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捜査現場で始まる日本版「司法取引」制度

2018年1月3日 3:25

2018年から捜査の現場で、いわゆる日本版「司法取引」の運用が始まる。

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■司法取引制度とは

「司法取引」とは、2016年に改正された刑事訴訟法で導入が決まったもので、特定の犯罪について、容疑者や被告が他人の犯罪を明らかにした場合、見返りとして、検察官が起訴を見送ったり、求刑を軽くしたりする制度。司法取引の対象となる犯罪は、贈収賄や詐欺などの経済事件や、薬物銃器事件に限られている。また、「司法取引」を行うには、容疑者や被告の弁護士が協議の段階から関与し、同意する必要がある。

■メリット・デメリット

「司法取引」を導入するメリットとして、事件の全容を解明しやすくなるということが挙げられる。振り込め詐欺などの組織的な犯罪の場合、「司法取引」により、「受け子」と呼ばれる、現金受け取り役などの末端メンバーからその上位にいる首謀者に関する供述を得やすくなり、組織の全容解明につながることが期待される。

一方で、ウソの証言や供述によって、えん罪を生んでしまう危険性も指摘されている。厚生労働省の局長だった村木厚子さんが逮捕・起訴された郵便不正事件では、先に逮捕された部下による「村木さんの指示だった」という捜査段階での供述がウソだったことが判明し、その後、村木さんの無罪が確定している。こうしたえん罪を防ぐために、日本版「司法取引」ではウソの供述をした場合には、5年以下の懲役という罰則規定も設けられている。捜査機関にとっては、大きな武器となる可能性がある一方、十分に供述の信用性を吟味し、裏付けをとるなど、慎重な運用が求められる。

■検察はどのように運用?

実際に「司法取引」を運用することになる検察庁では、2016年に「新制度準備室」を設置し、運用開始に向けた準備を進めている。東京地検特捜部の森本宏部長は就任に際して、「司法取引」について、「制度に対する理解を深め、適切に運用できるように準備を進めたい」と語った。早ければ2018年のうちに「司法取引」制度を利用した「第一号」事件の立件が行われるとみられ、捜査機関が新たに手にした「武器」をどのように生かしていくのか、注目される。