×

【解説】夫の“家事・育児”時間「増加」も…妻とは圧倒的な差が 就業構造に問題?

2022年9月5日 21:22
【解説】夫の“家事・育児”時間「増加」も…妻とは圧倒的な差が 就業構造に問題?

総務省の調査で、男性が家事育児にあてている時間が過去最長になったことがわかりました。

・○○が20分増

・“人付き合い”減った

・夫の家事育児に妻は…

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■「社会生活基本調査」の結果公表 5年前より「減った」・「増えた」時間は

総務省による「社会生活基本調査」は、日本国民が生活の中で「何にどれくらいの時間を使っている」かなど、生活行動について調査するものです。初回の1976年から5年ごとに行っていて、前回は新型コロナウイルスが猛威を振るう前の2016年です。今回発表されたのは、去年2021年の調査結果です。

1日の生活時間を1週間平均でみた時に、2016年に比べて増えたものが、「休養・くつろぎの時間」です。2016年は「1時間37分」でしたが、2021年は「1時間57分」で、20分増えました。コロナの影響により家で過ごす時間が長くなり、その分くつろぐ時間も増えたとみられます。

同じように、睡眠の時間もわずかながら増えています。2016年の「7時間40分」から14分増えて「7時間54分」という結果でした。

くつろぐ時間が増えたということは、その分何かにあてていた時間が減ったということにもなります。

減ったのは仕事にあてる時間で、男性が22分減少、女性は5分減少しました。(男性:2016年6時間49分→2021年6時間27分、女性:2016年4時間47分→2021年年4時間42分)

コロナ禍でテレワークがかなり浸透して、「無駄な会議がなくなった」との声もよく聞かれますので、その結果かもしれません。

一方で、「少しさみしいかな…」とも言える調査結果もありました。

「交際・付き合いの時間」は2016年と比べると、男女ともに7分減っています。(男性 2016年15分→2021年8分、女性 2016年19分→2021年12分)

■夫の“家事・育児”時間「増加」 妻からは不満も…

この調査では、6歳未満の子供がいる夫婦が家事・育児などにどれくらいの時間をかけているかについても、夫と妻それぞれに聞いています。

夫の家事・育児などの時間は「1時間54分」と、今の形式で調査を始めて以来、2021年は最長だったということで、2016年よりも31分増えています。中でも育児の時間に限定すると「1時間5分」で、初めて1時間を超えました。

この変化について5日、街で聞きましたが、漏れなく夫への不満の声もついてきました。

夫婦(30代)

 夫「昔は10:0だったけど、(今は)9:1」

 妻「もうちょっと8:2」

 夫「掃除機をかけ始めました」

 妻「だんだん、言わなくてもやるようになりました」

妻(40代)
「けさも主人が午前中、在宅だったんですけど、その間、朝ご飯やってくれてました。(私)9:(夫)1かな。夫だけが、お風呂1人でゆっくり入るんですよ。私たちは子供と入るから、お風呂に1人で入っている時間にお風呂掃除してくれてたら、なおありがたいです」

夫婦(30代)
「(夫に)洗濯任せてるんですけど、そこは結構、私がほこり取りとか洗濯かすがたまるところは、私が」

■共働きでも男女で圧倒的な“差”が…

先ほどの調査結果を見て「最近、お父さんがんばってるね」と感じてしまうかもしれませんが、そう言っている場合ではありません。

妻の方の時間は、家事に関連したものを合計すると2021年は「7時間28分」で、2016年と比べて6分しか減っていません。夫が家事や育児に費やす時間が「31分」増えても、妻が楽になっていないというのがみてとれます。

さらに、圧倒的な“時間の差”があります。

男性の家事・育児の時間は一応、増えてはいますが、妻の時間と比べると差は一向に縮まりません。

夫の家事・育児の時間は、妻が専業主婦世帯では「49分」、共働き世帯では「51分」と2分しか差がありません。

理由として考えられるのは、共働きだとしても育児のために時短勤務をするのは、妻の方に限られるというパターンが多いことがあります。そうすると、必然的に女性の方が家にいる時間が長くなり、負担を強いられることになります。

■専門家「男性の意識の問題というより就業構造の問題」

こうした現状について、家族社会学が専門の中央大学・山田昌弘教授は、「もはや昭和ではないのに、昭和のモデルが残っている」とみています。

例えば、「女性の管理職や閣僚を増やしましょう」などの声は上がっているが、かけ声だけで結果が出ていないことと似ているということです。

その背景には「男性の意識の問題というより、就業構造の問題」があるといいます。子育て世帯の多くは、男性は長時間労働を前提とした正規雇用、対して女性は就業率が上がったとはいえ、非正規・パートというものです。結果として、男性が稼ぎの中心になり、女性の方が家にいる時間が長く、家事育児の負担がより多くなるということです。

解決策について、山田教授は「男女ともに正規雇用を原則とし、8時間労働できちんと帰宅できる働き方となって、収入格差も劇的に改善することが重要」と話しています。

    ◇

家事を夫と妻それぞれが納得いく形で負担しあい、育児も同じように時間をあてて取り組むためには、男性の意識の改革はもちろん、働き方や給与のしくみも大きく変えていくことが不可欠です。個人や家庭の努力に任せるだけでなく、せっかくこのような調査があるので、政府や企業は変えるべき点を速やかに変えてほしいと思います。

(2022年9月5日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)

  • 日テレNEWS NNN
  • 社会
  • 【解説】夫の“家事・育児”時間「増加」も…妻とは圧倒的な差が 就業構造に問題?