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「見えない障害」ヘルプマーク普及への課題

2016年5月23日 18:05
「見えない障害」ヘルプマーク普及への課題

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。23日のテーマは「見えない障害」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。


■ヘルプマークとは
 東京都が作った「ヘルプマーク」。主に「内臓の疾患がある」「義足や人工関節を使っている」など、見た目は健康でも実は援助や配慮を必要とする人がつけるためのマークだ。妊娠初期の女性も使うことができる。

 こういうマークがあると周りも気付くことができるため、困っている人に配慮しようという意識も高まってくる。


■困っている人はどんな人?
 実際にどんな人が困っているかというと、例えば「多発性硬化症」という難病がある。脳や脊髄など中枢神経の病気で、「手足がしびれる」「力が入らない」「疲れやすい」などの症状が出るが、平均発症年齢は30歳前後。一見、若くて健康に見えやすいという。


■気づいてもらえないつらさ
 実際、患者の声を聞くと、「健康そうに見えることから、症状があっても、電車で席を譲られたことは一度もない」「優先席に座ったら、『妊婦じゃないのに』とおなかを見られた」というように、電車やバスなどで周りに気づいてもらえないつらさがあるという。

 こういう人たちはヘルプマークがあると助かるだろうし、多発性硬化症の治療薬を作る製薬会社もヘルプマークの利用を推進している。

 また、こうした難病の他にも、心臓や肝臓、呼吸器などの“内部障害”を持つ人もいて、こうした人たちへのアンケートによれば、81%の人が電車やバスで困ったことがあり、そのうち最も多かったのが「優先席に座りづらい」という悩みだったという。

 そのため東京都は、都営地下鉄の各駅や都営バスの各営業所などで希望する人にヘルプマークを無料で配っていて、今年3月末までに約11万5000個が配られた。

 東京都福祉保健局によると、使っている人からは「外に出る勇気が出た」「マークを持っていると安心」といった声があり、配慮する側からも「困っている人に声をかけやすくなった」という意見があったという。

 ヘルプマークの普及をめぐっては、JリーグのFC東京が約3万人の観客が入ったスタジアムの大型ビジョンでPR動画を流すなど、企業などの協賛も広がっている。


■普及への課題
 ただ、全国への普及には課題もある。それは、自治体それぞれが既に作っている独自のマークがあるということだ。例えば山口は「サポートマーク」を去年、作ったばかり。中国地方の4つの県などに普及を呼びかけている。

 また、埼玉県などは「ハート・プラスマーク」を啓発している。これは内部障害や内臓疾患のある人に限っているが、10年以上の歴史がある。

 兵庫県は5年前に「譲りあい感謝マーク」を作り、独自に普及させている。こうしたマークがそれぞれ根付いていることもあって、ヘルプマークは東京都の他、京都府が今年導入し、今後は青森県、徳島県、札幌市が導入を予定しているにとどまっている。


■全国共通にできない?
 妊婦がつけるマタニティーマークのように、全国共通にできないのだろうか。内閣府に聞くと、「こうした配慮を求めるマークは、既にものすごい数があって、1つの省庁が統一のマークを作るということは、今のところない」という。


■思いやりのきっかけ
 ハート・プラスの会代表で、自身も心臓に病気を抱える白井伸夜さんは「ちょっとした下準備、知識を持ってもらうだけで、私は助かるんです」と話していた。

 日常生活ではなかなか想像力を持つことが難しかったり、余裕がなかったりするかもしれないが、こうしたマークの存在が思いやりのきっかけになるとよいだろう。