隈氏「人間に優しい建築…そのためには木」
2つの案で争われていた新国立競技場の建設について、政府は22日午前、建築家・隈研吾氏のデザインで大成建設らが提案した「A案」を採用することを決めた。デザインをした建築家の隈研吾さんに話を聞いた。
■Q:決まった瞬間の思いは?
隈研吾さん「いままでの緊張から解放されてほっとしました」
■Q:白紙撤回から間もないが、プランを練るのに時間は十分だった?
「この規模の建物のコンペにしては、すごく少なかったです。それだけ集中してやりました。僕の事務所も新国立のそばにありますので、この場所の雰囲気というのはよく分かっていますので、イメージはわりとはやく浮かびました」
■Q:近代的なスタジアムでありながら木材の使い方も印象的ですね。
「木材の使い方は、まず外から見るときは、お寺の軒(のき)、屋根の下の部分ありますよね、ああいうかたちで、人間に近い距離で見えるように工夫したんですね。それからスタジアムの中に入っても、木に囲まれたような空間で競技が見られるというのが、我々の案のウリでして、たぶん、こんなに温かい安らぎのある空間で競技が見られるスタジアムは、そんなに世界にはないんじゃないかと思います」
■Q:木をデザインの中でふんだんに使うそのコンセプトとは?
「やはり、20世紀の建築、コンクリート、鉄ばかりで出来て、どうも冷たくて重い感じがしていたので、これからはもっと人間に優しい建築をつくりたいなってずっと思ってきて、そのためには木っていうのはですね、一番効果がある材料なんですね」
■Q:隈さんが建築を目指されたきっかけは東京五輪にさかのぼると聞いたが?
「実は、それ(東京五輪)までは獣医になりたかったんですけど。でも、東京オリンピックの代々木体育館、丹下健三先生のデザインしたものを、父親に連れて行ってもらって、『すっごいなあ、こんなに人間を感動させられる空間が出来るんだ』ってことで、それから建築家に志望を変えました」
■Q:2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムを手がけることになると想像していた?
「いやあ、それはもう、本当に夢みたいな話です」
■Q:競技場と観客席が近いのも印象的ですね。
「やはり近さってすごく大事だと思って。近くでスポーツ見たいって、僕もいつも思っているので、それを頭に置いて、断面の計画を設計しました」
■Q:木材には「杉」を使う?
「杉の部分が多いんですけれども、屋根の部分には一部唐松(からまつ)を使っています。どちらも国産材を使うっていうのがとても大事なことで、やはり日本の木のよさを世界にアピールするようなものにしたいなと思っています」
■Q:この杉はどこから持って来たい、というような構想も?
「日本の杉はいろんないい産地があるので、これからいい杉選びをしたいと思います」
■Q:スポーツ観戦しながら、木の香りを感じることもできる?
「ええ。木のよさというのは、見た目で優しい、温かいというだけではなくて、木の香りなんですね。ですので、ここに来た方はスポーツと木の香りを同時に味わえるということになると思います」
■Q:ここから工期が延びたり、工事費がさらにかさむということは?
「工期・工費のちゃんとした約束をするというのが、今回のコンペの一番重要なところでしたので、そういうことはありません」
新国立競技場は来年12月に工事が始まり、工期は3年を予定している。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアム、そのデザイン案A案が採用された隈研吾さんに話を聞いた。