GWもクマに注意……気をつける点は? 人身被害、前年の3倍で“過去最多” 冬眠明けは「1~2週間早い」【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「クマ被害過去最多 連休も注意」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●東京でも目撃増 指定管理鳥獣に
●動物と衝突 危険なロードキル
「27日からGWが始まります。行楽に出かける方も多いと思いますが、東京でもクマの目撃情報などが増えていて、どこにいても注意が必要です」
「北海道・名寄市の観光名所への道中では25日、林の奥で体長1メートルを超えるクマが2頭動いている映像が撮影されました」
「秋田・仙北市では4月、店舗兼住宅にクマが居座り、白いビニールのようなものをかんでいる様子がカメラで捉えられました。住民がクマを追い払うため爆竹を使ったところ、小屋の中に入ってしまったということで、翌日になって捕獲されました」
鈴江奈々アナウンサー
「住宅のところまで来てしまって、人が食べているものの味を覚えてまた来るようになったらと考えると、より接近してきているのを感じますよね」
近野解説委員
「どこにいても油断ができない状況になりつつあります。環境省の統計を見ても明らかです。昨年度は過去最多となる219人の人身被害が発生し、そのうち6人が亡くなりました。被害の数は前年の約3倍です。いかに急増しているか」
「クマの生態に詳しい石川県立大学の大井徹特任教授によると、クマの冬眠は通常は5月初旬にかけて続きますが、今年は暖冬の影響で例年よりも目覚めが1~2週間早くなっているため、GW中もクマの出没に注意が必要だといいます」
山崎誠アナウンサー
「クマもクマで生きるためだとは思いますが、住宅街でも見られることが増えているので、怖さは近くで感じますよね」
近野解説委員
「本当に心配な状況です。東京都内ではツキノワグマの目撃情報などが相次いでいます。東京都環境局のホームページによると、今年1月~4月21日で、多摩地域の青梅市やあきる野市、奥多摩町で17件確認されています」
忽滑谷こころアナウンサー
「東京都内でも多いですよね。たとえ直接の被害がなかったとしても、これだけ近くまで来ていると思うと安心して暮らせないですよね」
近野解説委員
「人の営みが活発な地域にもクマは出てきていて、都市部や市街地での目撃が相次いでいます。それはなぜなのか。大井特任教授によると、クマの分布している地域が拡大していることがまずあるそうです」
「環境省の調査によると、ツキノワグマの分布域は2003年度からの15年間で40%拡大しました。そのため、人間の住む地域と隣り合うような状態になるところも増えています」
「もう1つは、クマのエサとなるドングリなどが凶作になっていて、食べ物を求めて山の奥深くから下りてきて、人間の生活圏に現れてきたということです」
「それだけならまだしも、人間の生活圏に入ってそのままその近くで冬眠したクマも少なくないと考えられていて、寝るのも起きるのも人里近くなので、春になっての目撃や被害の拡大につながっている可能性があるといいます」
「なお気になるのは、冬眠したクマというのは、人間もそうですが、空腹の状態で起きてしまう。起きた瞬間に食べ物への執着が強い状態になっているので、それが被害につながってきている可能性もあるそうです」
刈川くるみキャスター
「気持ちのいい季節になりましたし、ピクニックに行ったり自然を楽しんだりする方も多いと思いますが、冬眠明けだからこそ気をつけた方がいいことはありますか?」
近野解説委員
「冬が終わって春になると、私たちも活動は活発になります。大井特任教授によると、クマの嗅覚は、最も嗅覚が鋭い犬と比べても7倍ほどと言われています」
「これから行楽シーズンになると、ハイキングや、河原や山の中に入ってのレジャーが増えます。バーベキューやお弁当の残りが放置されていると、鋭い嗅覚でかぎつけてやってきます」
「同じ場所に何度も放置されれば、何度も来て覚えてしまうので、しっかり管理してほしいということです」
鈴江アナウンサー
「人間でも空腹だと不機嫌になりますし、邪魔されたらちょっと攻撃的になるじゃないですか。そういったことも想定して、今のクマはもし遭遇したらお腹を空かせているということも覚えておいた方がいいですね」
近野解説委員
「自分になぞらえても、そうですよね。不機嫌になっているんだぞ、とわきまえておきましょう。このように市街地などでも被害が相次いでいるため、環境省では16日、冬眠から目覚める時期を前に、新たにクマ類を『指定管理鳥獣』に定めました(四国を除く)」
「指定管理鳥獣は、生息数が増えすぎて生態系に影響を及ぼしたり、農作物に被害をもたらしたりする生き物です。これまで対象だったニホンジカとイノシシにクマも追加することで、今後は都道府県による捕獲などの対策に国の交付金を活用できるようになります」
「また、現在は住宅街でクマが出没した場合、駆除するための発砲は警察の許可がなければ猟友会であってもできません。山の中は別ですが、市街地や人の集まる場所では警察の許可が必要です。今後はこうしたルールに関しても変更などを検討していくそうです」
山崎アナウンサー
「ルールも変わっていきますが、私たち自身がクマと出合うかもしれないという意識を持つことも大切かもしれませんね」
近野解説委員
「もう1つ、野生動物で気を付けなければいけないポイントがあります。衝突によるロードキルです。車でお出かけする方もこれから多いと思います」
「福岡県の国道で撮影された映像では、突然シカが出てきて、よける間もなく、車に衝突してしまいました。このシカはすぐに立ち上がって逃げていきましたが、車は事故の衝撃で大きくへこんでしまいました」
「東京・八王子のインターチェンジ近くで撮影された映像ではアライグマが映っていました。事故はクマと車だけではありません。野生動物の事故は動物が死んでしまうことが多いため、ロードキルと呼ばれています」
「全国の高速道路各社がまとめたロードキルの処理件数は、2022年度に約5万1000件。1日に百数十件です。NEXCO中日本は、暖かくなったこの時期にロードキルが増えるとして注意を呼びかけています」
NEXCO中日本の高速道路ドライブアドバイザー・林修平さん
「急ブレーキや急ハンドルは、さらに大きな事故のもとになる恐れがあるので、いかに事故を回避するかがまず重要。『動物注意』の標識がある場所は本当に危険があり得るので、前方を十分に見て運転して、早めに飛び出しに気づけるようにすることが大切です」
近野解説委員
「動物がいつ飛び出してくるか分からない、という意識を常に持つ。この標識は伊達じゃない、衝突が起き得るということで、お気をつけください」
鈴江アナウンサー
「確かに、看板を見た時にそこまで想定していなかったです」
近野解説委員
「かわいい看板もあったりしますからね。野生動物に遭遇するのは、今や山奥だけではないということです。帰省先や行楽先でもどうぞ油断しないでください」
(2024年4月26日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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