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液状化被害の浦安 全国初の地盤工事に着手

2016年1月3日 23:36

 東日本大震災からまもなく5年。深刻な液状化が起きた千葉県浦安市は、今年春をメドに住民の合意が得られた一部の地域で、コンクリートの壁を地中に埋め込む初めての地盤工事に着手する。

 面積の4分の3が埋め立て地の浦安市では、5年前の震災で市内の8割以上が液状化し、8700棟に上る住宅が傾くなどの被害を受けた。市街地の一部では今もなお、ゆがんだままの道路やガードレールなどが残り、復旧工事が進んでいない。

 一方で、二度と同じ規模の被害が生まれないよう、液状化を防ぐ具体的な対策も急務となっている。浦安市は、既存の市街地の地盤を強化する事に乗りだし、そこで採用したのが「格子状地中壁工法」だった。

 この工法は住宅地を十数軒から数百軒ごとに区画した上で、宅地と宅地の境などに格子状にコンクリートの壁を埋め込むことで、地域全体の地盤を強化しようというものだ。これには原則として全ての住民の「合意」が必要で、実現への高いハードルとなってきた。

 合意が難しい理由は住民にかかる負担だ。市によると、多くの地区では1軒あたり100万円から200万円程度の負担を求められ、地盤が弱い一部の地区については420万円程度の負担が見込まれている。

 住民の中には、すでに自費で改良工事を済ませた人もいれば、「そんなに高額を負担してまで必要とは思わない」という人もいて、工事の実施が難航していた。

 そんな中、浦安市は去年11月、「弁天2丁目」の一部地域で地盤工事への合意が完了したと発表した。合意したのは約9800平方メートルの範囲にある45世帯の住宅で、今年春をメドに着工できる見通しとなった。

 既存の住宅地にコンクリートの壁を埋め込む大がかりな地盤工事は、全国でも初めての試みだ。浦安市はこれを弾みとして、液状化被害が特に大きかった地域を中心に地盤工事を進めていきたい考え。

 しかし、合意形成について住民からは「近隣の大多数が賛成した場合、反対とは言いづらくなる」などと懸念する声も出ている。住民を守るはずの液状化対策が住民間での新たな対立を生むことがないよう、浦安市には引き続き、丁寧な説明を続ける努力が求められる。