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喫緊に迫る物流問題トラック業者を取り巻く現状とは…解決のカギは「トラックGメン」

2024年1月7日 17:00
喫緊に迫る物流問題トラック業者を取り巻く現状とは…解決のカギは「トラックGメン」

トラックドライバー不足の深刻化により輸送量の減少が懸念される物流2024年問題が迫る中、対応策の一手として発足した「トラックGメン」を取材。「長時間の荷待ち」「荷主とトラック事業者の関係」。見えてきたトラック事業者の置かれている現状とは。
(社会部 田中耕平)

■物流2024年問題とは

2024年4月1日以降、トラックドライバーなど自動車運転業務に携わる人たちの年間の時間外労働の上限が960時間に法的に制限されることによって起こる問題です。

国土交通省によりますと、トラックドライバーの年間所得額は、全産業平均と比較して大型トラック運転者で約1割低く、中小型トラック運転者では約2割低くなっています。一方、年間の労働時間は大型トラック運転者で約1.22倍、中小型トラック運転者で約1.16倍です。

これを法的に制限することで、「長時間労働」や「低賃金」を余儀なくされているトラックドライバーの労働環境を改善し、人手不足を解消しようという狙いがあります。

■ドライバー労働環境改善狙うも収入減少→人手不足の懸念

トラックドライバーの労働時間には、物流ターミナルで荷物の積み込み待ちをする「荷待ち」や荷物を積み込む「荷役」、そして「運搬」があります。

支給される運賃は荷物を運ぶ運搬作業の走行距離に応じて支給されるため、走れば走るほど収入が増えますが、実は「荷待ち」と「荷役」には労働時間に対する対価は発生していませんでした。

その後、2018年の法改正により「荷待ち」と「荷役」も対価を受け取れるようになりましたが、国土交通省関東運輸局によりますと、現場の実態として荷主は「より安い」運送業者を選ぶため、運送業者は荷待ちなどの対価を請求しづらい状況があり、法律がしっかり守られていないのが現状だといいます。

こういった現状の中、今回の労働時間の規制で距離が短くなれば主な収入源である「運搬時間」が減り、収入が減少してしまいますし、そうなると更なる人手不足に拍車がかかり、輸送能力の低下が懸念されています。

■トラックGメン発足

政府は、対策案を取りまとめた「政策パッケージ」を2023年6月に発表。そこにはトラックドライバーの賃金問題に関することも記されています。この「賃金問題」の改善を進めるべく立ち上げられたのが、トラックGメンです。

国土交通省は貨物自動車運送事業法に基づき、適正な取引を阻害する可能性のある荷主や元請け事業者の監視を強化するため、2023年7月に「トラックGメン」を発足しました。総勢162人で、各都道府県にある地方運輸局や地方運輸支局に配置されています。

トラックGメンの主な活動はトラック事業者1社1社に電話をかけ、情報収集を行ったり、実際に物流ターミナルに視察などを行い、そこで得た情報をもとに荷主や元請け事業者に改善を求める「働きかけ」や「要請」を行い、それでも改善がみられなかった場合は「勧告・公表」を行います。

■より能動的に「プッシュ型情報収集」

国交省は、トラックGメン発足以前も「働きかけ」などを行うための情報を募集するアンケートを国交省のホームページに掲載していましたが、より能動的に動くためにトラックGメン発足後は事業者に電話をかけたり、直接事業所に出向くなどプッシュ型の情報収集を行っています。

その結果、2022年度は「働きかけ」が26件で「要請」が3件だったものが、発足した2023年度の10月末時点で「働きかけ」173件、「要請」7件と大きく活動を伸ばしています。

■荷主とトラック事業者の実態

関東運輸局によりますと、トラックGメンが収集した情報の中で特に多い内容としては「長時間の荷待ち」、荷待ちなどの対価が受け取れない「運賃問題」、警報級の雪や雨が降っている日の依頼や明日中に運んで欲しいなどの「無理な配送依頼」があるということですが、多くのトラック事業者がこれらの問題を抱えているにもかかわらず、トラックGメンが「働きかけ」の対象となる情報を得られる確率は極わずかだということです。

理由は、トラック事業者と荷主・元請け事業者の関係性にあるといいます。トラックGメンに相談したことで、トラック事業者側はどこの事業者か荷主側に特定されるのを恐れており、仮にトラックGメンに相談したことが判明した場合、契約を切られてしまうなどの可能性もあるということです。

そういった実態を踏まえ、関東運輸局は2023年12月に関東商工会議所連合会などに協力要請を行うなど、トラック事業者からの相談がなくても荷主や元請け事業者に対し、荷待ち時間の短縮や輸送サービスの質に応じて適正な対価を支払うなど良好な取引関係に向けた取り組みを進めているということです。

■ドライバー不足と物流問題解決のカギ

物流問題に対し何も対応しなかった場合、輸送できる貨物の量が2030年度には約34%も不足する可能性があるとされています。そうなった場合、消費者が当たり前のように受けている当日・翌日配達の宅配サービスなどが受けられなくなる可能性があり、私たちの生活に大きな影響が出てくることが予想されます。

トラックGメンの活動はトラックドライバーの人手不足解消のみならず、日本の物流問題解決へのカギの1つとなっています。今後のトラックGメンの活躍が期待されます。