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【解説】鳥島近海の地震 観測された「T波」とは?海底火山との関連も?

2023年10月16日 22:46
【解説】鳥島近海の地震 観測された「T波」とは?海底火山との関連も?
今月9日、太平洋沿岸で津波が観測された伊豆諸島・鳥島近海を震源とする地震。地震波を分析したところ「P波」と「S波」が、はっきりと判別できない一方で、「T波」という“第三の波”が観測されていました。

「T波」は海底火山の活動と関連があると考えられています。鳥島近海での揺れ・津波が発生した要因は?社会部災害担当・内藤ミカ記者が解説します。【週刊地震ニュース

■震度1以上は31回 最大震度は北海道小平町などで震度3

10月9日から15日までの期間、震度1以上の地震は31回ありました。このうち、震度3以上の地震は4回でした。

▼9日午後11時42分ごろ、北海道の福島町で震度3の揺れを観測する地震がありました。震源は渡島地方西部で、地震の規模を示すマグニチュードは3.0、震源の深さは8キロでした。

▼13日午前3時39分ごろ、鹿児島県十島村で震度3の地震がありました。震源はトカラ列島近海で、マグニチュードは3.3、震源の深さは18キロでした。

▼13日午後4時54分ごろ、北海道小平町で震度3の地震がありました。震源は留萌地方南部、マグニチュード3.2、震源の深さは9キロでした。

▼14日午前11時29分ごろ、青森県東通村で震度3の地震がありました。震源は青森県東方沖、地震の規模を示すマグニチュードは4.7、震源の深さは54キロでした。

■相次いだ津波注意報 鳥島近海の地震

伊豆諸島の鳥島近海では今月2日から地震活動が活発となりました。今月5日に発生したマグニチュード6.5の地震では、八丈島で30センチの津波が観測されました。

さらに、今月9日の朝には規模の小さな地震が多発して再び津波が発生しました。八丈島で高さ60センチの津波が観測され、船が転覆する被害が出たほか、太平洋沿岸の広い範囲で津波が観測されましたが、津波を引きおこした要因は依然としてわかっていません。

■気象庁「普通の地震ではない」

揺れ・津波がおきるのには主に3つの現象があります。

①岩盤が割れる・ずれて壊れる
②火山活動
③海底の地滑り

9日については、揺れは発生したものの、気象庁は岩盤が壊れるような「普通の地震ではなかった」と指摘しています。

一般的に津波は地震の規模を示すマグニチュード6の半ばから津波がおきるとされていますが、9日の地震の規模はマグニチュード6クラスより、はるかに小さく、正確な震源も特定できていません。

また、最大の津波を引き起こした地震が、どれであるか特定できていないということです。

■津波は発生したのに…波形に“大きな違い”

今月5日に津波注意報が発表された際に観測された地震波形では、波形が上下に大きく振れています。一方、今月9日に津波注意報が発表された時の地震波形は、ほぼ振れず、大きな動きがありません。両日とも津波が観測されていますが、地震波形をみると大きな違いがあったのです。通常、地震がおきると初期微動「P波」と主要な動き「S波」がみられます。気象庁によりますと、今回の揺れは、このP波とS波がはっきり判別できないということです。地震の波形がはっきりせず、地震の規模が大きくないものの津波が発生したことから、気象庁は「普通の地震による揺れではない可能性」があるとみています。

■第三の波“T波”とは?

鳥島近海では今月9日午前4時から午前6時半ごろにかけて、小さな揺れが断続的に発生していました。当時、小笠原諸島・父島で観測された地震波では、上下に大きく振れている箇所が14箇所あることが確認されています。これらの波形は、「P波」でも「S波」でも無い“第三の波”「Tフェーズ」「T波」だと考えられています。

■T波は海底噴火と関連する?

「T波」とは地震波が海底面で“音波”に変換されて海中を伝わったものです。「海底の浅い所で発生した地震」や「海底火山の噴火」に伴う“音波”として伝わる振動であり、TはP波・S波に続く「第三の波」という意味から付けられました。地震の専門家で環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんによりますと、T波がみられるのは海底噴火が観測される時の特徴のひとつだということです。

また、政府の地震調査委員会の平田直委員長は、揺れと津波をおこした要因はわからず、今後、研究と分析が必要とした上で、「今回の津波発生は地下のマグマ活動が関連している可能性もある」と話しています。

■鳥島近海 過去にはマグマ活動によって津波発生

今回の地震活動域は、鳥島から南西に約100キロ離れた場所です。鳥島の北側には須美寿カルデラ(須美寿島)、南側には孀婦岩と、鳥島も含めて海底火山が続く場所になっています。須美寿カルデラの近くでは、2015年5月にマグニチュード5.9という比較的規模の小さな地震によって津波が発生しました。分析した結果、マグマが関与した地殻変動によって津波が発生した可能性があるとされています。このように、須美寿カルデラでは10年に1回程度、マグマ活動による津波が発生することが知られています。

今回の地震活動域である鳥島の南側には孀婦岩があり、こちらも海底火山です。須美寿カルデラでおきた過去の事例から、今回もマグマが関与した可能性があると考えられています。

海上保安庁は津波発生後の今月11日に上空から観測をおこないましたが、孀婦岩の周辺の海面には特段大きな変化はありませんでした。今月9日の津波発生以降、鳥島近海での地震活動は低下していますが、比較的規模の小さな地震でも津波が発生していることから、当分の間は注意が必要です。

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