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【解説】「103万円の壁」引き上げ、自公国が合意 その背景と今後の課題

2024年11月20日 18:46
【解説】「103万円の壁」引き上げ、自公国が合意 その背景と今後の課題

自民・公明の与党と国民民主党の政調会長が20日も会談を行い、政府がまとめる新たな経済対策に「103万円の壁」の引き上げを盛り込むことで合意しました。日本テレビ政治部の佐藤正樹記者が解説します。

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鈴江奈々キャスター
「議論が始まってから約2週間。『103万円の壁』の引き上げが正式に決まりました。その背景には何があったのでしょうか?」

政治部 佐藤正樹記者
「ポイントは、20日に3党で交わした合意文書にあると思います。文書には、3党で『補正予算について年内の早期成立を期する』という文字が書かれています。どういうことかと言うと、政府与党は、物価高対策などのための『補正予算』を臨時国会に提出し、年内に成立させたい考えです。これが石破政権にとって当面の最大の課題でもあります」

佐藤正樹記者
「ところが衆議院では過半数を持っていないため、国民民主党に協力してもらう必要があり、『103万円の壁』の引き上げなどの要求をのむことで、補正予算案への『賛成』を取り付けたという形です」

鈴江キャスター
「これで正式に『103万円の壁』の引き上げが決まったということですが、今後の焦点は何に移ってくるのでしょうか?」

佐藤記者
「焦点は3つです。まず『103万円をどこまで引き上げるか』。そもそも『103万円の壁』というのは、超えてしまうと所得税が課され、学生などの場合は親の特定扶養控除から外れる“年収の壁”のことです」

「国民民主党は、これを178万円まで引き上げることを求めていますが、引き上げ幅を大きくすると『高所得者の方が減税の恩恵を受けやすくなる』との指摘もあるほか、ある自民党幹部が『178万円はあおりすぎ。もう少し落ち着いて議論すべき』と話すなど、どこまで引き上げるかが注目されます」

佐藤記者
「2つめは『いつからスタートさせるか』です。国民民主党は早ければ『来年度から』と主張していますが、準備期間や各所への影響を考慮して『再来年度から』のスタートとなる場合もあるほか、政府内からは『一気に引き上げるのではなく、段階的に行うべき』との意見も出ていて、スタートの時期も注目となっています」

桐谷美玲キャスター
「『103万円の壁』を引き上げると、手取りがアップする人もたくさんいる反面、税収は減る試算もあります。この財源の議論は、どうなっていますか?」

佐藤記者
「関係者によると、政府は、仮に国民民主党が主張する178万円まで基礎控除などを引き上げた場合、国と地方であわせて7兆6000億円ほどの税収が減ると試算しています。この減収分について、国民民主党の古川税調会長は『国民の手取りが増えれば経済が活性化するため、一定の減収分を補えるのではないか』と話しています」

「しかし、ある財務省関係者は『このままでは、社会保障費や地方への交付金、防衛費などから予算を削るしかないのでは』と懸念を示しているほか、複数の県知事たちが地方の税収が減ることに反対の声をあげるなど、一筋縄ではいかない様相です」

「結論は年末までに出る見通しですが、手取りアップだけでなく、行政の事業やサービスの質の低下が起きないよう、バランスを考えた慎重な議論が必要になります」

最終更新日:2024年11月20日 18:46