梅沢富美男さんと語る「がんばらない介護」
今月11日の介護の日を前に行われた、「がんばらない介護」をテーマにした諏訪中央病院の名誉院長、鎌田實さんの講演会。スペシャルゲストとして登場したのは俳優の梅沢富美男さんだった。
梅沢さん「母親が白血病で倒れて車いすになって、最後は認知症になって死んでいきましたけど…」
梅沢さんが経験した介護、そして、その経験から気づいたこととは?鎌田實さんが伝える。
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■梅沢富美男さん夫妻が経験した「介護」
「介護の日」にあわせた講演会は、毎年恒例となっているが、今年は震災の被災地支援の一環で福島で行った。今回、鎌田さんは福島出身で、震災以降、福島を中心に被災地支援を続けている梅沢富美男さんに参加をお願いした。コメンテーターやバラエティー番組にひっぱりだこにもかかわらず、妻の明子さんと共に協力してくれたという。
講演会で梅沢さん夫妻は、ご自身たちの介護の経験について、お話しされたという。梅沢さんは18年前に白血病で亡くなった母親の介護を妹さんとしていた。そして妻の明子さんは、脳出血で倒れ、半身不随となった父親の介護を7年ほどしていたという。
梅沢さん「池田明子という人間の中に、『池田明子A』、『池田明子B』がいたと思うんですね。Aというのは『がんばれよ、お父さんのことだから一生懸命やりな』という、Aの池田明子がいる中で、Bの池田明子は後ろからつつくんだと思う。『そんな一生懸命やったって、あんた1人でおかしくなるだけ、もう手ぬきな』って、後ろから押してるBとAの中に、本当の池田明子がいて、葛藤があると思うんですよ。うちの妹もそうだったんだと思います。葛藤しながら、上手に生きてきたから介護ができたのかな」
明子さん「いろんな自分を認めながら自分で受容しながらいくと、なんとなく時が過ぎていっていろんなことを解決していく、というような気がします」
■「がんばらない介護」の言葉に救われる
梅沢さん自身も母親の介護をする中で鎌田さんが伝えている、「がんばらない介護」という言葉に救われた、という。
梅沢さん「介護される方も、やはり身内だけに甘えも出る、時には怒りも出る、他人が介護してくれるんだったらどっかで『介護してもらっている』という気持ちがあるから、ある程度線は引けるんですけど、身内が介護するということは並大抵の(ことじゃない)、『ちょっと楽になりなよ』って、つつかれて、『楽になるとな…』と思いながらも楽な方にいったり、それが人間かなと」
鎌田さん「ヨロヨロ、ヨロヨロしながら、『やっぱり親だからな』と見届けることが大事」
■「がんばらない介護」3つのポイント
梅沢さんが言うように、介護には、身内だからこその苦労がある。そこで、「がんばらない介護」のポイントをいくつか挙げたい。
●「がんばらない介護」
1:まず「介護を1人で背負わない」
つらい時には、周囲にSOSを出して、助けを求めることも必要。少しでも介護を忘れられる時間を持つことが大切。
2:次に「介護サービスを上手に使う」
介護保険を使って、日帰りでの介護が受けられる「デイサービス」や、短期間、施設に宿泊のできる「ショートステイ」、ホームヘルパーに来てもらう、「訪問介護」などを利用することも必要。
3:そして「ケアマネジャーとよく相談を」
施設や地域包括支援センターなどにいるケアマネジャーは、介護のプランを作成したり、各所の調整をする。介護のプロに相談することで、肉体的な負担だけでなく、精神的な負担も楽になるかもしれない。
■夫婦で3人の親の介護をする竹本さん夫妻
長野で鎌田さんが往診しているお宅のうちのひとつ、竹本喜美子さんは、ご主人と一緒に自宅でご自身の父親を介護していて、病気があって介護施設で暮らす母親の面倒もみている。また、ご主人の母親も埼玉の介護施設で暮らしていて、夫婦であわせて3人の親の介護をしている。こういう方は結構多いと思うが、竹本さんは「父も自分もお互い頑固で言いたいことを言い合っている」と話していた。前向きでとにかく明るくて介護地獄のようにはなっていない。これは、施設や介護サービスを上手に利用していて、心に余裕があるからだと思う。
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■「介護だけ」にしばられずに
16日のポイントは「“わがまま”のつながり方」。介護する側も介護される側も介護だけにしばられることなく、少しでも自由に、少しでも自分らしく、少しでもわがままに生きることが大切。その上でお互いがゆるやかに、かつ、しっかりとつながってそれぞれが孤立しないように注意すること。それが幸せで明るい介護の秘けつだと思う。