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「SMILE-UP.」幹部を単独取材、被害補償の現状は?【ジュリー氏謝罪から1年<1>】

2024年5月14日 20:41
「SMILE-UP.」幹部を単独取材、被害補償の現状は?【ジュリー氏謝罪から1年<1>】
1年前のきょう(5月14日)、ジャニー喜多川元社長の性加害問題について、当時のジャニーズ事務所社長・藤島ジュリー景子氏が、初めて謝罪しました。

謝罪から1年、3つのポイントについて、ジャニー喜多川元社長からの性被害を告白した元ジャニーズJr.の橋田康さん、日本テレビ報道局の下川美奈・社会部長とお伝えします。

<1>被害者への補償の現状は?
<2>会社の約束は果たされた?
<3>男性の性被害 社会は変わった?

以下では「<1>被害者への補償の現状は?」についてお伝えします。
(<2>、<3>については別記事で配信)

  ◇

「SMILE-UP.」のコンプライアンス部門の責任者・山田将之CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)が、今回初めて日本テレビのインタビューに応じ、被害者への補償について、数か月以内に一通りの支払いを終えるとの見通しを示しました。

去年10月の会見で、山田将之氏のCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)への就任が発表されました。

補償はどこまで進んでいるのか、山田CCOに話を聞きました。

SMILE-UP. コンプライアンス責任者 山田将之CCO(今月9日)
「当社としては近いうちに申告いただいている方への姿勢は全員に対して示せればと思っていますが、何年もかかるわけでもなくて、数か月以内にはいったん一通りお支払いすべき方については、お支払いしてというところまで進めたいと思っています」

補償の見通しについて、初めてあきらかにしました。

その補償をめぐり、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の元代表、平本淳也さんは、被害を訴える人から日々、多くの相談を受けています。

中でも目立つのが在籍確認をめぐる相談です。

平本さんに届いた相談メール
「実際私がジャニーズ事務所に所属したのかはわかりません。性加害を受け連絡を絶ちました」

ジャニーズ性加害問題 当事者の会 元代表 平本淳也さん
「自分自身がそもそも(事務所に)所属していたのか、在籍があったのか、なかったのか、という認識をもてない人もたくさんいた」

去年10月、在籍確認ができず、補償対象外の通知を受けたという奥村嘉男さん(52)。

高校1年生のときにジャニー喜多川氏からテレビ局の見学に誘われ、その夜、合宿所で被害にあったといいます。

その後も呼ばれたレッスンには、恐怖心から一度も参加しませんでした。

奥村嘉男さん(52)
「今まで35年経っているけど、それを全くなかったものにされてしまうのがすごく悔しくて」

去年12月、SMILE-UP.が在籍確認ができなくても「個別に被害内容を検討する」と発表したことから、改めて補償を申請し、ことし2月に面談をしましたが、3か月経ったいまも、連絡はこないまま。

奥村嘉男さん(52)
「とにかく待って、返事が来るのを待ち続けるしかない」

さらに、奥村さんを苦しめたのは…

奥村嘉男さん(52)
「取り調べを受けているようなそういう雰囲気があるんですよね」
「気持ち的には言いたくないこともあるし、萎縮してしまう」

被害の事実確認のみが淡々と行われ、被害者としての心情など本当に伝えたかったことが、なにも話せなかったといいます。

補償の手続きでも、被害者の心のケアに配慮がほしいと語ります。

同じく去年10月、補償の対象外とされた川井研一郎さん(55)。

18歳のときに呼ばれたスタジオ見学のあと、合宿所で被害を受けたといいます。

川井研一郎さん(55)
「在籍確認がとれないため、補償ができないみたいな流れのメールがきたので、すごく落ち込みましたね」

しかし、改めて補償を申請したところ、川井さんは一転、ことし3月に被害が認められました。

川井研一郎さん(55)
「(SMILE-UP.側には) 補償しないと言い切ってしまった方々の中に本当に被害者がいないのか、本当に今一度よく調べていただきたい」

補償額は、メールに添付のPDFに示されていましたが…

川井研一郎さん(55)
「どうやって算定したかっていう内容は入っていません」

「自分の送ってきた人生とか、今の立場、人生、会社に仕事行けなくなっている、そういう状況を一生懸命お話ししてきたつもりなんですけれども。それがこれなのかって」

算定基準もわからず、いまだ合意には至っていないといいます。

  ◇

こうした訴えについて山田CCOに聞くと―

SMILE-UP. コンプライアンス責任者 山田将之CCO
「どういうことがあればいくらというのを、あきらかにすべきではないかというご意見もいただいていたりもするところも把握していますが、逆にいくら金額もらっているから、こういう被害にあったんだなとひもづけられたりとか、そういうところが公表していいのか、通知していいのかのひとつの悩み」

また、在籍確認については―

SMILE-UP. コンプライアンス責任者 山田将之CCO
「必ずしも客観的証拠がなければダメですということでは全くなくて、話の内容もそうですし、全体の状況からそういうこともありえたと認められれば補償の対象になりうる」

東山紀之社長は、日本テレビの取材に対し、「被害者の方の心のケアや誹謗(ひぼう)中傷の問題など、金銭での補償をさせていただいた方の中にも、継続してサポートが必要な方もいらっしゃいます。このような問題ともしっかりと向き合い、今後も誠心誠意、補償業務に取り組んでまいります」と書面で回答を寄せました。

山崎誠キャスター
「『SMILE-UP.』は被害補償の窓口として、外部の専門家による被害者救済委員会を設置しています」

「ことし4月30日の時点でジャニー喜多川元社長からの性被害を訴えた人は全部で985人です。このうち、救済委員会によるヒアリングが終わった454人に補償金額を通知したということです。この454人のうち、399人が金額に合意し、374人に支払いが完了したといいます」

「また、985人のうちおよそ200人はヒアリング中で、およそ200人は申告があったもののその後連絡がとれなくなっているということです。93人は在籍と被害が確認できず、補償の対象外になったと連絡したとしています」

「『SMILE-UP.』への取材で、これまでに100人ほどが東山社長との対話を希望し面会したということも新たにわかりました」

山崎キャスター
「現在も1日ひとり程度、被害の申告者がいるということですが、今回の取材で、被害者への補償について『数か月以内』に一通りの支払いを終えるとの見通しが示されました」

「ただ、『SMILE-UP.』は全ての被害者に対し最後まで補償を行う方針で、山田CCOは『会社を清算した後も被害を訴える人がアクセスできるようにしたい』と話していました」

鈴江奈々キャスター
「橋田さんも、去年12月に補償金額に合意されていますが、今回の取材で被害者への補償について『数か月以内』に一通りの支払いを終えるとの見通しが示されました。これをどう受けとめていますか」

元ジャニーズJr. 橋田康さん
「率直に、本当に終わるのかという部分と、取り残されている人たちがいっぱい生まれちゃうんじゃないかという不安があったんですけれども、『会社を清算した後も被害を訴える人がアクセスできるようにしたい』という意向をもってくださっているのはすごく安心につながりました。その気持ちのまま続けてくださったらうれしいなと思いました」

鈴江キャスター
「補償の支払いが終わったら全て終了ではなく、引き続き窓口として向き合ってもらいたいということですね」

元ジャニーズJr. 橋田康さん
「申請することが大丈夫だよ、ということをきちんと伝わるような形で言い続けてくれたらうれしいと思います。顔出ししているかは関係なく、申請して個人情報が漏れるという報道はないですし、僕も安心はしているんですけれど、そういうことの不安がつのって申請できない人もたくさんいると思います。大丈夫、安全だよ、ということを発信し続けてくださればいいのかなと思います」

鈴江キャスター
「およそ100人の方が東山社長との対話を希望し実際に面会したということです。実際に橋田さんも、ジュリー氏や、東山社長と面会したということですが、面会してどのようなことを感じましたか?」

元ジャニーズJr. 橋田康さん
「僕自身、激動のタイミングでお会いした形で、僕から『会いたい』といって会った状況ではなかったのですが、目を見て話したことで少し腑に落ちた部分もあります」

「実際に東山さんに『変わるきっかけをくれてありがとう』といわれたことは、僕にとってはすごく救いになった。救いになった人たちが100人いらっしゃると、とらえていいのであれば、うれしいなと」

鈴江キャスター
「一方で、被害者の中には『面談の対応が取り調べのような雰囲気だった』との声もあります。こういった被害者からの声について、『SMILE-UP.』側はどう考えているのでしょうか」

日本テレビ報道局 下川美奈 社会部長
「こうした被害者の声があるということは認識していました。その対策の一つとして、求められれば、救済委員会との面談にメンタルケアの専門家を同席させる、とは言っていました」

「また、補償額の算出基準を明らかにしない理由として、VTRにあったように額によって被害が推測されてしまうというプライバシーの問題のほか、細かい算出方法が公になってしまうと、虚偽の申告が増えるという懸念も持っているようでした」

鈴江キャスター
「橋田さんはこの問題について発信を続けられる中で、誹謗中傷も受けてこられたとうかがっています。いまも続いているのでしょうか?」

元ジャニーズJr. 橋田康さん
「そうですね。実際に僕のもとには、かなりきつい言葉が投げられている状態ですので、たぶん僕のみならず、今回のこの件に関わった人たち、被害者の方たちは、たくさんこういう思いをしているのではないかと今でも思います」

「『SMILE-UP.』に誹謗中傷を止める、被害者を守るという形を取ってほしかったなっていうのは、すごく心から思います。実際、去年の末頃に僕自身、誹謗中傷に対し、何か動いてくれないかと『SMILE-UP.』の役員に、弁護士同席のもと相談させていただいたことがありました」

「その時に、前向きに検討していただいて、耳を傾けて聞いて下さったのですが、今となっては、行動が形にして残っているわけではないし、何か誹謗中傷を止める行動は僕の目からは見えていないので、引き続き何か行動をとってくださるのであれば、一刻も早くとってほしいなと思います」