どうなる?社会保障改革
政府・民主党は11年12月20日、消費税率引き上げとセットで行う社会保障改革を決定した。政府は12年1月から始まる通常国会に、改革のために必要な法案を提出する方針で、それまでに改革の詳細を固める必要がある。
詳細が注目されるのはまず、派遣やパートなどの短時間労働者が企業の年金や医療保険制度に加入しやすくなる制度。現在も週30時間程度働いている場合は企業の年金制度に加入できるが、厚労省は週20時間程度働く人も加入できるような制度を検討している。しかし、保険料を半分負担することになる企業側の反対は根強く、対象範囲をどうするか、数年間の移行期間を設けるのかなどが焦点となっている。
詳細が決まっていない改革には、がん治療などの高額な医療費が必要な患者の自己負担軽減策もある。13年8月から実施される予定で、年収の低い層を中心に医療費の自己負担を軽くすることを目指しているが、財源が足りないため、どこまで制度が充実するかは不透明。
また、会社員と公務員の年金制度を一元化する方針が決まったが、詳細はまだ固まっていない。公務員優遇と指摘される年金額の加算部分が廃止されるのかが焦点となっている。
こうした改革を行うための法案は、国会に提出されても野党が反対するとみられ、成立しなければ実現しない。数年後の実現を目指す消費税率引き上げと同時に行われる改革とは別に、12年に早速変わるものもある。
まず、全国一律で手術や検査の価格を定める「診療報酬」は、12年4月、2年に一度の改定が実施される。11年末の予算編成段階で、全体としてはプラス0.004%とわずかに増額が決まったが、医療費をどう振り分けるかはこれから詰めるため、救急、産科、外科、小児科に重点配分し、介護との連携や在宅医療の推進ができるかが課題。
介護分野では、12年4月から、介護が必要な高齢者が望めば自宅で暮らせるよう、「24時間訪問介護」が全国でスタートする。すでに一部の市区町村では導入されているが、ヘルパーが定期的に高齢者の自宅を巡回する他、必要な時は夜間や早朝でも自宅に駆けつける。ただし、都市部以外では介護の人材確保が難しい上、高齢者の自宅が広く点在する状態で、必要な介護サービスが本当に届けられるのか課題が残っている。
この他にも、社会保障分野では、過去最多を更新し続けている生活保護受給者をどう支援するか、保育所増設で待機児童を減らすことができるのか、また、新卒者をはじめとする若者の雇用をどう確保するか、など課題が山積しており、改善に向けた取り組みは待ったなしの状況となっている。