×

ジャニーズ問題、国連の会見に当事者は?……「やったぞ」「大きな一歩」喜びも、心のケア「何もない」 問われる“黙殺”社会

2023年8月5日 12:00
ジャニーズ問題、国連の会見に当事者は?……「やったぞ」「大きな一歩」喜びも、心のケア「何もない」 問われる“黙殺”社会

ジャニーズ事務所の性加害問題を巡り、国連人権理事会の専門家が4日、記者会見を開きました。「当事者の会」の7人は大きな手応えを感じた一方で、メンタルケアの不十分さなどを訴えました。性暴力や虐待をなくす上で、日本の社会が今問われています。

■肩をたたき、涙を浮かべる当事者たち

4日行われた、国連人権理事会の専門家による記者会見。その様子を、別室で「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の7人が見守っていました。

午後4時すぎ。副代表の石丸志門さんが、代表の平本淳也さんの肩を何度もたたきました。「やったぞ、やったぞ」。両手で顔を押さえる平本さんの肩に、手を添える石丸さん。「ここからだ」と噛みしめるように声をかけました。平本さんの目から、涙があふれます。

タオルで涙をぬぐい、口元を覆いながら、平本さんは語りました。

「励まし合いながら、重圧もある中で、毎日ギリギリで生きていく中で、今僕たちに最も必要なメッセージがこの会見、今日、今聞けたことによって…。満足してはいません。これからなんで。ただ大きな一歩、とてつもない大きな一歩」

■国連の会見で「大きな動きが見えた」

この直後、日本記者クラブで会見を開いた7人は改めて、国連人権理事会の専門家の発言について印象を語りました。

平本淳也さん
「真摯(しんし)に受け止めてくれたこと、僕たちに勇気をくれたという印象で今、受け取って。メンバー(は)、それをうれしさ、勇気という形で共有していることと思います」

二本樹顕理さん
「活動を始めた時は本当に、一個人の声が一体届くのだろうか、この活動がどこに向かっていくのか、非常に不安な部分もあったんですけれども、本当に今日の国連の会見をもってして、大きな動きが見えた」

「一個人の声でも、集まって集約すれば大きなものになっていくと目の当たりにした次第です」

■事務所「メンタルケア」の実態は?

約2時間の会見の中では、「国連の会見で『ジャニーズ事務所による被害者へのメンタルケアが不十分』とありました。具体的に何が不十分なのか」と質問が上がりました。

これに対して代表の平本さんは「(メンタルケアについては)全く何もないので、どこをどう評価していいのか、どこをどう答えればいいのかさえ分かりません」と困惑しつつ、自身の経験を明かしました。

「心のケア(のメールを相談窓口に)送ったんですよ。(すると)返ってきた返事が『ご希望でしたらカウンセラーをご紹介します。質問とメッセージについては1週間以内にお返事いたします』ということでしたが、2か月たってもまだ返事は来ません」

「ケアされるどころか、ものすごいけなされているみたいな」メンタルケアは全くされていない、と訴えました。

■石丸副代表は「報じれば変わる」

メディアの責任については、副代表の石丸さんがマイクを握りました。

「メディアの方々、これはメディアというくくりではなく、日本のエンタメ業界の一翼を担うメディアの方々に対して(です)。まずこのことを報じましょう」

「(国連が言っていたのは)包括的にエンターテインメントに関わる全ての企業に、責任を持った被害者救済を求めるということが、至上命題だったと思います。このことを皆さまが報じていただければ、それだけで変わると思っています」

■8月末ごろに「特別チーム」が提言

会見を受け、ジャニーズ事務所はコメントを発表。

「厳粛に受け止め、被害を申告されている方々と真摯に向き合い、丁寧に対話を続けさせて頂きたいと考えております。今後予定をしております記者会見にて、弊社の取り組みを誠心誠意ご説明させていただく所存でございます」としました。

また「再発防止特別チーム」が、8 月末ごろに提言を行う見込みであることを公表しました。

■専門家「意識構造を変える以外にない」

今回の問題について、職場環境に詳しい専門家に聞きました。

日本女子大学・大沢真知子名誉教授
「本当に問われているのは、その後どういう対応をして会社を変えていくのか。地位の上にある立場の人が下に対して、そういった力関係において、上の人たちの態度が今問われているのだと思いますね」

大沢名誉教授は性加害の問題点について、「日本全体として性被害に対して軽く考えているところがあると思います。被害者の声を黙殺してきた私たちの社会の意識構造を変えること以外に、性暴力をなくすことはできないと思います」と指摘しました。

日本の社会が問われています。会見した当事者の会のメンバーからも、声が上がりました。

中村一也さん
「未来ある若者世代の人権を守りたい。これはジャニーズ事務所だけの問題でなく、全ての性加害、児童虐待防止につながります。この問題が二度と黙殺されぬよう、会のメンバーと共に行動していきます」

(8月4日『news zero』より)