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金井宇宙飛行士「健康のヒントは宇宙に」

2018年6月9日 19:45
金井宇宙飛行士「健康のヒントは宇宙に」

12人目の日本人宇宙飛行士として、無事にミッションを終えた金井宣茂さん。「健康長寿のヒントは宇宙にある」をキーワードに、様々な科学実験に取り組みました。「宇宙」と「健康長寿」には一体どんな関係があるのでしょうか?

3日、宇宙から一人の日本人が地球に帰ってきた。宇宙飛行士の金井宣茂さん。

宇宙飛行士・金井宣茂さん「やっぱり体が重いですね。改めて重力を感じます」

およそ半年に及んだ国際宇宙ステーションでの滞在では、老朽化したロボットアームの部品を交換するため「船外活動」を行ったり、医師の経験を生かして、宇宙空間でのストレスを調べるマウスの飼育実験などに取り組んだ。

中でも、金井さんが最も力を入れた科学実験の一つが、私たちの健康に直接、関わるものだった。

地球に帰還する直前、金井さんは、地上との交信でこんなやりとりを交わしていた。

林芳正文科相「夢の薬はできそうですか」

宇宙飛行士・金井宣茂さん「私が宇宙滞在中にも2回、実験チャンスがあり、合計46種類の高品質タンパク質をすでに地上に向けて送りました」

「夢の薬」と「タンパク質」とは、一体どういう意味なのだろうか。

私たちの体を作る重要な栄養素であるタンパク質は、異常をきたすと様々な病気を引き起こす。こうした異常なタンパク質の働きを止める物質をみつけることができれば、薬として開発できる可能性がある。

そんな「夢の薬」の開発に向けて、金井さんたちに宇宙での実験を託したのが、ベンチャー企業、「ペプチドリーム」。

薬につながる物質を開発する独自の技術を持ち、世界中の製薬企業からも注目されている。

「ペプチド」はタンパク質を構成する物質の一種で、その構造によって無数の種類がある。その中から、異常なタンパク質と結合して病気の進行を止めるペプチドを探し出すのは至難の業。そこで考えられたのが重力のない宇宙空間での実験。

ペプチドリーム・舛屋圭一取締役「砂糖水を作って置いておくと底の方が濃くなって甘く、上の方は薄く甘くないという現象が起こる。それを宇宙に持っていくと重力がなくなるので、上から下までほぼ均一な溶液が作れる。その中(宇宙)でタンパクとペプチドを結晶化をさせると地上でやるよりも宇宙でやった方がきれいな結晶が取れる」

タンパク質の結晶の写真を比べると、重力の影響を受けない宇宙空間で作られたものは、地上と比べ、均一で、構造がはっきりした結晶ができているのが分かる。

そのため、ペプチドとタンパク質がどのように結合しているかが分かり、薬の開発に向けた分析がずっと容易になる。

私たちの身近な生活を支える科学の実験場としても重要性を増す宇宙。金井さんらが持ち帰った結晶は、今後、さらに詳しく分析され、がんやアルツハイマー病などの薬の開発に役立てられる予定。