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“裏金”議員処分「常識外れ」識者から3つの喝!

2024年4月5日 6:00
“裏金”議員処分「常識外れ」識者から3つの喝!
自民党の"文化"とは

裏金事件を受けての自民党議員への処分。ようやく自民党内で政治責任に対する処分が下された。これがもし一般企業で起こったら…企業のコンプライアンスに精通している識者から聞かれたのは「常識外れ」という評価だった。

企業統治などに詳しい久保利英明弁護士、また、会計監査等に詳しい青山学院大学・八田進二名誉教授に、今回の処分の評価を聞くと、3つの「非常識」が浮き彫りになった。

(1)「調査方法」「発表方法」が非常識

自民党は2月中旬に、党幹部と弁護士が行った聞き取り調査の結果をメディアのみに紙で公表し、記者会見等は行っていない。その調査に対して、久保利弁護士は以下のように指摘する。

―「今回は党幹部が調査をしている内部調査だが、それとは別に一般企業であれば外部調査を行う。なぜなら、内部調査では全く信用が無い。信用を無くすと株価が急落して企業経営が困難になる。今回株価の変わりに支持率が下がっているのだと思うが、企業の株価ほどの危機感が無いのではないか。外部調査を行い、その調査結果をしっかり会見等で公表すべきなのに、聞き取り調査結果の会見すらしていないのはいかがなものか」

久保利弁護士は、調査というものはそもそも「自らを正すことができるかを示すこと」が本来の目的と話す。そういった意味で、誰の指示なのか、裏金作りを始めたのも、やめられなかったのもなぜか、誰のせいなのかを、調査で明らかにすることは当然と指摘する。今回の自民党の調査ではすべて不透明なままだ。

その上で、どんなに恥ずかしい結果であっても、調査結果を赤裸々にして信用を回復することに全力を尽くすのが常識だと指摘する。

(2)「スピード感」が非常識

今回、政治的処分を下すまでに、法的処分が1月上旬に下されてから3か月弱という時間がかかった。この期間について識者らは「あまりにも遅すぎる」と指摘する。事案にもよるが、一般企業で内部調査だけであれば、だいたい1か月以内には処分を公表するのが定石だ。自民党の処分はその3倍弱の時間をかけた。

今回これだけの時間がかかったことに八田教授は「危機意識が足りない証拠。あまりにも鈍い」と批判している。

(3)「倫理観」が非常識

八田教授は政治家として「倫理観」にも欠けると指摘する。

―「自民党内の処分というのは、議員らが持っている政治倫理を向上させるための自主規制の処分。国の為政者なのだから、国民の見本となり倫理を守るのが政治家。選ばれている者として襟をただすという観点から厳しい処分を受けるべき」

その上で、企業内で社員が仮に“裏金作り”をしていた場合は調査した上で問題を起こした社員を「懲戒免職」や「解雇」処分を下すのが妥当。

国会議員に置き換えると「解雇」相当の厳しい処分は「議員辞職」だが、今回自民党が処分を下した議員らの中で、議員辞職をしている者は1人もいない。

そして一般企業の社長は問題が起きた責任を取り「引責辞任」や「給与半年50%減」などの処分を自ら科すという。今回、自民党という組織全体の規律が緩んでいるにも関わらず、組織のトップである岸田総理が全く責任を取らない点についても、識者らは「一般企業ならあり得ない。せめて給与等の処分は受けるべき」と指摘する。

今回、一部の議員のみが「離党勧告」や「党員資格停止」等の処分を受けた。これに対し久保利弁護士は「社会の信用を回復しようと本気で思っている処分とは到底思えない」と糾弾した。

『永田町の常識は、世間の非常識』そんな言葉を露呈する結果となったとの声が聞かれた。