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「赤ちゃんポスト」設置から5年 変化は

2012年6月2日 21:15
「赤ちゃんポスト」設置から5年 変化は

 親が育てられない乳児を受け入れる「こうのとりのゆりかご」(「赤ちゃんポスト」)が熊本市の慈恵病院に設置されてから、5年がたった。妊娠や子育てに悩む女性を取り巻く環境は変わったのだろうか。

 「ゆりかご」は、親の都合で見捨てられる乳児を一人でも多く救いたいという思いで設置された。匿名で乳児を託すことができる日本で初めての施設だ。

 「ゆりかご」には、07年度に17人、08年度に25人、09年度に15人、10年度に18人の乳児や子供が入れられてきた。父母らの居住地で最も多いのは九州地方(36%)で、次いで関東地方(20%)、不明(18%)、中部地方(10%)、近畿地方(9%)、中国地方(6%)、四国地方(1%)と続く。

 先日22日に発表された11年度の利用件数は、過去最少の8件となった。慈恵病院は「経済的な問題から熊本市まで乳児を連れてくるのを断念する人が多く、悩んでいる母親が減っているわけではない」とみている。

 慈恵病院は、妊娠や子育てに悩む女性の相談業務に力を入れている。乳児を「ゆりかご」に入れる前に思いとどまってほしいという狙いだ。相談は年々増え続けており、11年度は過去最多の690件に上った。スタッフは24時間態勢で「SOS電話」に対応している。

 「捨て子の助長につながる」と、いまだ批判の声もある「ゆりかご」。一方で、救われた命があるのも確かだ。一人でも多くの乳児や母親を救うにはどうすればいいのか、「ゆりかご」は問いかけている。