5類移行「1年」…新型コロナは過去のもの? 死者「1.6万人」…季節性インフルを圧倒 軽症でも後遺症なお【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「コロナ5類1年 何が変わった?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●「普通」の感染症に?
●医療体制どうなった?
小野高弘・日本テレビ解説委員
「皆さん、身の回りで変わったことがあるかと思いますが、実際に何が変わったのか見ていきます」
「感染症法の分類は、1類から5類まであります。広がりの強さや重症度などで分けられ、新型コロナは5類。季節性インフルエンザなどと同じ扱いです」
「5類に移行したのがちょうど1年前の5月8日。あれから1年。行動制限はなくなり、感染対策は個人の判断になっています。この1年を振り返ってどうでしょうか?」
桐谷美玲キャスター
「保育園にお迎えに行く時も、5類になる前はマスクを着けるのが必須だったんですが、今は任意でマスクなしでも迎えに行っていいようになりました。ただ、手洗い・うがいや、人混みではマスクをするという習慣は注意してするようにしています」
鈴江奈々アナウンサー
「確かに習慣化しているものもあります。ただ、あの時飲食店にアクリル板あったよなとか、消毒が義務付けられていたなと(思い出します)。残っているところはあっても必須じゃなくなり、新型コロナが昔のことのようにさえ思えてしまうくらい忘れかけています」
小野解説委員
「あの時一生懸命呼びかけがあったのに…(と思ってしまいます)。新型コロナの流行が収まったかというと、違います。厚生労働省のデータのグラフを見ると、5類移行後も感染の波は来ています」
「全国の医療機関の定点観測による患者数ですが、1つの医療機関で1週間に何人の患者がいたかを示したものです。第8波(一昨年12月19日~25日)ではピーク時に30.31人。
その後に5類になった後も去年夏に第9波(8月28日~9月3日)が来て20.5人」
「今年1月29日~2月4日は第10波で16.15人でした。最新では4月、連休に入った28日までの1週間で3.22人です」
森圭介アナウンサー
「5類になったことで新型コロナはもうなくなった、終わったと思っている方もいるかもしれませんが、少なくなっているとはいえ、波は来ていますし、今でも1医療機関あたり約3人の方が今も苦しんでいらっしゃることは忘れないようにしたいですね」
小野解説委員
「感染の広がり方にどんな特徴があるのか、感染症の専門医である、埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭教授に聞きました。『コロナは今や、ちまたにあふれる感染症になった』と指摘しています。今世の中に、見えない形で広がっているといいます」
「以前のように飲食し、人混みもあります。人と会話をする時に感染者がいると飛まつ感染の可能性があります。感染者の数だけでいうと、大流行した第8波の時と変わらない可能性もあるそうです」
桐谷キャスター
「5類移行前と移行後に感染したんですけど、以前は医療機関を受診する前に電話をして、厳重に隔離されて薬局にも入れないので薬を届けてもらっていました。今はちょっと調子が悪くて病院に行くと、すぐに検査して『コロナだから家で十分休んでね』と言われました」
森アナウンサー
「医療機関の体制や対応が変わりましたよね」
桐谷キャスター
「以前は未知のウイルスだなという恐怖感があったんですけど、その不安感はちょっと減ったのかなとは思います」
河出奈都美アナウンサー
「あの当時は漠然とした不安がありましたけれども、実際に5類に分類されて、これまでと何が変わったんでしょうか?」
小野解説委員
「岡教授によると、今は重症化する人が極めて少なく、ほとんどが軽症だといいます。埼玉医科大学総合医療センターでは大流行していた時、30代や40代の人も含めて重い肺炎の人が多く、10人中3~4人は重症化でした。今、重症化する人は月に1人ほどだそうです」
森アナウンサー
「重症化する方が少なくなっているという事実だけでもほっとできますよね」
小野解説委員
「ただ、亡くなる人が多いのも事実です。厚労省が発表した新型コロナが原因で亡くなった人の数は、去年5月から11月の半年余りで1万6043人です。一方、季節性インフルエンザは去年1月から11月までの約1年間で778人。新型コロナの方が圧倒的に多いんです」
「コロナで亡くなる人の多くは、高齢の方で体調を崩したり、持病が悪化したりして死に至るケースといいます」
小野解説委員
「そして、誰にとっても怖いのが後遺症です」
「厚労省の研究班が東京・品川区、北海道・札幌市、大阪・八尾市の3自治体で行った調査によると、新型コロナに感染した成人で後遺症とみられる症状があると答えた人は1~2割いたといいます。せきや倦怠感、睡眠障害などの症状が多く見られました」
小野解説委員
「岡山大学病院の大塚文男教授(総合内科・総合診療科)は、新型コロナの後遺症に特化した外来を開設していますが、今もその外来には変わらず多くの予約が入っているといいます」
「一例では、2年前に新型コロナに感染した50代の女性は倦怠感や、長時間立っていられないなどの症状が続き、退職を余儀なくされ、今も治療を続けているといいます。岡山大学病院ではこれまで1000人が受診し、約半数が治療中だといいます」
「軽症でも後遺症はあります。熱が38度なくても、せきが出る期間が短くても、後遺症に悩む人がいるそうです」
小野解説委員
「大塚教授は『自分を守るだけでなく、人によって感染のしやすさ、後遺症の現れやすさも違うので、思いやりのある感染対策の継続をお願いしたい』と話していました」
鈴江アナウンサー
「具体的な後遺症の症状はどんなものですか?」
小野解説委員
「大塚教授によると、当初の従来株やデルタ株では味覚障害や嗅覚障害、髪が抜けるなどの症状が多くありました。現在のオミクロン株では倦怠感や頭痛、睡眠障害といった後遺症を訴える人が多いということです」
鈴江アナウンサー
「もし、後遺症かな?と思ったらどうすればいいのでしょうか?」
小野解説委員
「大塚教授によると、感染後1か月以上経過して体調が何かおかしいと感じたら1人で悩まず、まずは早めにかかりつけ医に相談してほしいとのことです。感染すると治るまで時間のかかる後遺症になる可能性もあるので、やはり感染しないのが一番だといいます」
小野解説委員
「そして、医療体制はどうなったのか。コロナ対策もこの1年間で変わりました」
「ワクチン接種費用は3月まで無料でしたが、4月からは定期接種として65歳以上の人や60~64 歳で重症化リスクの高い人が対象に。この方々の自己負担額は最大で約7000円となりました。それ以外の人は任意接種として全員自費で、1万5000円ほどとなっています」
「コロナ治療薬は、かつては全額公費で無料でしたが、4月からは高額なコロナ治療薬を使う場合の公費補助がなくなりました。例えば塩野義製薬の『ゾコーバ』の価格は5万円余り(5日分)なので、患者が支払うのは3割負担だと約1万5000円です」
「そして、検査の費用も新型コロナに関わる医療費も、他の病気と同様に1割や3割などの自己負担をする形となりました」
森アナウンサー
「こういった取り巻く環境は変わりましたが、我々が気を付けなきゃいけない対策は変わらないんですよね?」
小野解説委員
「まずは人に感染させない。熱があれば外出を控え、鼻水やせきが出る場合にマスクを着けることが必要だということです」
鈴江アナウンサー
「私たちができることは限られていますけれども、これまでの経験というのがあります。周りのへの配慮や、後遺症で悩んでいる方もいるということをちゃんと理解しておくということも、とても大切ですよね。職場や家庭での配慮につながるかもしれませんね」
小野解説委員
「(大流行が)過ぎたから大丈夫、ではなく現に流行の波はやってきます。教訓を胸に刻み続けたいです」
(2024年5月8日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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