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【解説】安倍派「6億7000万円超」を不記載 裏金の「責任」取るのは誰?

2024年1月31日 20:35
【解説】安倍派「6億7000万円超」を不記載 裏金の「責任」取るのは誰?
派閥の政治資金をめぐる事件を受け、安倍派は31日に収支報告書の訂正を届け出ました。NNNは独自に取材し、裏金を受け取っていた自民党議員とその金額をリスト化しました。日本テレビ政治部・与党担当キャップの前野全範が解説します。

■“裏金”を受け取っていた自民党議員とその金額

藤井貴彦キャスター
「派閥の政治資金をめぐる事件について、ここまでの状況を整理します」

河出奈都美キャスター
「解散を決めている二階派、岸田派、安倍派のうち、これまで収支報告書の訂正をしていたのは二階派と岸田派です。二階派は今月18日に、記載漏れしていた政治資金パーティーの収入など、3年間で2億1000万円余りが不記載になっていたと訂正。また、岸田派も同じ日に、2501万円について訂正しました。安倍派は、刑事処分が出た19日から10日以上経った31日に、ようやく収支報告書の訂正を届け出ました」

「過去5年間の不記載総額が6億7654万円にのぼり、元議員も含めて95人がキックバックなどのいわゆる“裏金”を受け取っていました。このうち三ッ林裕巳衆議院議員は、3年間で少なくとも1800万円のいわゆる“裏金”を受け取っていたことが新たに明らかになりました」

「まだ安倍派が届け出た金額は反映されてないのですが、日本テレビは、“裏金”を受け取っていたことがわかった自民党議員とその金額を独自に取材しました。金額の大きい順にみていくと、1位は大野泰正氏で5154万円。そして、池田佳隆氏が4826万円と、安倍派が続きます。さらに4位に二階派の会長・二階俊博元幹事長。5位に安倍派の『5人衆』の1人、萩生田光一前政調会長が続きます。大野氏は在宅起訴され、池田氏は逮捕・起訴。谷川氏は略式起訴され議員辞職しました。また、二階俊博元幹事長は秘書が略式起訴されています」

■安倍派の収支報告書の訂正 なぜ10日以上かかったのか?

藤井キャスター
「日本テレビ政治部・自民党担当の前野キャップと話を進めていきます。特捜部の捜査が終わったのが今月19日でしたが、安倍派の訂正まで10日以上かかっています。これはなぜなんでしょうか?」

前野全範 政治部与党担当キャップ
「野党に追及材料を与えるとの懸念があったのが一つあります。また、収支報告書を訂正すると安倍派の各議員の不記載について新たな刑事告発が出てくるため、一部の議員が強く抵抗していました。安倍派の関係者に取材すると、複数の安倍派議員が『キックバックを受けたカネには手を付けてないから訂正したくない。カネは派閥に返すからそれで終わりにしたい』などと主張したということです。ただ、いったん派閥側から『裏金』を受け取った時点で自分の収支報告書に記載する義務がありますし、『カネには手を付けてない』との主張については、自民党内からも『裏金の使い道を明かしたくないから言い訳をしているだけだ』との厳しい指摘も出ています」

■“裏金”の使い道は?

藤井キャスター
「その裏金の使い道ですが、明らかになってきているんでしょうか?」

前野キャップ
「日本テレビが独自に集計した42人の議員の中では、『使い道』として最も多かったのが『事務所で保管・未使用』で15人、次いで『事務所経費・会合費等』が7人、『政治活動費』が9人でした。ただ抽象的な回答が多く、使い道が詳細に明らかになったとは言えない状況です」

藤井キャスター
『『事務所で保管・未使用』で15人いるということですが、31日に訂正された安倍派の収支報告書には、いわゆる裏金の使い道については書かれているんでしょうか?」

前野キャップ
「いえ、安倍派の報告書に書いてあるのは、どの議員に幾ら渡していたかという金額だけです。これだけでは使い道はわかりませんが、今後、安倍派だけでなく、安倍派の各議員が自分の政治資金収支報告書を訂正することになります。そこには派閥側から入ってきた金額だけでなく、議員個人としての支出、何に使ったのかが記載されることになります。つまり『裏金の使い道』も今後、ある程度は明らかになります」

■「裏金リスト」はすぐにでも作れるが…

藤井キャスター
「野党側は『裏金リスト』を提出しないと予算審議に応じないと強硬姿勢をみせていますけれども、自民党としてはリストを出せないんでしょうか?」

前野キャップ
「いえ、既に東京地検特捜部の捜査は終結していて、その過程で安倍派議員の裏金の金額や使い道は細かく認定されています。池田議員、谷川元議員、大野議員のように事件として立件されないと、議員ごとの具体的な金額は、検察側からは公表はされませんが、実態としては、裏金の金額や使い道は既に判明しています。つまり、安倍派の各議員が自ら進んで公表しさえすれば。『裏金リスト』はすぐにでも作れるものですし、実は既に存在しているとすら言えると思います」

「自民党は、週内にも裏金問題について、関係議員へのヒアリングを始める方針ですが、わざわざ追加の調査をするまでもなく、安倍派議員が協力しさえすれば、このリストはすぐにでも提出できるはずですし、各議員は、調査を待たずに、特捜部の捜査・聴取に対して説明したのと同じように裏金の金額と使い道を公表すれば良いだけの話です」

■責任は誰が? 事態を複雑化させている森喜朗元首相

藤井キャスター
「一方で安倍派では幹部の政治責任や処分をどうするかが議論になっていたんですが、何か結論は出たんですか?」

前野キャップ
「まだ結論は出ていなくて、安倍派内では塩谷座長や『5人衆』ら幹部が誰一人、議員辞職や離党といった形をとっておらず、自主的には政治責任を取らない状態になってしまっています。『5人衆』と呼ばれる人の中からは、塩谷座長を離党、もしくは議員辞職にして幕引きを図り、自分たちは何とか生き残ろうという声も出ています。一方、塩谷氏は自分だけが犠牲になることに強く反発していて、またこれとは別に中堅・若手の安倍派の議員の多くが、塩谷氏も『5人衆』も皆、離党か議員辞職しろと突き上げているという状態になっています。ある自民党幹部に言わせると『安倍派内で余りにも見苦しい責任の押し付け合いをやっている』と、呆れ気味に語っている人もいます」

「また、安倍派の処分の関係でいうと、事態を複雑化させているのが、派閥の会長経験者の森喜朗元首相の動きです。安倍派関係者によると、森元首相は安倍派幹部への処分論に強く反発していて、『塩谷座長1人に責任を取らせて、“5人衆”はとにかく守れ』と主張して、こうした考えを複数の自民党幹部や岸田首相にも伝えているということです。自民党はこれから調査をするということですが、時間をかけずに速やかにこの処分をどうするかを決めて、自浄作用を示すべき局面にあると思います」