働く女性を応援“配偶者手当”のミカタ
中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」1日のテーマは「働く女性を応援」。
■配偶者手当で“議論”
厚生労働省で先月29日、企業が配偶者のいる従業員に対して生計費を補うために支給する「配偶者手当」について議論が行われた。
この中で、「現在の配偶者手当は女性が働くことを阻む要因になっている」という指摘があり、この制度について今後、労使間で協議するよう要請することが決まった。安倍内閣にとって女性の活躍を進めようということだ。
2014年の厚生労働省の調査によると、仕事に就きたいと思っているけど、実際仕事に就いていない女性の数は約303万人に上っていて、こうした女性をいかに働く環境に取り込むかが課題になっている。
■女性の就業×配偶者手当の関係性
配偶者手当というのは、企業ごとの労使交渉を通じて合意されるものだが、人事院の調査によると、民間企業の中で配偶者手当を支給しているのは、2015年で全体の7割ほどに上っていて、多くの企業が制度化している。
1950年代半ば以降の高度経済成長期に定着したが、当時は「仕事をするのは夫」で「妻は家事・育児に専念する」といった夫婦の役割が一般的だったので、特に違和感なく受け入れられていた。
しかし、時代が変わり、女性の社会進出が進むようになると、「配偶者手当が女性の働く意欲の妨げとなっているのではないか」という疑問の声が出てきた。
■配偶者手当の問題点
配偶者手当の一番の問題は、配偶者手当に配偶者の収入による制限を設定している会社が多いという点にある。中でも上限額を103万円以下と制限している企業が多い。
例えば配偶者の賃金が100万円であれば、所得も100万円となる。仮に、夫の会社の配偶者手当が年間18万円のケースだと、配偶者のもらえる賃金が103万円以内であれば、常に18万円が上乗せされた状態で右肩上がりになっていく。
しかし、103万円を超えると、18万円分の手当がなくなるため、同じ水準の所得を得るためには121万円の賃金が得られるまで働かなくてはならない。
■納得できる仕組みづくり
配偶者手当をやめるということは、それを補うだけの合理的な制度が用意されるのかどうかが一番のポイントになる。
人にはそれぞれの生き方がある。働きたい女性をサポートすることも大事だが、世の中には女性が働かないという選択をする人もいるし、働きたくても働けない事情のある人もいる。全ての人にとって納得できるような仕組みがどうあるべきかを議論することが求められる。
一番大事なのは、今回の制度改正を、賃金を引き下げるための道具に使わないということだ。