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「小児性愛は依存症の一種。誰でもなりうる」…医師が語る加害者治療【こども・若者の性被害をなくそう】

2023年8月1日 19:00
「小児性愛は依存症の一種。誰でもなりうる」…医師が語る加害者治療【こども・若者の性被害をなくそう】

こどもへの性暴力を防ぐため、精神科医の福井裕輝氏が設立した民間団体、性障害専門医療センター(SOMEC)は、こどもへの性暴力加害者500人以上を治療してきた。福井医師によると、こどもに性的行為をしたり、こどもに対して性的に興奮する空想を抱いたりする「小児性愛障害」は依存症の一種で、「人格が優れている」などとは関係なく、誰でもなりうるという。加害者治療の実態とは…福井医師に聞いた。

■犯罪行動を止める力を育てるトレーニング

こどもや大人への性暴力の加害者の治療には、カウンセリングの一種の認知行動療法と薬物療法(主としてホルモン療法)があります。

まず認知行動療法ですが、犯罪が起きるには、いろいろな要素が絡んでいて、人は、害になるような要素と(犯罪行動の)歯止めにできるような要素、いいところ、悪いところ、両方持っているんです。その悪い要素、つまりその個人が抱えている問題などをできるだけなくすようにして、自分で犯罪行動を止める力の方を育む。認知行動療法は筋トレのようなもので、余分な脂肪を取り除いて、筋肉を鍛えるようなことを1人の人に対して、トータルにやっていく治療です。

──例えば加害者本人も小さい時代に性被害を受けた可能性があるとか、何か強いストレスを抱えていて、それを取り除くということでしょうか

そうですね。例えば幼少期のトラウマ体験が現在の心理に影響を及ぼしている、とか職場でパワハラを受けている、過重労働を強いられている、そういったものが全部犯行の要因となるので、そういったものを取り除くように本人と心理士が考えながら変えていくという作業です。逆に歯止めになるものは、例えば被害者に対する「申し訳ない」という感情とか、本人が内面に持っているプラスの面で、それを強化していきます。

■治療には3~5年。治癒はなく、一生考え続ける必要がある

個別に治療した方が効率がいいと思われがちですが、グループ治療も有効です。他の人とディスカッションし、参考になる考えはうまく取り入れる。心理士が誘導しながら、うまく本人に適切な考え方などを身につけてもらうようにしていくのです。

──「絶対誰にも言えない」と何十年も黙ってきたけれど、同じような悩みを抱えている人には、話しやすいとか

そうですね。例えば加害者本人が抱える悩み、トラウマ、特に人に言えない事情みたいなものが様々な行動に影響を及ぼしているので、それを共有しあうことで、本人の気持ちの安定につながり、再犯防止にもつながります。

──認知行動療法による治療はどのくらいかかるのか?一回改善してもぶり返すことはあるのか?

ケースバイケースですが、患者には基本的に3年から5年ぐらいかかると伝えます。小児性愛障害はアルコールやギャンブルでみられるような「依存」と脳のメカニズムは同じです。「依存症」は治癒というのはなくて、一般的に「回復」「寛解」という状態にしかならない。常に再発、再犯の可能性があると考え、一生考え続けるといっても過言ではないです。

■薬を飲めば再犯は止まるが、あくまで補助的なもの

薬を使った治療は、簡単に言うと、男性ホルモンを抑制し、性欲を下げる薬を飲んでもらうもの。きちんと本人が薬を飲んでいる限り、性欲がなくなるので、再犯は確実に止まります。しかし、一生薬を飲み続けることは、我々のセンターでは想定していなくて。本人のリスクが上がった場合に補助的に使う位置づけです。つまり認知行動療法を受けてもらいながら、どうにも性的欲求をコントロールできそうもないという時に、一時的に薬を使い、収まったら、薬を減らすかやめる。それでまた認知行動療法だけで続けていって、最後は薬のない状態にするのが治療の終わりです。薬を飲むと、本人は3週間から1ヶ月ぐらいたたないと効果を実感しないが、血液検査などで調べると、1週間か2週間ぐらいで、確実に効果が出ているし、実際の行動の変化にも現れていると考えています。

■小児性愛の欲求とは

医学診断名としては「性嗜好障害」のうち、対象が子どもの場合を「小児性愛障害」といい、小児へのわいせつ行為とか強制性交への欲求を持ち、コントロールがきかない状態なので、広い意味での依存症の一種と考えてもらっていいです。なお性嗜好障害の中の分類としては、ほかに「窃視症」(盗撮、のぞき)「窃触症」(強制わいせつなど)などもあります。

──治療を続ければ改善する?

本人の考え方が変わらないとだめなんです。考え方を変えず、一生薬を飲めばいいとかではなくて、基本的に薬を使いながら、本人の考え方や感情を変えてもらって、自分自身の力でコントロールできるようになってもらうことが必要です。

──加害者たちは「いけないことだ、まずいな」とは思っているのでしょうか?

もちろん理屈としては自分のやっていることが犯罪行為だと理解しています。覚醒剤を使う人と同様、性加害をした人も、女性や子どもに対して、同意のない行為をすることは違法だとわかっているけれども、本人が行動をコントロールできない状態です。

加害者を刑務所にとりあえず入れて治療すればいいなどと言われるんですが、再犯リスクがある所で、治療しないと効果が出ない。例えば刑務所内ではなく、社会に出てきて、覚醒剤を使おうと思えば使える場面で、自分でコントロールできるようになるのが治療の目標。性犯罪も同じで、刑務所の中に女性や子どもがいるわけではない。そういう中で色々教えても、社会に出て来て、女性や子どもと接触した時に、そういう行動を実際にやろうとしてしまう。そういうリスクのある状況で本人のコントロール力を身につけてもらうことが必要です。

──社会の中で治療するには、周りの理解が必要です

加害者本人の問題だけに意識が集中しがちですが、その背景には例えば対人関係、仕事のストレスとか様々な要因があるので、周りにいる者が何らかのサポートをしないと、再犯を防ぐことは難しいでしょう。

また、特に小児性愛は、周りから見ていても兆候があると思うんですね。そういう動画を見ているとか、目線がこどもに向かっているとか。盗撮も犯罪になりえますけども、そういう関連の写真を撮ったといったことを周囲が気付いたならば、できるだけ早い対応を考えた方がいいと思います。

──こどもの性的なことを描いた漫画などを見て楽しむ人と本当に加害行動をしてしまう人は何か違いがあるのでしょうか

それは意外と難しい問題で、例えばギャンブルは禁止されていますが、パチンコとかは事実上認められていて、人々のストレス発散の役割を果たしているとも言われる。でも、一部の人がそこにはまるというか、関心が向きすぎるとギャンブル依存症や様々な問題を引き起こしてしまう。それと似ていて、ネットなどにあふれているアダルトな動画、画像なども広い意味では抑止力として働いているとも言われていて、ただ、実際にそれを行動に移す、犯罪を犯す者が一部にいる。かなり複雑なんですけども、見るだけでなく、行動してしまいそう、という自覚がある人は早めに治療を受けてもらうのが良いと思います。そういった兆候がある時、家族に叱責されると、本人は反発したり、隠したりすることにつながる。あくまで病気の症状なんだという見方に変えてもらえると、周囲の対応の仕方も変わるのではないか。本人が悪い、極悪人、ではなくて、病気なのだから、それを治すようにする、と。

■学校や習い事などで先生など知り合いによる性被害を防ぐには

こどもへの性加害者について、自分とはまるで関係ない、接点がまったくない人たちだと思いがちですが、実際には、(小児性愛は)病気なので、周りにいる人が誰でもなりうるとの感覚を持つことが必要です。「あの先生は人格が優れているからそんなはずない」ではなくて、もしかしたら(加害行為が)あったかもしれないという観点で対処を考えることが大事。あとは、周りの視線があると、(性加害が)起きない場合でも、密室で二人きりになったら起きる可能性があるので、そういう場面とか環境を作らないよう配慮が必要。例えば、けがの治療でも、他の先生や誰かが隣にいるようにするなど、何らかのルールを決める。普通の感覚で考えて、正常とは言えないことはやっちゃいけないんだという自覚が必要ではないでしょうか。

■こどもの性被害への対策が日本で遅れたのは

色々な要因がありますけれども、一番大きい問題は、加害者がどういう人たちなのか実態がよく社会に知られていないことです。実態がわかると対応策へと発展していくんですけども、「加害者は自分たちとは無縁の人だ」、「何か事件が起きたら、刑務所に入れて、隔離しておけばいい」ととらえがち。でもそうではない、もっと身の回りにあふれている、しょっちゅう起きている出来事なんだという感覚を持っていくことが必要じゃないですかね。

──ジャニーズだからとか芸能界だからではなくて、私達の身の回りに起きうることだと認識する必要があると

そうです。性犯罪はどこでも誰にでも起きうること。それに対して社会としての取り組みは当然必要ですが、自分で自分の身を守るということも必要だし、家族もサポートするなど、全体的な取り組みで防いでいく必要がある。お子さんに対しては、性被害にあった場合「本当に苦しいけれども、あなたは悪くない。ちゃんとした大人にすぐに相談して」と伝えておくことなども必要だと思います。