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“認知症”母から「念書」 “統一教会”に献金1億円超…返還求め裁判 11日に最高裁判決

2024年7月10日 21:01
“認知症”母から「念書」 “統一教会”に献金1億円超…返還求め裁判 11日に最高裁判決

安倍元首相の銃撃事件から2年がたちましたが、この事件をきっかけに社会問題化したのが世界平和統一家庭連合、いわゆる“統一教会”への高額献金の実態です。11日の最高裁では、母親が高額献金をした女性が教団に賠償を求めた裁判の判決が言い渡されます。教団は母親に「念書」まで書かせていたといいます。

教団関係者
「おいくつになりましたか?」

中野さん(仮名)の母親
「86歳です」

教団関係者
「家庭連合に返金請求することになっては断じて嫌ということで」

中野さん(仮名)の母親
「はい」

いわゆる“統一教会”が当時、信者だった女性とのやりとりを記録した映像。献金は自分の意思で行い、今後、返還を求めないことを約束する内容でした。

女性の娘の中野容子(仮名)さんは…

中野容子さん(仮名)
「こんなひどいことするのか。高齢者で認知症になっている人をこんなふうに踏みにじるんだって。許せないですよね」

中野さんは母親が違法な勧誘を受け献金させられたとして、教団側に損害賠償を求めて裁判を起こしています。

中野さんが母親の献金について知ったのは2015年のこと。帰省した際、亡くなった父親に財産が残っていなかったことについて母親と話をしていると、思いもよらない言葉が返ってきたといいます。

中野容子さん(仮名)
「『私が全部寄付しちゃった』と。びっくりして話を聞いていったら、実は統一教会に献金をしてしまったことがその時、初めてわかった」

中野さんが調べると、母親が当時、寝たきりの生活をしていた父親の資産を現金化したり、所有していた果樹園を売ったりして、1億円以上献金をしていたことが明らかになったのです。

売却した果樹園は、両親が生計をたてるために野菜や果物を丹精込めて育ててきた場所。母親自身が“ここだけは大事にしてほしい”と話していたといいます。

中野容子さん(仮名)
「母にとって一番大事な場所だった。(果樹園を売ったのは)全く理解できなかったですね」

母親に貯金はなくなり、自ら脱会の意思を教団側に伝えたといいます。

中野さんは返金を求めて教団側と交渉しましたが応じず、2017年、母親とともに提訴に踏み切りました。

ところが、裁判である問題が立ちはだかったのです。

中野容子さん(仮名)
「献金について取り戻すことはしません、ということを約束したもの」

見せてくれたのは、母親が教団側と交わした「念書」。そこには「寄付ないし献金は、私が自由意思によって行ったもの」「損害賠償請求など、裁判上・裁判外を含め、一切行わないことをここにお約束します」と記載され、母親の署名と押印もありました。

さらに、教団側は映像まで撮影していたのです。

教団関係者
「書類はご自身の認識に一致するということで手続きをしてこられた?」

中野さん(仮名)の母親
「はい」

教団関係者
「家庭連合に返金請求することになっては断じて嫌だということで」

中野さん(仮名)の母親
「はい」

「念書」の内容について、教団側が母親に意思を確認させる様子が映っていました。当時、母親は86歳。この頃には認知症の症状が出始めていて、実際に7か月後、「アルツハイマー型認知症」と診断されました。

中野容子さん(仮名)
「そこに書いてあることも(母親が)理解していたとは到底思えません。なんでそんなひどいことをしないといけないのか」

1審の東京地裁は、「映像のやりとりに不審な点は見受けられない」とした上で、「念書は正常な判断能力に基づいて作成された」と述べ、念書は有効だと判断し、中野さん側の訴えを退けました。

1審の判決の後、91歳で母親は亡くなりました。中野さんは裁判を続けましたが、2審の東京高裁でも敗訴。

しかし、その翌日…状況は一変しました。

安倍元首相の銃撃事件。事件をきっかけに教団側による高額な献金の実態が明るみに出たのです。

教団側が勝ったまま終わっていいのか。最後の望みをかけて中野さんは上告に踏み切りました。

先月、最高裁で開かれた弁論。中野さんは裁判官の前で思いを訴えました。

中野容子さん(仮名)
「統一教会が極めて悪質なやり方で、母から取り付けた念書をたてに返金請求に応じる姿勢が全くなく、司法に訴えるしかなかった。被害を回復させてください」


一方、教団側は「真摯に信仰に向き合っていて、被害を受けたという認識がなく、念書は有効だ」などと主張しました。

「念書」の有効性が主な争点となっている裁判。母親が献金について打ち明けてから約9年。最高裁は11日、判決を言い渡します。

中野容子さん(仮名)
「念書みたいなものを強いてくるっていうこと自体が間違った行為なんですよね。(母親の)後悔を取り返すじゃないけど、そういうもの(判決)になってほしい」