決めるのが良いのではないか」と答えた人が最も多く、52%。「連立政権に加わる」と答えた人は11%しかいませんでした。
【菅原】
世論も連立を求めてないということですね。
【竹内】
自民党の閣僚経験者は、「一般の人からは、『連立に入ると自民党に取り込まれる』と思われているのではないか」と話していました。
【菅原】
“外”にいたほうが、国民民主党にとっては、「自分たちが主張する政策を受け入れてもらいやすい」ということですよね。
【竹内】
与党からすれば、国民民主党以外になかなか協力相手がいない中で、何とかして過半数を確保しようと思ったら、国民民主党の言い分をのまざるを得ない。そうすると、国民民主党はやはり強気に出られます。一方で、政権の中に入ってしまうと、ある程度は「協調」することが求められる、自分の主張を我慢する、引っ込めざるを得ない部分が出てきます。
ある政界の重鎮の話で、私は鋭い見方だなと思ったのですが、「国民民主も自分たちの要求を言うだけで政権をちゃんと担う気はない。そんな中で連立や閣外協力なんて無理だ」と冷ややかに見ていました。
これからの注目 「与党と野党はいかに折り合えるか」
【菅原】
これから臨時国会も行われますが、どこがポイントと見ていますか。
【竹内】
今後、自民・公明と国民民主党は政策協議、話し合いをすることになったわけです。やはり最大のポイントは、「与党と野党が話し合って結論を見いだす、というプロセスが良い方に機能するか」だと思います。
多数を持つ自民・公明の与党が自分たちの方針を押し通していくというのが、2012年の政権交代以来、ずっと続いてきたわけです。最後は結局、多数決で決められてしまいますから、野党としてはとにかく反対、採決自体に抵抗、という構図でした。
これからは、“与党と野党がいかに折り合えるか”が問われます。譲り合って政策の内容が悪くなっては元も子もありませんから、お互い話し合った結果、良い妥協点を見つけることができるかどうかです。
【菅原】
協議に時間をかけ過ぎて、いわゆる “決められない政治”になっては困りますが、与野党ともにスピード感を意識しつつ、うまく機能していけば、ある種、理想的な議会の形にもなるかもしれません。
【竹内】
与党だけではなくて、野党にも“責任”が生まれたわけです。先の衆議院選挙で示された民意は、「与野党が話し合い、折り合って、より良いものを生み出してほしい」ということだと思います。ぜひ、与野党ともに自分の主張をただひたすらに突き通すのではなく、「折り合ってより良いものを作る」ことを目指してほしいと思います。
(日本テレビ 政治部デスク 竹内真 解説委員 菅原薫)
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