年収の壁、103万円→来年から178万円? 与党側「目指すだけ」 自民税調会長「釈然としない」の真意【#みんなのギモン】
そこで今回の# みんなのギモン では、「103万円の壁“引き上げ”本当?」をテーマに解説します。
「私たちのお給料の手取りに関わる話で、大きな動きがありました。いわゆる年収103万円の壁について、11日夕方、自民・公明・国民民主の幹事長が会談し、『178万円を目指して来年から引き上げる』ことで合意しました」
「さらに、いわゆるガソリンの暫定税率を廃止し、ガソリン減税を行うことでも合意しました。ただこの合意に対して、増税や減税などの方針を決める自民党税制調査会の宮沢会長は次のように話しています」
宮沢会長
「正直びっくりしたことは事実であります。一歩一歩前進をしてきたところでこういう話が出てくることについて言えば、釈然としない感じは正直言ってございます」
山崎誠アナウンサー
「税に関する合意について、税調会長の宮沢さんが『正直びっくりした』というのは…。聞かされていなかったということはあるんですか?」
菅原解説委員
「そんなことはなかったと思います。本当に怒っているのか、あるいは今後の国民民主党の交渉を見据えてわざと言っているのかはわかりませんが、あえて不快感を示したんですね」
菅原解説委員
「では、この合意のポイントはどこにあるのか見ていきます。いま日本には、106万円、130万円などたくさんの『年収の壁』があります。今回は、国民民主党が引き上げを主張してきた、所得税に関する103万円の壁の話です」
「最近いろんな壁のニュースがあります。少し混乱してしまうかもしれないので、おさらいをしていきます。影響が大きいのは主にアルバイトなどをしている学生とその親で、子どもの年収が103万円を超えると扶養の対象から外れ、親の手取りが減ってしまいます」
菅原解説委員
「日本ファイナンシャル・プランナーズ協会の『学生生活マネー&キャリア』の試算によると、親の年収が700万円で学生の子どものバイト収入が120万円の場合、約11万円手取りが減る計算になるといいます」
鈴江奈々アナウンサー
「学生のアルバイト収入の話でも、手取りが減るのは親の方なんですね」
菅原解説委員
「学生バイトの働き控えを意識する103万円というのは、所得税の特定扶養控除の話ですが、今回3党で合意したのは基礎控除を103万円から178万円まで引き上げるという話。こちらは働いて所得税を払っている全員に恩恵があります」
「国民民主党の試算によると、例えば会社員で年収が200万円だった場合は8万6000円の減税になるなど、それぞれの年収に応じて減税となり、手取りが増えるとしています」
「ただ、国と地方を合わせて7~8兆円の税収が減ってしまいます。そのため財源をどうするのか、特に地方自治体からは厳しい声が上がっていて、議論になっているわけです」
忽滑谷こころアナウンサー
「7~8兆円の減収となるとかなり大きな数字ではありますが、(今回の合意では)来年から引き上げるという話になっていましたよね?」
菅原解説委員
「よく見ていただきたいのが、11日の合意書の文言です。『178万円を目指して引き上げる』と書いてあります」
森圭介アナウンサー
「普通に読めば、来年178万円と思いますけどね」
菅原解説委員
「いろんな受け取り方ができますよね…。178万円を主張してきた国民民主党側は『178万円になった』。きっちりこの数字が入ったと満足げなんですが、一方で与党側は『あくまでも目指すだけ』。具体的な金額はまだ決まっていない、という受け止め方でした」
森アナウンサー
「『目指して』というなら本当に目指している姿を見せてほしいです。こういう表現が、ごまかされているというか、政治への不信につながるんじゃないかなと個人的には思います」
山崎アナウンサー
「時期についても言われていましたが、これはどうなんですか?」
菅原解説委員
「来年からという時期についても、どのように178万円まで引き上げていくのかも、まだまだ不透明です。自民党の税制調査会長の宮沢氏が『正直びっくりした。釈然としない感じ』と発言していましたが、今回合意書を交わしたの3党の幹事長でした」
「まだ税制調査会での議論が詰まっていないのに頭越しに合意されてしまった、そこに不快感を示しているわけです。というのも、これまで税の話は自民党の税制調査会が主体的に決めてきました」
「宮沢さんはその会長ですが、今回少数与党になったので自民・公明の与党に加えて国民の3党の税調会長で、103万円の壁やガソリン減税を含めて具体的にどうするのか、まだ議論している最中です」
「それを、12日に採決される今年度補正予算案に国民民主党の賛成を取り付けるために、11日に3党の幹事長による会談で『178万円を目指す』『来年から』と合意してしまったわけです」
森アナウンサー
「税調と違うところで幹事長が決めた、と」
菅原解説委員
「ただ3党の幹事長会談の直前に、宮沢会長も(森山)幹事長を含め他の自民党幹部と話し合いをしていますので、知らなかったわけでは絶対ないと思います。あえて『まだ議論中だ』と、税調会長の立場として不快感を示しているのかもしれません」
森アナウンサー
「頭ごなしに行かれたら『ちょっと待ってくれ』と言いたくなる気持ちはわからないでもないですけどね」
菅原解説委員
「さらに問題なのがスケジュールです。税調は今回、遅くとも来週後半までには大きな方針となる『税制改正大綱』をまとめ、翌年1月に始まる通常国会で税制改正のための法案を出して、成立させる必要があります。成立して初めて税制が改定されます」
「一方、所得税がカウントされるのは1月からです。もし合意の通り来年から103万円の壁を引き上げるのであれば、法案の成立がカウントのスタートより遅くなり、間に合いません」
「ということで、何らか特例を法案に書き込むのか、もしくは実際に引き上げられるまで給付金を配るなど税以外の方法との合わせ技で対応するのか、まさにこれからの議論で詰めていかなければならない部分が多いです」
「少数与党となったいまの国会では、与野党ともに結果を出していく責任を伴います。私たちの働き方にも大きく影響する話ですので、透明性を持って議論して結論を出してほしいと思います」
(2024年12月12日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)