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“ジャニーズだけじゃない”当事者が伝えたい性被害 ~前編~

2023年12月28日 8:30
“ジャニーズだけじゃない”当事者が伝えたい性被害 ~前編~
トークイベント主催者の安西さん(左)、つじさん(右)

■性被害を受けた当事者が伝えたい思い

11月下旬、東京都内で性被害の当事者たちが被害体験や、その後の人生について語るイベントが行われた。

主催者の安西真実さん(40代男性)は20年以上前から男性の性被害について、当事者として発信してきた。ジャニーズ性加害問題をきっかけに、社会に知られるようになった“男性の性被害”。

これまで、なかなか報じてもらえなかったが、今年は変化に驚いたという。“ジャニーズだけではない”性被害の実態や、その後のトラウマを抱えた人生について伝えるため、このトークイベントを企画した。性暴力被害ワンストップ支援センターの専門相談員なども務める、つじゆうさくさんとともに自身の経験を語った。

■ジャニーズがきっかけで男性の性被害への認知広まった?

ジャニーズ性加害問題をきっかけに、かつてないほどに男性の性被害が注目されたのでは?と話す安西さん。20年以上前から男性の性被害について声を上げていたが、世間に認知されている実感はなかった。芸能人だから、という理由で大きな社会現象になったのでは?と、モヤモヤした思いを抱えることがあったという。

もう一人の当事者つじさんも、これまで細々と発信しても一般的な広がりはなかったとし、今年は男性の性被害問題について「パラダイムシフトが起きた」とし、世間の認識も変わったのではないかと話した。

■知られること=「サポート体制ができる大きなチャンス」

芸能人・有名人だから注目されたのか? そうでなければ社会現象とならなかったのか? つじさん自身、性暴力被害者の支援をしてきた経験もあり、芸能界だけでなく、スポーツや文化の世界、企業などでも同様の体質(弱い立場の人につけこんだ性被害)があるのではと問いかけた。

そして、被害があったと声を上げられないのは、男性だけではないとして、メディアに対し「男性だけでなく、女性の声も置き去りにしてはいけない」と訴えた。男性、女性や子どもなど、全ての性被害について社会が考えることは、国などによる「サポート体制ができる大きなチャンス」につながると期待を込める。

■小学1年生で始まったいじめ…きっかけは“担任教師の発言”

今回のイベントを主催した安西さんは、小学生の頃から高校時代まで、いじめや性被害を受けていた。その凄絶(せいぜつ)な半生をイベントで語った。

小学1年生の頃、担任の女性教師の発言がきっかけで、いじめが始まったという。給食を食べることが遅いなどが理由だったといい、同級生から“給食を全て口に押し込まれる”といったいじめを受けた。

“こいつはいじめてもいいんだ”という空気が出来上がり、担任がいない場でもクラスメートから殴る蹴るの暴行を受けるようになり、いじめは担任が代わった後も続いたという。

高学年になると性的ないじめへとエスカレート。ズボンやパンツなどを脱がされ裸にされ、四つんばいの馬のような体勢で、同級生が上に乗り、「歩けよ」と言われたという。

中学校へ進学すると、昆虫やゴキブリなどを食べさせられたり、便器に顔を入れられたりするなど悪質ないじめが続いた。そして、空き教室で大人数に囲まれた状態で自慰行為を強要された。その後も殴る・蹴るなどリンチを受けながら、自慰行為を強要された。

いじめの加害者には男子も女子もいて、先輩も加わるようになっていった。

■男子の先輩からの性加害“一番の地獄だった”

ある日、いじめの加害者だった一人の男性の先輩に部室に呼び出された安西さんは、そこでレイプ被害を受けた。「かわいいな」「タイプだよ」など声をかけられ、当時は訳がわからない状態で、されるがまま、ひたすら耐えたという。

先輩は行為後に「言ったって誰も信じない」と発言。これまでのいじめの経験から、自己肯定感が極端に低いと話す安西さんは、当時を振り返り、恐怖心はあるものの「自分は、こういう人生なんだろうと、どこか諦めのようなものがあった」と話す。

その後も、先輩の気分次第で呼び出しは続き、何度も性被害を受けた。「ずっと地獄だったけど、特につらく、一番の地獄だった」という中学1年生の頃の性被害は、その先輩が卒業するまで続いた。先輩の卒業後、レイプ被害はなくなったものの、自慰行為の強要やいじめは中学・高校時代を通じて続いていたという。

■“性暴力被害だったんだ”との気づきは21歳

学生の頃の安西さんは、性に関する知識があまりなく、自身がいじめの被害者だという認識はあったものの、小・中・高で受けてきたことに対して自分でもピンとこない状態だったという。被害を受ける年齢によって、自分に起きていることが“性被害”だと理解できない場合もあり、何なのか理解できないまま、心身に不調が出て専門的な治療を受ける例もあるという。

安西さんは21歳になり、様々な人が生きにくさなどを話す場で、自身の“いじめ被害”について話した。すると、参加していた女性から「それって性暴力被害だよね」と指摘を受けたという。モヤモヤしていた気持ちが一変し、「そうだ」と納得。小・中・高と受けてきたのは“性暴力”だとようやく認識できたという。

■恋愛ができないという確信がある

長期的ないじめや性暴力を受けてきた安西さん。イベントでは自身の恋愛に関する思いも明かした。

安西さんは20代以降、女性を好きになり、信頼関係を築いたとしても、女性への恐怖やおびえなどもあり、性的な行動には至らず、進展はなかった。その根本には“性暴力を受けてきたこんな僕なんかと…”といった気持ちがあるとして、自身を「恋愛回避型」になってしまったと話す。

“どうやって生きるか、もがいて、もがいて生きてきた”と話す安西さん。人と向き合い、被害とも向き合ってアグレッシブに行動してきたと自負しているが、「恋愛は重要で、したいけれど、できないという確信がある」という。40代になり、何のために生きてきたんだろうと思うこともあると話す。

性被害はその時だけの恐怖、苦しみだけではない。その後の人生の歩み方、考えにも大きく影響を与える。後編では、16歳で性被害を受けた、つじさんの体験、暗転したというその後の人生、性犯罪をめぐる課題を伝える。