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健康への近道?期待の物質マイオカインとは

2017年11月9日 19:34
健康への近道?期待の物質マイオカインとは

 多くの現代人が抱える問題の一つが運動不足。運動不足はあらゆる生活習慣病の原因とも考えられている。そんな中、筋肉から分泌される、マイオカインという“ホルモン”が注目されている。 諏訪中央病院の鎌田實名誉院長が解説する。

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■筋肉から分泌される“ホルモン”の総称=マイオカイン

 首都大学東京・藤井宣晴教授「マイオカインが多くの病気を抑制してくれるんじゃないか、という期待を持って、私たちは研究を進めています」

 マイオカインというのは筋肉作動物質といって、筋肉から分泌される“ホルモン”の総称。マイオカインは20種類以上あるといわれていて、現在、世界中でそれぞれの働きについて盛んに研究が行われている。

 海外では、大腸がんを抑制するマイオカインや体内の糖分や脂肪分を効率的に消費するマイオカインがあると報告する論文も発表されている。

 筋肉を動かす運動自体が健康に良いというのは、当たり前のように言われている。しかし実際は、何がどう体に作用しているのかは、はっきりわかっていない部分が多い。そんな中、筋肉から分泌されるマイオカインを研究すれば、その理由がわかってくるのではないかと言われているのだ。

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 将来的にどんなことが可能になるのか、マイオカイン研究の第一人者、首都大学東京の藤井教授に聞いた。

 首都大学東京・藤井宣晴教授「運動の(健康)効果を生み出してくれるような薬をつくるということが大きな夢としてあげられると思います。運動の効果をもたらしてくれるマイオカインがあったら、そのマイオカインを使って薬にしてしまおうと。すると、飲むことによって健康を維持できる、あるいは病気から遠ざかっていられる。そういった薬になる可能性があるわけです」

 実際に、運動と同じような効果が得られる薬ができたらすごいことだが、藤井教授によると、マイオカインは、筋肉から常に分泌されているホルモンと、筋肉を動かすことで分泌されるホルモンの2つがあり、常に分泌されているホルモンの方が多いという。

 そして、分泌量については運動することで、筋肉の量を増やしたり、筋肉の質をよく保ったりすることで、分泌量が増加する可能性もあるということだった。

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■筋肉量の増加、良質な筋肉が健康への近道

 どの運動をどのくらいやればマイオカインの分泌が増加するかは研究段階だが、マイオカインはどの筋肉からでも分泌されるとみられている。

 ただ、一番、筋肉の量が多いのは太ももだという一方で年を重ねるにつれ衰えやすいのも足腰の筋肉。これらの筋肉を使う運動をして、筋肉の量を増やしたり、筋肉の質を良くすることが健康への近道だと考えられる。

 おすすめの運動は「ゆっくりスクワット」。足を肩幅より少し広めに広げ、息を吸いなら、椅子に座るような感じでおしりを突き出すように、ゆっくりと腰を落とす。ゆっくりゆっくり時間をかけて、太ももに圧がかかっているのを感じながらしゃがんでいく。次は、息を吐きながら、ゆっくりゆっくり時間をかけて立ち上がっていく。

 つらい人は、実際に椅子に座ったり、何かにつかまりながらでもかまわない。できる範囲でやる。これを1日15回、2セットくらいを目安に継続的に行うようにする。

 そして大事なのは、このスクワットのあと20分ほどウオーキングをすること。通勤や通学など出かける前や夕食の買い物に行くなどでも良い。

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 鎌田名誉院長は、このスクワットとウオーキングについて10年ほど前から講演会などで、「鎌田流のがんばらない筋肉トレーニング」といって紹介している。

 父親が糖尿病ということもあり、運動は欠かさないようにしてる。ちょっと太りだしたため、改めて去年からスクワットとウオーキングを続けた。その結果、1年ほどで7キロほど体重が落ちた。運動することで、代謝が良くなった。

 マイオカインと健康の関係性については、まだまだ解明されていないことが多いが、できる範囲で筋肉を動かして筋肉の量や質を保つことが健康への近道。