63年の歴史に幕…“現役最古のレストラン船”「ロイヤルウイング」最後の航海 乗客の特別な思い
船内で食事を提供する現役最古の大型客船「ロイヤルウイング」が14日、63年の長い歴史に幕を下ろしました。特別な思いで引退の日を迎える人や、別れを惜しみ涙する人など“ラストクルーズ”を取材しました。
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14日午後5時前、あいにくの雨にもかかわらず、乗客たちは途絶えることなく船へと乗りこんでいきました。
出航前の定番のセレモニーでは、汽笛が鳴るとバルーンが空高く舞い上がり、船での思い出を笑顔で振り返る人や、出航を前に早くも「いろいろ思い出があったので…」と感極まって涙してしまう人もいました。
14日、63年の長い歴史に幕を下ろした大型客船「ロイヤルウイング」。たくさんの思い出を積み込み、“最後の船出”へと旅立ちました。
ロイヤルウイングは、1960年に瀬戸内海を航行する旅客船として誕生。1989年には横浜を母港とする「クルーズ船」へと生まれ変わりました。コロナ禍で修理に必要な部品の調達が困難になり、現在の船は引退することとなったのです。
ロイヤルウイングが長年愛されてきた理由は、船の上から眺める東京湾の絶景と、中華街がある“横浜ならでは”の船内の厨房でつくる本格派「中華バイキング」です。
地元・横浜に住む葉山さんも、この料理に魅了され、20年以上、ロイヤルウイングに乗り続けたということです。葉山さんは「(もう食べられなくて)悲しいです、すごく。さっきも泣いちゃった」と話しました。
国土交通省によると、ロイヤルウイングは船内で食事を提供する船としては“現役最古”となり、その事実が多くの乗客に愛されてきた証しです。
ロイヤルウイング 雲井遠東総料理長
「おいしい料理をいただいた感謝で、(お客さまから)お花をいただきました。本当、ありがたいと思います」
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そして、“特別な思い”を抱えていた人は他にも。2011年、「ロイヤルウイング」で結婚式を挙げた掛川さんです。「新郎新婦は金と銀のバルーンを飛ばすんです」「風船をあげるなんて、それ以来」と話します。
実は当時――
「ちょうど、(東日本大)震災の時だったんですよね」
不安でいっぱいでしたが、青空へと舞い上がるバルーンに明るい未来を重ねた記憶もあるといいます。その後に生まれた2歳の息子、悠之佑くんと感謝を込めて一緒にバルーンを飛ばしました。
約2時間半のクルーズを終えて船を下りてくると、悠之佑くんは一生懸命、手を振り続けていました。また1つ、大事な思い出ができました。
船員
「63年間ロイヤルウイングを愛し応援してくださった皆様。本日は本当にありがとうございました」
20年以上、この船に乗り続けてきた葉山さんは、顔見知りの船員たちとの別れに最後もこらえきれず、涙していました。一緒に船に乗り続けてきたパートナーも、涙を隠すように拍手を送り続けました。その姿に取材したnews every.の番組スタッフも「お2人見てもうダメです」ともらい泣き。葉山さんに「泣いちゃダメ」と言われる場面もありました。
最後の最後の瞬間まで、多くの人に愛されてきた「ロイヤルウイング」。2025年には新しい船が運航を開始する予定です。