熊本の避難所にテント村 野口健氏が語る
熊本地震からまもなく1年。避難所で車中泊などを余儀なくされた被災者約600人を救ったテント村。呼びかけたのは登山家の野口健さん。「可能性を感じるんですよね、テント村に」という野口さん。テント村を通してみえてきた災害を生き延びる力とは?
■避難所にテント村
熊本地震では、50人が亡くなり、最大で避難者は18万3000人以上にのぼった。今なお仮設住宅で4万4000人以上の人が暮らしている。大きな揺れが続いたことから避難の仕方も課題となり、車中泊によるエコノミークラス症候群なども問題となった。
そんなとき、登山家の野口健さんらがテント村を作り話題となった。地震からまもなく1年の今だからこそみえてきたテント村の可能性について話を聞いた。
■テント村のメリットとデメリット
実際やってみてどうだったか聞くと
野口さん「車中泊かと思ったときに、パッとひらめいたのは、エベレストのベースキャンプ」「もう朝から24時間、車の中でじっとして体が痛いし」「テント村に入って横になれる、やっと横になれるってことで、テント前で涙を流してくれた方も多くてね」と話す。
しかし、テント村も良い点ばかりではなかった。メリットとしては「プライバシーがある程度保てる」「広さがある」「ペットと過ごせる」などがあったが、課題としては「暑さ」「雨による浸水」などがあげられた。
実際、野口さんらが作ったテント村も、震災から1か月半後の5月末で梅雨に入り、暑くなる時期だったことなどを理由に閉鎖された。野口さんはテント村は選択肢のひとつ。様々な選択肢があることが大事だと話す。
野口さん「最初から100点満点じゃなきゃダメなんだというと何も活動できなくなるんですよ」「今日より明日をもっと良くする。そのベターの積み重ねだった」
■“生き延びる力”を育てる
野口さんは地震から1年を前にもう一度立ち止まってあの経験を見つめ直すことが大切だと話す。
野口さん「震災の活動って、過去を振り返っているようでいて、これから先どうするかということ。だから当然、過去を振り返るんですけど、過去を振り返りながらもこれから先どうするということですよね」
野口さんは災害時にどうするか、定期的に家族で話し合うことや、防災グッズも買って終わりではなく、実際に使って体験しておくことが大切だと言っていた。
防災グッズに関して、野口さんによると簡易トイレなども実際に使うのは難しく、抵抗感もあるということで、慣れておくことが大事だという。また、ヘルメットにヘッドランプをつけると手が自由に使える。また、太陽光で発電するソーラーランタン、アーミーナイフなども役立つという。野口さんは、普段から生き延びる力を育てることが大事だと話す。
■苦しい時も楽しみを
野口さんは地震から4か月後の去年8月、テント村の子どもたちを富士登山に連れて行った。子どもたちの「富士山に登りたい」という声に応えたそうだ。
野口さん「みんなで行ける、行くというね。楽しみを持っているという目標があるとね、人間って頑張れるでしょ」
野口さんは、今後もテント村で一緒に過ごした子どもたちと年に1回、山登りを続けていくという事だ。
野口さんは災害に遭うというのはつらい体験だけれど、そんな中でも楽しみや目標を見つけ出し、日々を前向きに生きることが生き抜く力につながると話していた。