「男児含むこどもの性被害に対応」こども政策担当相に単独インタビュー【こども・若者の性被害をなくそう】
ジャニーズ事務所に所属していたタレントらがジャニー喜多川前社長からの性被害を訴えている問題に関連し、政府は26日、関係府省会議でこどもや若者の性被害防止に向けた「緊急対策パッケージ」を取りまとめた。議長を務めた小倉将信こども政策担当大臣が日本テレビの単独インタビューに応じ、ジャニーズ問題への受け止めのほか、対策のポイントや狙いについて語った。
■あらゆる状況に置かれたこどもたちを守る
まずこどもや若者に対する性暴力は決してあってはならないことであります。しかしながら依然として多くの若者やこどもたちが性暴力や性被害にさらされているのは事実であります。実際に強制性交等罪などの認知件数、これを見ますと3年連続で増加傾向にありますし、今年の前半だけ見ても昨年の同時期を上回ってしまっております。こどもの性被害の特徴はですね、これに加えて潜在化しやすいことでありまして、当事者からお話を伺いますと、こどものときの性被害がそもそも性被害として認識をされていないということもうかがいましたし、仮に認識をできたとしても周りの大人に申告しづらい、こういったことをうかがってまいりました。他方で、一度こどものころに性被害を受けてしまうと、その後成長して大人になってからも長らくトラウマに苦しむこともうかがいました。そういったことを踏まえますと、あらゆる状況に置かれたこどもたちを性暴力や性被害から守っていけるような、そういう社会をつくっていく必要があるというのが我々の考え方であります。
これらを踏まえまして、合同会議において私をトップといたしまして有識者や自治体の皆さま方から集中的にヒアリングを行い、各省庁に改めてあらゆる課題を洗い出してもらって、それぞれの課題の解決に向けて施策を一気に前進をさせるような、「緊急対策パッケージ」を今回取りまとめることができました。具体的にポイントを申し上げますと、第1にですね、加害を防いでいくということであります。今回の国会で刑法の改正、これをしていただきました。これにより、性交同意年齢が引き上がると同時に、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させることなどを不同意性交等罪の構成要件の具体例として明確化をさせていただきました。こういったことに基づいて、雇用関係やあるいは師弟関係にある事犯への全国的な取り締まりの強化を警察にお願いし、第三者であっても、こうした件について通報しやすいような環境も整えていくこととしました。そして、こどもが長く過ごす場での性被害も防いでいかなければなりません。こういった観点から日本版DBSの導入の検討を加速化させると同時に、保育所等における虐待事案に対して、通報義務などを設けることを内容とする児童福祉法改正の検討も盛り込ませていただきました。
第2に相談・被害申告をしやすくすると同時に、被害者支援も強化をしていかなければいけないと考えております。まず中高生を対象に刑法改正について周知徹底をすると同時に、小学生にはプライベートゾーンについても周知徹底をさせていただきます。また、周りの大人たちに対する周知徹底ということで、実際に被害が発生した場合の対応について、子育て支援施設等を通じて保護者に対して周知をすると同時に、養護職員をはじめとする教職員に対する周知も徹底をさせていただきます。それと同時に「男性・男児のための性暴力被害者ホットライン」を新しく開設することを決めました。それに文化芸術分野における相談窓口を設置をさせていただきたいと思っておりますし、被害対応の専門家という意味では、被害を受けたときに、受診可能な医療機関のリストも整備させていただきたいと思っております。こうした包括的、網羅的な施策に加え、来月から2か月間、「緊急啓発期間」と位置づけ、強力に情報発信などを行わせていただきたい。
■被害にあっても相談を躊躇してしまう男性
Q.「男性・男児のための性暴力被害者ホットライン」の人員の質・量はどのように確保するのか?
「男性・男児の性暴力被害者ホットライン」開設の趣旨は、既存の相談窓口で受け付ける相談の大部分は女性や女児からであり、男性・男児の被害については知見が十分に蓄積されているとは言い難い状況にあります。また男性の被害に関する誤解などにより、被害にあっても相談を躊躇(ちゅうちょ)してしまうケースなども指摘されている。従いまして今般の緊急対策では、9月中を目途に「男性・男児のための性暴力被害者ホットライン」を新設することにしました。相談にあたり、男性・男児の被害者支援に必要な知識などを十分に有する専門人材の確保が重要になってきます。
また、一般に同性の相談員の方がより相談しやすいという話もうかがいました。他方で、すぐに対応できる人材は非常に限られております。従って、当面は既に男性相談の事業に携わっている公認心理師などの方々に研修を受けていただくことで、早急に人材の育成確保に取り組んでまいりたいと思っております。
■既存のSNS相談・24時間ダイヤル活用も
Q.こどもや若者にとって身近なSNSを通じた相談窓口の設置や夜間含めた24時間の相談体制確保は可能か?
A.はい、まず若い世代にとってはSNSの相談窓口の方が利用しやすい、匿名性というのも確保されますので、利用しやすいのも事実です。実際に合同会議のヒアリングで、三重県からLINEでの相談者数が増加しているという報告もいただきました。このため緊急対策におきましては、都道府県等が設置をしておりますワンストップ支援センターにおけるSNSの相談方法の導入支援、これを行うと同時に、内閣府が実施をしておりますSNS相談「Cure time(キュアタイム)」というものがありますけれども、このさらなる周知などを行って、SNSの相談を推進をしてまいりたいと思っております。24時間相談対応については、ワンストップ支援センターにつなぐことができる#8891 (はやくワンストップ)では、既に24時間相談することが可能となっております。しかし、まだ24時間対応できること自体知られてないということもあるので、これらの相談窓口についてこれまで以上に周知徹底を図っていきたい。
■「ジャニーズ事案の報道以降、性被害の関心高まったのは事実」
Q.文化芸術分野の相談窓口では、どんな人材がどのように対応に当たるのか?
A.ジャニーズ事務所の事案が報道されて以降、こどもや男性の性被害に関する社会的な関心が高まっていることは事実であります。こうした背景の中で、より一層対策の強化を求める声が高まっているというふうに私どもも受けとめております。今般の緊急対策におきましては、個別の事案について対応するものではありませんが、同時に合同会議のヒアリングにおきましては、有識者から、文化芸術分野におけるハラスメントの状況とか、その対策の必要性などについて指摘も頂戴しました。こうした指摘を踏まえまして、まず、雇用関係や師弟関係にある事犯への取り締まりの強化をお願いしますし、男性・男児のための性暴力被害者ホットラインの新設も行う。その上で、文化芸術分野における相談窓口の設置もパッケージとして組み込んだ。この文化芸術分野の相談窓口の対応者は、文化芸術分野に詳しい弁護士が契約やハラスメントを含むトラブル等に助言を行うこととしたい。なかんずく性被害への対応については、被害申告とか心理的支援など具体的な相談内容に応じて、警察やワンストップ支援センター等の関係機関を案内する仕組みを同時に構築をすることで対応させていただきたい。
■できるものから直ちに実行
Q.今回示された各対策の実施スケジュールは?
A.できるものから直ちに実行していきたいというふうに考えております。具体的には、まず刑法改正の趣旨、内容の周知とか、全国での取り締まりの強化は、既に先行して着手しております。またプライベートゾーンの周知は、8月中に実施をさせていただきたい。さらに、男性・男児のための性暴力被害者ホットラインは、9月中を目途に開設をする予定であります。また日本版DBSの導入とか、児童福祉法の改正は、それぞれ可能な限り早期の法案の国会提出を目指してまいりたい。引き続き、このこども・若者の性被害に関する的確な実態把握を続け、新たに必要な施策があれば、果断に実行してまいりたい。