高齢ドライバー相次ぐ事故 なぜ?自主返納は減少 “免許手放せない”事情とは…
高齢ドライバーによる交通事故が後を絶たない中、免許の自主返納が減少傾向となっています。返納を決意する人がいる一方で、返納したくてもできない、悩みの声が聞かれました。
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神奈川県逗子市で今月15日、50歳の女性が亡くなる事故がありました。事故を起こしたのは80歳の女性。反対車線の車に衝突したあと、歩道を歩いていた女性をはねたということです。
同じ日、福島県鏡石町では、72歳の女が運転する車が駅に突っ込み、19歳の大学生が死亡。その翌日には、新潟県新発田市で88歳の女が運転する車に小学生3人がはねられる事故が起きました。
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2022年、75歳以上の高齢者が運転する車やバイクで起きた死亡事故は379件。これは死亡事故全体の16.7パーセントを占めていて、割合は過去最高を更新しています。
後を絶たない高齢ドライバーの事故にたびたび議論されるのが、免許返納についてです。
20代
「やっぱり返納っていう選択肢もあるのかなと思います」
千葉在住(80代)
「ドブに落ちちゃったり、あやしくなったのでやっぱり『返納して』って言いました」
そう話す女性の夫は、以前車を運転していましたが、75歳のときに返納を決意したといいます。
千葉在住(80代)
「やっぱり70歳すぎたら、あんまり乗らない方がいいと思いますね」
一方、免許を持っている人は…。
福島在住 (60代)
「免許返納考えます。我が身のことですよ。自分のことを言われているような気がして。やっぱり怖いです」
神奈川在住(70代)
「年相応でやっていかないといけない。あと1回更新するかしないかが瀬戸際じゃないかな」
多くの人が“他人事(ひとごと)ではない”と感じていました。
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しかし、免許の自主返納の件数は、3年連続で右肩下がり。
池袋の暴走事故が起きた2019年をピークに減少しています。
埼玉・深谷市で21日、孫を駅まで送っていた男性に話を聞きました。75歳になったら返納を考えているといいますが…。
埼玉在住(71歳)
「地域的に便利ですよね、車だとね」
交通の便が悪いため、免許を手放すのは悩ましいといいます。話を聞いた別の女性も、返納について考えていますが…。
埼玉在住(74歳)
「30分かかりますから歩くと」
自宅から駅まで、歩くと30分かかるといいます。
埼玉在住(74歳)
「都会と違うからね、この辺は。車ないと不便だから」
また、悩みがあるのは家族も同じです。神奈川県逗子市で、80代の祖父に家族で返納を説得しているという女性に聞きました。
30代
「免許返納の話はしてるけど、移動手段のひとつや趣味だと言っていて、生きがいをとってまで説得する必要があるのかって」
なかなか本音を伝えづらいといいます。
30代
「みんなが前向きに返納できる環境であればいいなと思います」
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その“環境”を整えようと、埼玉県深谷市では、路線バスを半額で利用できるサービスを2016年から開始。運転経歴証明書を見せれば半額になり、利用者は増えているといいます。
また、百貨店やスーパーでは、免許を返納した人が購入した商品を、無料で配送するサービスも。
交通事故を減らすため、社会全体で返納をサポートする動きが広がっています。