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予測難しい火山噴火“光ファイバー”“火山ガス”多角手法で噴火の前兆をつかめ!

2023年1月3日 20:00
予測難しい火山噴火“光ファイバー”“火山ガス”多角手法で噴火の前兆をつかめ!
鹿児島・桜島

活火山が111もある火山国日本。24時間体制で観測されている火山も多いが、必ず事前に噴火が予知できるものではない。火山による犠牲者を減らそうと難しい噴火予測に多くの人が取り組んでいる。「光ファイバー」や「ガス」を使った噴火予兆をつかむ方法とは?
(社会部災害担当 内藤ミカ)

■「光ファイバーケーブル」使い火山性地震を精密観測

世界中にはりめぐらされている高速で情報通信が可能な「光ファイバーケーブル」を使った地震観測が進められている。東北大学理学研究科・西村太志教授などの研究チームは、光ファイバーケーブルとDAS(ダス)と呼ばれる「分散型音響計測器」を接続することにより、火山性地震を高精度にとらえることに成功した。

火山性地震は地下などでマグマや熱水などが移動することで発生する地震で、火山性地震の増加は火山活動を評価するうえで重要な情報のひとつとなっている。

研究チームが取り組んでいるのは、DAS(ダス)と呼ばれる「分散型音響計測器」から光ファイバーケーブルにレーザー信号を送り、光ファイバーケーブルの中にわずかに含まれる不純物に反射して計測器に戻って来たレーザー光を計測する方法。光ファイバーケーブルに振動が加わるとケーブルが伸縮して光の波形に「ゆらぎ」が生じるため、この光の変化をもとに地震波をとらえることができるという。

■鹿児島・桜島で1か月にわたり人工地震を発生させ実験

研究チームは2022年11月中旬からの1か月間、鹿児島県の桜島で実験を行った。桜島の周りを通る光ファイバーケーブルと気象庁や大学などが設置している地震計を利用し、自然発生する地震を観測した。

さらに桜島の地下約30メートルに穴を掘り、火薬を設置して爆破させ人工的に地震を発生させることで地震波のデータを収集した。実験を行った東北大学の西村教授は「地震波によってマグマの通り道がわかり、噴火のメカニズムを知ることにつながる」と話す。今後データを詳しく分析して2023年の学会で公表したいとしている。

■“光ファイバー地震計”で噴火の前兆つかむ

西村教授によると、地下にはりめぐらされた光ファイバーケーブルを利用することにより、数十キロにわたり5mから10m間隔で“高密度”で地震動を計測できるとしている。また噴火が発生した場合でも、地下に埋まっているケーブルは火山灰などの飛来物の影響を受けにくく安定して観測できることが利点だという。

広範囲で観測できる一方で、大量の観測データの処理に時間がかかる。ただ西村教授は今後も実験を重ねて光ファイバーケーブルを活用した火山性地震の観測の有効性を示し、噴火の予兆をつかむことにつなげていきたいと話す。

■火山ガスからマグマ活動変化とらえる

一方、群馬県にある草津白根山。

ここでは東京大学などの研究グループが採取した火山ガスに含まれる特定の成分からマグマ活動の変化をつかむ研究を進めている。

東京大学の角野浩史教授などの研究グループによると、草津白根山から放出される火山ガスを2014年から2021年にかけて定期的に採取し分析したところ、火山ガスに含まれるヘリウムとアルゴンの比率によってマグマ活動の変化をとらえることができたという。

具体的には、このヘリウムとアルゴンの比率が低い時にはマグマが泡立つ「発泡現象」が低調で、反対に比率が上昇した時には発泡現象が高まっていて、マグマ活動が活発になっていることを示しているのだ。

研究チームは今回、採取した火山ガスのアルゴンから、雨水や大気に由来する成分を取り除き、マグマ由来のアルゴンを特定する手法を今回新たに開発。これにより、化学反応を起こさず地表に到達するマグマ由来のアルゴンと、マグマから出てくるヘリウムの2つの成分を分析することで地下深くのマグマの様子を正確に伝える指標になるとしている。

■予測難しい水蒸気噴火

草津白根山は近年、水蒸気噴火を起こす火山として知られている。

これまで火山の地下深くの活動状況を知るためには火山性地震や地殻変動の観測が主な手段だったが、研究グループは火山ガスを採取・分析することで、予測が難しいとされる水蒸気噴火などの前兆現象をとらえるための新たな手法のひとつとして期待できるという。

難しい噴火予測。その予兆を何とかとらえようと、これまでにない手法を使ったアプローチが進められている。

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