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福島第一原発「廃炉の現実」 規制委員会トップが異例の言及

2022年9月28日 19:47
福島第一原発「廃炉の現実」 規制委員会トップが異例の言及

原発の安全性を審査する原子力規制委員会が発足して、今月で10年を迎えます。国が原子力政策を積極利用に転換する中、委員会のトップを務めた更田豊志さんが日本テレビのインタビューに応じました。更田さんが語った、福島第一原発の「廃炉の現実」とは?

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日本テレビのインタビューに答えたのは、「原子力規制委員会」発足当時からのメンバーで、委員長を務めた更田豊志さんです。

原子力規制委・前委員長 更田豊志さん
「いろんな意味で、変化に富んだ10年だったかなと」

更田さんは28日、5年の任期を終えて、職員を前に退任の挨拶をしていました。

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原子力規制委員会が発足したのは、10年前の2012年でした。東京電力福島第一原発で原子炉がメルトダウンし、水素爆発に至った事故の翌年でした。

田中俊一初代委員長(2012年9月)
「原子力規制行政の信頼が完全に失墜している中で発足する、原子力規制委員会と規制庁でございます」

原発の安全性の審査などが役割ですが、国民の不信感が押し寄せていました。

2014年、川内原子力発電所の再稼働審査に反対するデモが行われ、川内原発の設置変更許可の決定を発表した際にも、「やめろ!」と声が上がっていました。

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しかし、今、状況は一変しつつあります。今月22日、経済産業省・原子力小委員会のリモート会議では、次のような発言がありました。

資源エネルギー庁
「将来に向けた次世代革新(原子)炉のリプレイス・新増設は、避けて通れない道」

ウクライナ情勢もあり、電力が不足する中、国は積極的な原子力利用へとかじを切ったのです。

委員
「安全性が確認された原子力発電所の再稼働というのは、早めに進めていくことが求められると思います」

今や規制委員会は、審査をもっと急ぐよう求められる状況です。この状況に対して、更田さんは語気を強めました。

原子力規制委・前委員長 更田豊志さん
「日本は断層あっちこっちにありますから、厳しい条件にあるのは事実だし、それだけ審査も難しくなると思います。私たちは、要求する安全のレベルを引き下げるつもりは毛頭ありません」

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さらに、更田さんが在任中、特に取り組んだのが、福島第一原発の廃炉でした。

国は廃炉を40年で終わらせるとしていますが、「最難関」と言われる溶け落ちた核燃料・燃料デブリの本格的な取り出しは、まだ先が見えない状況です。この状況について、更田さんは次のように述べました。

原子力規制委・前委員長 更田豊志さん
「すべての放射性物質を取り出すとか、ゼロにするということは、技術的にはなかなか考えにくくて。できるだけ量を減らす努力はするけど、あとは現場をいったん固めてしまう、安定化させてしまうということは、現実的な選択肢なんだと思います」

溶け落ちた核燃料・燃料デブリは、原子炉圧力容器や格納容器の底にたまり、こびりついています。

更田さんは「これらをすべて取り除くことはできず、原子炉建屋の底部については、その場でいったん固めるのが現実的だ」との考えを示しました。

原子力規制委・前委員長 更田豊志さん
「(原子炉建屋)底部はかなりの幅で、固めてしまわないと難しいかなと」

取り除けないで残る燃料デブリの存在と、その扱いについて、規制委員会トップとして踏み込んで述べるのは異例のことです。

国が原発の積極利用に舵を切る中、福島を忘れず、その独立性を保(たも)てるか。原子力規制委員会の“次の10年”が問われています。