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新型コロナ“国産ワクチン”…誕生はいつ?生き残り戦略と開発の現在地は

2022年4月22日 20:54
新型コロナ“国産ワクチン”…誕生はいつ?生き残り戦略と開発の現在地は

今週、国内で4種類目となる新型コロナワクチンとして、ノババックス製が承認された。国内の工場で製造されるワクチンになるが、これまで、イチから日本製として開発・製造される“国産ワクチン”は、いまだ誕生していない。海外製に大きく遅れを取った国産ワクチンはどう生き残るのか、取材した。

■「安定供給のために」国内製造のワクチンを承認

4月19日、国内で4種類目となる新型コロナワクチンとして、アメリカのバイオ医薬品メーカー「ノババックス」が開発したワクチンが薬事承認された。

このワクチンは、国内での供給を担う武田薬品工業が、山口県にある光工場で一から製造し販売する予定だ。これまで、国内で製造されていたのはアストラゼネカ製だけで、ファイザー製やモデルナ製は輸入に頼ってきたため、必要な供給量がすぐに確保できないこともあった。

後藤厚生労働大臣は「海外の輸出規制の可能性に備えて供給の安定性を確保するため」に重要だと強調した。

■差別化を目指すKMバイオロジクスの戦略

製造だけではなく、開発から日本企業が手がけている“国産ワクチン”の開発状況はどうか。

今週、都内で会見を開いたKMバイオロジクスは、今月にも、開発中の新型コロナワクチンの最終段階の臨床試験に入ると発表した。承認申請は、今年9月を目指すという。開発するのは、インフルエンザなどで日本人にも昔からなじみのあるタイプの「不活化ワクチン」だ。

先行するファイザー製やモデルナ製の「mRNAワクチン」とは別タイプのワクチンだが需要はあるのか。会見では、今後も新型コロナワクチンの接種が定期的に必要になる場合を想定して、ワクチンのあり方についてこう述べられた。

「mRNAワクチンは素晴らしいワクチン。でも、リスク&ベネフィットを考えると、重症化しない低年齢層に、副反応の大きいワクチンが必要なのか?という話になる」

KMバイオロジクスは、開発するワクチンの対象年齢を「40歳以下」に絞って承認申請を目指すという。

臨床試験で、高齢者の層では中和抗体の量が十分に上がらず40歳未満の層で有効性が確認されたことに加えて、すでにファイザー製やモデルナ製といった海外製ワクチンを打った人が多い高齢者よりも、あえて接種率の低い若年層を対象にする方が需要が見込めるとの狙いだ。

学生や働く世代の接種率が高齢者ほど伸びない背景を、高熱などの副反応が大きいことが要因だと考えてのことで、mRNAワクチンにアレルギーがある人に加えて、こうした強い副反応を懸念する人たちをターゲットに、不活化ワクチンの活路を見出しているのだ。

■国内初の5歳未満も対象の“小児用ワクチン”

KMバイオロジクスは、同時に新たに“小児用ワクチン”の開発も始め、今月から臨床試験に入ると明らかにした。

“小児用ワクチン”の臨床試験は、6か月以上18歳未満が対象で、開発に成功すれば、5歳未満の子どもを対象としたワクチンとしては、国内初となる。

不活化ワクチンは、これまで肺炎球菌ワクチンなどで赤ちゃんの接種に使われていたため、受け入れられやすいと見込んでいるということで、こちらは年内の承認申請を目指す。

■既存のmRNAワクチンを超えるのか?第一三共、塩野義は

ファイザー製などと同じ「mRNAワクチン」の開発を、国産としては初めて目指す第一三共は、現在、最終段階の臨床試験を続けている。

今年1月には、1・2回目にファイザー製かモデルナ製を接種した人を対象に、「交互接種」での有効性と安全性も確認しており、今後、「国産に切り替えたい」人も対象に狙い、年内の承認と実用化を目指す。

一方で、塩野義製薬は、ノババックス製と同じ「組み換えたんぱくワクチン」を開発している。

先月、塩野義製薬は、1・2回目にファイザー製を打った医療従事者を対象に、3回ともファイザー製を打った人と、3回目に塩野義製を打った「交互接種」の人とそれぞれ100人ずつを対象に行った臨床試験の中間報告をした。

中間解析の結果では、中和抗体の量など、主要な評価項目で、ファイザー製に劣らない効果が確認されたという。

特に、中和抗体の量では、接種後15日目で比較すると、3回ともファイザー製を打った群の方が塩野義製よりもやや多かったものの、29日目では、逆に塩野義製を打った群の方が、1.17倍の量となり、より長い期間、中和抗体を維持していることが確認されたという。

塩野義製薬は、承認申請の前に、事前にこうした臨床試験の中間データなどを随時、審査当局に提出し、早く承認されるよう目指している。

■「緊急承認制度」創設を今国会で審議

これまで、大規模な臨床試験のデータが出そろってから承認申請し、審査に時間がかかってきた日本のワクチン。新型コロナワクチンで、海外に大きく開発の遅れを取った反省から、承認制度のあり方も、変わろうとしている。

今国会で、創設が審議されている「緊急承認制度」では、パンデミックなどの緊急時に、安全性が確認され、大規模な臨床試験が完了する前の中間段階のデータで有効性が「推定」できれば、ワクチンや治療薬などの迅速な承認が可能となる。

改正案が可決・成立すれば、年内の“国産ワクチン”誕生もみえてくるが、KMバイオロジクスは、「制度を利用する」と明言している。

ある厚労省幹部は、「国がワクチンを買い取るという担保もあるし、国産メーカーには、ここまで遅れたからには、急いで新型コロナの流行に間に合わせよう、ではなく、副反応が少ないとか効果が高いなど質の高いワクチンを開発してもらい、その経験と実績を積むことで、次に別のウイルスが出現した際も、力を発揮してもらいたい」と話す。

国は先月、この先の新たなウイルスの出現によるパンデミックも見据え、「先進的研究開発戦略センター、SCARDA」を設置した。

新型コロナウイルスのような重点感染症のパンデミックが起きた際に、いち早く、安全で有効なワクチンを作るための国の“ワクチン開発の司令塔”と位置づけており、今後、新たにワクチン開発に関わる企業などを、約1500億円の研究費で支援していくという。

新型コロナウイルスとの戦いも3年目となったところで、ようやく国も動きだし、変わり始めたワクチン戦略。果たして、“国産ワクチン”の実用化はいかに。