“処理水放出”早ければ24日に…福島県民「風評被害が出ないことだけを」 中国では“日本食離れ”進む
岸田首相は22日、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を早ければ24日に開始することを正式に表明しました。福島の人たちからは、複雑な胸の内が聞かれました。また、海洋放出に強く反発し続けている中国では“日本食離れ”が進んでいます。
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22日、福島の海を生活の糧とする人たちからは次のような声が聞かれました。
福島の漁師
「いや、理解なんてしてないよな。『気持ちはわかりますよ』なんて随分かっこいいこと言っていますが、若手がこれから育っていくのに、子々孫々まで続いていくのに。本当にこれから30年、40年でしょ…」
政府は22日、早ければ24日に処理水を海へ放出すると、正式に表明しました。
岸田首相
「具体的な放出時期については、気象海象条件に支障がなければ、8月24日を見込みます」
福島第一原発の敷地内に並ぶ一つ一つのタンクには、廃炉作業に伴って発生した放射性物質「トリチウム」などを含む処理水が大量に保管されています。
処理水を海へ放出することを検討してきた政府。開始されれば今後、数十年にわたって放出されることになります。
岸田首相が強調したのは、「政府が責任を持って取り組む」ということです。
岸田首相
「たとえ、今後数十年の長期にわたろうとも、処分が完了するまで政府として責任を持って取り組んでまいります」
会議後、早速動いたのは西村経済産業相です。
西村経済産業相(22日午前10時半ごろ 首相官邸)
「しっかり漁業者に寄り添って対応していきたい」
約4時間後、その姿は福島にありました。
西村経済産業相(22日午後2時半ごろ 福島市)
「今日はお時間をとっていただいて、ありがとうございます」
県知事らと面会を行ったあと、福島県漁連にも足を運びました。
福島県漁連会長
「我々は反対であると、今後とものぞみたいと思っております」
やはり懸念は、風評被害。福島に住む人たちは、どう思ったのでしょうか。新地町で釣りをしていた人に聞きました。
福島県民
「やっぱり複雑ですよね。廃炉はしないといけない。風評被害が出ないことだけを」
ふるさとの魚がいろいろ言われることについて、女の子からは次のような声も聞かれました。
福島県民
「正直言われてほしくないけど、個人の意見なので、その人に言ってはいけないと思います。日本を代表する魚になって、福島が有名になってほしいなと思う」
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中国は海洋放出に強く反発し続けています。
中国外務省報道官(22日)
「中国側はあらゆる必要な措置を講じて海洋環境を維持し、食品の安全と公衆の健康を守る」
中国国営テレビの放送
「日本政府はけさ、今月24日に『福島第一原発の核汚染水を海洋放出する』と発表した」
国営テレビが22日、処理水を「核汚染水」と表現し、海洋放出を速報で伝えました。これについて、中国国民の声を聞きました。
中国国民(上海)
「この計画が通されたのが理解できない。地球環境全体に悪い」
「私はできるだけ、日本産のものを買わない」
中国は日本の水産物に対し、放射性物質の検査を強化。中国税関当局の発表によると、先月に日本から輸入した生魚は6月と比べ、53.2%減少しています。
その影響が広がっているのか、上海で日本の食材を扱う店では売り上げが減少しているといいます。
日本食材店「匠の饗宴」 森はるかオーナー
「(処理水について)放送される前から6割の売り上げになりました」
処理水放出が大きく報じられるようになってから、売り上げが大きく減少。中国で“日本食離れ”が進んでいるのです。
日本食材店「匠の饗宴」 森はるかオーナー
「いつまで続くか、店をたたむかということも思ってきた。(客には)『安全だよ』と常に説明している」
早ければ24日に始まる海洋放出。東京電力は今後、1日あたり約460トンの処理水を大幅に薄めた上で、海に放出していくということです。