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SOSを社会がずっと見過ごしてきた…加害者・被害者・傍観者をなくすには?【こども・若者の性被害をなくそう】

2023年8月10日 19:00
SOSを社会がずっと見過ごしてきた…加害者・被害者・傍観者をなくすには?【こども・若者の性被害をなくそう】
こどもの性被害を防ぐためには何が必要か?小学生や未就学児を対象にプライベートゾーンについてわかりやすく解説する絵本を監修するなど、長年、性暴力被害者の支援に取り組んできた群馬県警の小笠原和美本部長は、これまで、声にならないSOSを社会がずっと見過ごしてきたと指摘する。その上で、こども自身を被害者にも加害者にも傍観者にもさせない予防教育が必要と訴える。

■被害者は悪くないというスタンスをもって

以前からあった問題に、ようやく国レベルで課題解決の動きが出てきたというのはすごくいいことだと思います。ただその動きをつくるために、被害に遭った人がつらい思いをしたことについて声をあげざるを得なかった、その声に応えるプロセスがもっと早く起きていたらよかったなというふうにも思います。性暴力に関しては元々様々な偏見があって、その一つがやっぱり被害に遭うのは女性だけという偏見。これはやはり男の子、男性の被害の訴えづらさにもつながったと思いますし、あともう一つ大きいのは、被害にあった側にも非があったんじゃないか、被害者が何とかすれば被害を避けられたんじゃないか、逃げられたんじゃないかという声が、被害者の声をあげさせづらくしてきたという、そうした誤解や偏見というのも課題だと思います。

(被害者への誹謗中傷について)
スタンスをきちんと持っていただきたいと思うのは、被害に遭った側が悪いわけではないということ。被害に遭ってしまったときに抵抗できなかったり、助けを求められなかったりするというのは、被害に遭った人に起こる当然の反応です。恐怖で体が動かないとか、あるいはもし抵抗したらどんな不利益が生じるかと思ったら抵抗することができないということは、被害者の側に当然起こる心理的な反応ですので、例えば何を今更とか、それは本当のことじゃないんじゃないかとか、そうした誹謗中傷を見聞きした側も真に受けるべきではないと思います。それは被害者をさらに傷つける、二次被害・セカンドレイプにあたることだと思うので、それは公器であるマスメディア、報道機関の方々にも、しっかりスタンスとして持っていっていただきたいと思います。

■こどもを被害者にも加害者にも傍観者にもさせない

私自身はもうずいぶん前になりますけど、2008年、平成20年ごろに、海外の取り組みを知ったことがきっかけで、日本の性犯罪対策が遅れていると気がつきました。最初は被害者支援の仕組みがちゃんとないということが遅れとしての印象だったのですが、被害者の方、特に性的虐待の被害に遭われた方との出会いから、もっともっと声に出せていない、声にならないSOSがあって、社会がそれをずっと見過ごしてきた、そういうことがあったのだということを知ってから、何とか傷つく前にそれを止められないかということを考えるようになって、それから性暴力含めたこどもへの暴力を予防する、こども自身がそれを嫌だと言える力をつけるための教育がとても大事だと思うようになりました。

というのもこどもたちに「それは嫌だと言っていいことなんだよ」というのをあらかじめ伝えておかないと、被害が長引いてしまうんですね。こどもは「大人の言うことは聞きなさい」なんて教えられていると、「内緒だよ、誰にも言っちゃいけないよ」って言われたら、嫌な秘密、怖い秘密でも守らなきゃいけないと思って守ってしまいます。そうするとSOSが出せないということが起こると思います。被害を受けると、その後の人生がとても傷つきやすくなり、その子の生き方にとても難しい部分を生じさせてしまうということがあるので、ぜひそうした目に遭うこどもが一人でも減るように、予防教育が広まっていったらいいなと思っています。

そして、この予防教育においては、こどもを被害者にも加害者にも傍観者にもさせないという視点が必要です。アクティブ・バイスタンダー(行動する傍観者)といって、さまざまな暴力が起きたときに、その場に居合わせた第三者で、被害を軽減するために状況に応じて行動をできる人のことを指すのですが、いきなり直接介入することは難しくても、以下に示す行動のうち、何かひとつでも行動を起こせる人が増えていけば、暴力の発生を抑止することにもつながります。

【アクティブ・バイスタンダーができる5つの介入方法】
●注意をそらす:関係のない話をして加害者の邪魔などをする
●第三者に助けを求める:近くにいる大人や先生などの介入を求める
●証拠を残す:写真や音声で状況の記録をする。※証拠の利用にあたっては被害者に許可を得るなど取り扱いに注意が必要
●後で対応する:被害後に声掛けなどのフォロー・サポートを申し出る
●直接介入する:「それは暴力です」と直接注意する  ※いずれも自分自身の安全が確保できているかを確認しながら行うこと(危険を伴う場合あり)

国には予防教育を小学校に入る前から提供できるように、また、それが仕組みとして定着できるようにしていただきたいと思います。学校カリキュラムの大枠を決める学習指導要領は、概ね10年に一度改定されますが、例えばこどもへの暴力の防止教育プログラム「CAP:Child Assault Prevention」は性暴力だけでなく、いじめや連れ去りなど、様々なこども向けの暴力に対応できるプログラムになっているので、これを次回の改訂で、ぜひ公教育の中に位置づけていただけたらなと思います。

あともう一つ言わせていただくと、発見する目を持てる大人も増やしてほしいですね。特にこどもと接する時間が長い学校の先生、あるいは学童保育、保育園・幼稚園の先生、ベビーシッターとか、そうしたこどもに接する人に関しては、まずはもちろん暴力は振るわないということは当然なのですが、もし暴力を受けている、被害を受けているこどもがいたときに、その言葉にならないSOSを敏感にキャッチできるような、そういう気づきの目を持っていただきたい。あるいはお医者さんなどもそうですね。歯医者、小児科とか外科とか、あらゆるところでこどもの被害を発見できる機会はあると思うので、例えば医療者とか看護師の教育の中で、虐待を発見できる目を持てるようなカリキュラムが養成段階で入っていったらいいなというのは、すごく感じます。