脳卒中リスクが低下?クルミのチカラに注目
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。24日は「クルミのチカラ」について、諏訪中央病院名誉院長・鎌田實氏が解説する。
【クルミには両方含まれている?】
人間の体の中で作ることができない、どうしても摂取する必要がある脂肪酸のことを「必須脂肪酸」といいます。必須脂肪酸の種類は大きく分けて「オメガ3系」と「オメガ6系」があります。
オメガ3系脂肪酸を含む食材は非常に限られていて、エゴマ油やアマニ油、魚にも多く含まれています。一方、オメガ6系脂肪酸を多く含むモノには、サラダ油、コーン油、ゴマ油などがあります。そして、クルミには「オメガ6系」も「オメガ3系」も多く含まれているんです。
ただ、今の日本人の食生活では「オメガ6系脂肪酸が過剰」と言われていて、「オメガ3系脂肪酸は不足しがち」と言われています。これは、魚を食べることが少なくなっていることが原因だと考えられています。
【積極的にとりたいオメガ3系脂肪酸】
クルミはナッツ類の中でも断トツでオメガ3系脂肪酸を多く含んでいます。ナッツ類100グラムに含まれるオメガ3系脂肪酸の量を比較しますと、マカダミアナッツは0.07グラム、落花生は0.1グラム、ピスタチオは0.21グラムですが、クルミには8.97グラム含まれています。
クルミにはオメガ6系脂肪酸も多く含まれていますので、とりすぎには注意が必要ですが、これだけのオメガ3系脂肪酸が含まれているので貴重です。
【血管などに影響?】
実はオメガ3系脂肪酸が不足すると、血管などに影響が出てきてしまうんです。
慶応義塾大学医学部・井上浩義教授によりますと、「オメガ3系脂肪酸が不足すると血管がしなやかさを失うため、かたくなり、破れやすくなる」といいます。逆に、オメガ3系脂肪酸をとれば、血液の流れをよくする「動脈硬化予防」が期待できます。
【スペインでの大規模研究】
スペインではオメガ3系脂肪酸を多く含むクルミや魚が「脳卒中などへのリスクを下げる効果がある」という研究結果もあります。
スペインで55歳~80歳の7447人に平均4.8年間行われた大規模な研究結果があります。クルミを中心とするナッツ類を加えた「地中海食」と言われる魚や野菜中心の食事を週に3日以上とったグループと、油や脂肪分を抑えた食事を毎日とった「低脂肪食」のグループに分けました。
低脂肪食のグループのうち、脳卒中にかかった人を「1」とすると、クルミと魚・野菜中心のグループは「0.54」となっていて、脳卒中になった人が46%少ないことがわかりました。
また、心筋梗塞においてもクルミと地中海食のグループは0.74となっていて、心筋梗塞になった人が26%少ないという結果が出ています。
これは、あくまで研究結果の一つですが、この結果を見るとクルミや魚などに含まれるオメガ3系脂肪酸が脳卒中や心疾患に効果があると考えられます。
【鎌田氏オススメ オメガ3系脂肪酸が一気にとれるメニュー】
オメガ3系脂肪酸が一気にとれるメニュー、それはサーモンを使ったサラダです。レタス、タマネギ、パプリカなどの野菜に、粗く砕いたクルミ、サーモンをのせ、ドレッシングはエゴマ油にレモンの絞り汁、塩コショウを混ぜ合わせています。
サーモンには、DHA、EPAといったオメガ3系脂肪酸の一種が含まれていますし、クルミやエゴマ油にもオメガ3系脂肪酸が豊富ですので、このサラダだけで一気に多くのオメガ3系脂肪酸をとることができます。
【過ぎたるはなお及ばざるがごとし】
クルミや魚、エゴマ油は血管や血液に効果が期待できるオメガ3系脂肪酸を含む大切な食材です。
ただ、オメガ3系脂肪酸も油ですので、とりすぎには注意が必要です。オメガ6系のサラダ油などを少し減らしながら、クルミなどオメガ3系脂肪酸をとることが大切です。